by 佐藤華奈子 2023.03.10
飛ばない鳥の仲間、ペンギン。よちよち歩きのようにペタペタ歩く姿がかわいい、水族館・動物園の人気者です。そんなペンギンを見るとき、知っているともっと楽しくなるマメ知識を紹介します!
ペンギンってどんな鳥?
ペンギンは飛ぶことができない海鳥の仲間。祖先は飛ぶことができましたが、泳ぐことが得意な体に進化したことで空を飛ぶための翼が退化したと考えられています。翼の代わりにフリッパーと呼ばれるヒレと足の間の水かきが発達し、水中を進みやすい流線型の体型になっています。飛ぶ鳥の仲間は密度が低く軽い骨をしていますが、ペンギンの骨は水に沈むように密度が高く重くなっているという特徴があります。
ペンギンの種類は約18種。分類について議論されている種もあり、分類の仕方によって17~21種に変わってきます。生息地は南半球のみ。寒いところにいるイメージがありますが、実際は赤道直下から南極まで幅広い緯度に生息しています。暖かいところでは、赤道直下にガラパゴスペンギン、南アフリカの海岸にケープペンギン、南米の海岸にフンボルトペンギンなどがいます。南極とその周辺の島にはコウテイペンギンやアデリーペンギン、ジェンツーペンギン、オウサマペンギン、ヒゲペンギンなどが暮らしています。生息地で共通しているのは寒流が流れる海岸ということです。この寒流にのってやってくる小型の魚やイカ、海水中のプランクトンなどを食べています。
ペンギンを見るのが楽しくなるマメ知識7選
それでは、ペンギンを見るときに知っておきたいマメ知識を紹介します。
マメ知識①最小のペンギンは1kg、最大のペンギンは45㎏
18種のペンギンのうち、最小のペンギンはフェアリーペンギン。コガタペンギンとも呼ばれ、オーストラリア南部からタスマニア、ニュージーランドにかけての比較的暖かい地域に住んでいます。ほかのペンギンと比べて体脂肪が少なく羽毛が短めで、体重はたったの1㎏ほどです。
一方、最大のペンギンは南極にいるコウテイペンギン。その体重は大きいもので45㎏ほどになるといいます。最大種と最小種を比べると大きな開きがありますが、ペンギンの仲間の大半は4kg前後となっています。
マメ知識②地球上で最も過酷な子育てをする
最大種のコウテイペンギンは、南極で過酷な子育てをすることが知られています。お母さんペンギンは安全な内陸部へ移動して卵を産んだあと、食事を摂るために海へ向かいます。その間お父さんペンギンが卵をあたためて孵化させ、海で栄養補給をしたお母さんがヒナに食事を持ち帰るのを待ちます。お母さんペンギンが往復にかかる期間はなんと2ヶ月。厳しい寒さに耐えてヒナを守ったお父さんは、お母さんが戻ってくるころにはげっそりとやせた姿に変わっています。お母さんが帰ってきたら、今度はお父さんが食べる番。いそいそと海へ食事に向かいますが、海へ着くまで1ヶ月。自身の海への往復を含めると、お父さんは約4ヶ月もの間、何も食べないことになります。極寒の地で絶食期間が長いことから「世界一過酷な子育て」といわれています。
マメ知識③体の色はカモフラージュ
ペンギンは基本的にツートンカラーで、背中側が黒、お腹側が白です。このカラーにはカモフラージュ効果があります。背中が黒いことで、海に潜っているときに上から見ている天敵から見つかりにくくなります。またお腹が白いことで、海中の獲物や天敵が上を見たときに水面の光に紛れて見つかりにくくなっているのです。
マメ知識④天然の防水オイルを分泌して羽に塗っている
多くの鳥は「尾脂腺(びしせん)」と呼ばれる器官がお尻にあり、ここから分泌したオイルをクチバシにつけて全身に塗ります。ペンギンも同様で、毛づくろいをしながら羽の表面に塗っています。こうすることで羽の防水効果が高まり、体が濡れて体温が下がるのを防ぐことができます。
マメ知識⑤年に一度、羽毛が生え変わる
ペンギンは全身の羽が一度に抜けて生え変わります。換羽(かんう)といって、毎年一度のペースで繰り返しています。換羽の期間は2〜3週間ほど。断熱材の役割をする羽を失うため、換羽期のペンギンは水に入ることができません。野生のペンギンは食事を摂れなくなるので、絶食して過ごすことになります。換羽自体でもエネルギーを消費するため、あらかじめたくさん食べて脂肪を蓄積し、換羽中はなるべく動かないで過ごします。動物園や水族館で羽が抜けてボサボサになり、あまり動かない、水に入らない様子のペンギンがいたら、換羽期に入っていることが考えられます。
マメ知識⑥海水で水分補給ができる
海水は塩分濃度が高いため、ふつうは飲んでも水分補給にはなりません。むしろ取り過ぎた塩分を排出するために、より多くの水分が必要となってしまいます。ところがペンギンは海水を口から飲んだあと、体で過剰になった塩分を排出する仕組みを持っています。目の上にある「塩類腺(えんるいせん)」という器官で体内の塩分を濃縮し、体外へ排出できるのです。塩類腺は海辺に暮らす鳥や爬虫類が持っている器官で、ほかにカモメやペリカン、ウミガメなどにもあります。塩類腺で作られた塩分を濃縮した液体は、カメの仲間は涙として目から流し、鳥の仲間は鼻水として鼻から排出しています。ペンギンもくしゃみをして海水の成分を濃縮した水を出しています。さらに首を激しく振って飛ばしてしまいます。
マメ知識⑦一番速いペンギンは時速30㎞以上で泳ぐ
ペンギンの中で最も早く泳ぐことができるのは、ジェンツーペンギン。瞬間最高速度は時速30㎞を超えるそうです。この速度は鳥類最速です。大半のペンギンは時速6~11㎞程度なので、ペンギンの中でもずば抜けて速いことになります。ちなみに、最も深いところまで潜ることができるのはコウテイペンギン。ほとんど光が届かない560mの深さまで潜ることができます。こちらも最も深くまで潜る鳥になります。
ペンギンは絶滅危惧種?
現在、ペンギンのおよそ半数の種がIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。国内でよく飼育されているフンボルトペンギンもそのひとつです。本物のペンギンの姿が見られなくなってしまう日が来ないように、私たちひとりひとりが環境に配慮して生活していきたいですね。
まとめ
ペンギンのマメ知識を7つ紹介しました。動物園や水族館でペンギンを見るとき、ぜひ思い出してみてください。かわいい姿はもちろん、ペンギンのたくさんのすごい生態にも注目して見てみてくださいね。