by 佐藤華奈子 2023.06.23
水族館できれいにライトアップされて展示されることもあるクラゲ。見るだけなら美しく神秘的な存在ですが、海水浴に行って海で遭遇したときは要注意。中には猛毒を持っているクラゲもいます。ここでは日本の海で見られる危険なクラゲを紹介します。
クラゲってどんないきもの?
クラゲは無脊椎動物の仲間。刺胞(しほう)動物門のうち水中を漂って生きるものと、クシクラゲ類と呼ばれる有櫛(ゆうしつ)動物門の仲間の総称がクラゲです。刺胞動物門にはほかにサンゴやイソギンチャクがいます。淡水に住むものは珍しく、ほとんどが海水で生きていて、世界中の海に広く生息しています。大きさはわずか2㎝から大きなものでは2mと種類によってさまざま。色も透明なものもいれば、赤やピンク、青、黄、紫などさまざまな色のクラゲがいます。自ら発光するクラゲも少なくありません。多くは傘のような部分と触手を持ちますが、形も種類によってさまざまです。
クラゲの体のつくりはとてもシンプル。95%が水でできていて、脊椎だけでなく脳も心臓も血管もありません。血管の代わりに水管と呼ばれる管に体液が流れていて、体を動かすことで体液が流れる仕組みになっています。基本的に潮の流れに乗って移動しながら神経の刺激だけで泳いで生きています。食事内容もクラゲの種類によって異なり、魚やエビ、カニ、植物やほかのクラゲなどを食べます。
毒の強さや種類はさまざま
クラゲのほとんどは刺胞動物の仲間です。刺胞動物とは、毒を打ち込む針を持ち、獲物に刺して気絶や麻痺をさせて捕食する仲間のこと。クラゲは触手に毒針を持っていて、獲物に対してだけでなく、身の危険を感じたときにも刺すことがあります。とはいえ、毒の強さはさまざま。人が刺されても特に支障はないレベルのこともあれば、健康な人でも刺されると亡くなってしまうほど強い毒を持つクラゲもいます。
例えば、日本でもよく見らえるミズクラゲは刺されても特に影響はないことがほとんどです。一方で、オーストラリアの海にいる有名な猛毒クラゲ「キロネックス」は1匹で60人以上を殺せる毒を持つといわれ、刺された場合に備えて血清が作られています。日本の海にはどんな危険なクラゲがいるのか知っておくことが大切です。
日本の海にいる危険なクラゲ5選
日本の海にも潮にのってたくさんのクラゲがやってきます。その中には刺されるとひどい痛みがある強い毒を持つクラゲもいます。ここでは特に気をつけたい危険なクラゲを紹介します。
アンドンクラゲ
6〜8月ごろに北海道から沖縄まで全国の沿岸にやってきて、海水浴場でも見られる身近なクラゲ。傘の形が四角く行灯のような形をしているのが特徴です。傘の高さと幅は3センチほど、15㎝くらいの触手が4本あります。刺されると激しい痛みがあり、ミミズ腫れや水ぶくれができてしばらく痛みが続きます。死亡するほどの毒ではありませんが、複数回刺されると強いアレルギー反応がでるアナフィラキシーショックを起こす場合もあります。
アカクラゲ
北海道をのぞく全国の沿岸で春から夏にかけてみられます。傘の赤い縞模様が特徴。傘の直径は15 cmほどで、50~80cmくらいの長い触手を何十本も持っています。乾燥した刺胞を吸い込むとくしゃみが出るため「ハクションクラゲ」という別名も。刺されると強い痛みがあり、刺された箇所はミミズ腫れになったり水ぶくれができたりします。アンドンクラゲと同様に死亡するほどの毒ではありませんが、2度目以降はアナフィラキシーショックの恐れがあります。
カツオノエボシ
春から秋にかけて太平洋側でみられます。一般的なクラゲの見た目とは異なり、青いビニール袋のような浮袋で水面に浮き、その下に触手があります。カツオがやってくる時期に見られること、浮袋が烏帽子(えぼし)の形に見えることからこの名前で呼ばれています。浮袋部分は10㎝ほどですが、触手は長いものでは10mになることも。刺されると電気ショックを受けたような強い痛みが走るため「電気クラゲ」と呼ばれることもあります。2回以上刺されるとアナフィラキシーショックを起こす可能性も。死亡例もある危険なクラゲです。台風などの風の影響で海岸に大量に漂着することもありますが、死んだ状態でも人を指すことがあるので浜辺で見かけても触れてはいけません。
アマクサクラゲ
本州中部以南のあたたかい海、特に九州の天草地方でよく見られます。傘の直径は8㎝前後。傘の縁から16本の触手がのびています。触手だけでなく傘にも毒針があり、刺されると強い痛みがあります。
ハブクラゲ
沖縄県のほぼ全域で5〜10月ごろに見られます。直径10㎝ほどの傘から腕と呼ばれる部分が4本のびていて、その先にいくつも触手があります。透明なので海の中で見えにくく、クラゲにしては早いスピードで泳ぐという特徴があります。猛毒で有名なキロネックスと同じく強毒を持つことが多い立方クラゲの仲間なので、刺されるとショック状態になることがあるほど強い痛みが走り、死亡例もあります。
クラゲを見たらどうすればいい?
もしクラゲを見つけたら、すぐに離れて近づかないようにしましょう。刺されても影響が少ないミズクラゲでも、その群れの中にアカクラゲが混ざっていることもあります。種類を問わず、クラゲには近づかないようにしましょう。もしクラゲに刺されてしまったら、速やかに海からあがりましょう。刺された箇所に触手が残っていれば、決して素手では触らず、ピンセットや手袋で抜き取ります。その後、刺された箇所を海水でやさしく洗い流しましょう。このとき刺された箇所は決して擦らないでください。応急処置が済んだら、必要に応じて医療機関を受診してください。
海中だけが危険とは限らない
砂浜に打ち上げられたクラゲでも、触れると毒針が刺さってしまうことがあります。打ち上げられたクラゲは、ビニール袋のように見えてゴミと勘違いされてしまうことも。うっかり素足で踏んだり触ったりしてしまうことがないよう気をつけましょう。
お盆の時期以外も要注意
「お盆を迎えたら海に入ってはいけない」と一度は聞いたことがあるでしょう。その本当の意味は、クラゲが増えるので注意喚起のため、という話も有名です。このようにいわれるのは、6〜8月にかけて全国の沿岸にアンドンクラゲが大量にやってくることからといわれています。ところがここで紹介したとおり、刺されると危険なクラゲはアンドンクラゲだけではありません。その年の気候によっては、例年より早くクラゲが流れてくることもあります。お盆前でも海水浴の際はクラゲに充分気をつけてください。
まとめ
日本にいる危険なクラゲを紹介しました。海でのレジャーを考えるとやっかいな存在に思うかもしれませんが、クラゲも海の生態系を構成する重要な仲間です。クラゲの生態を知って気をつけることで、身の安全を守りましょう。
ヤドカリちゃんさん
2024年2月大阪湾奥で採集したクラゲは、チョウクラゲと教えていただきました。