海で最強のハンター!シャチってどんなどうぶつ?日本で見られる?

by 佐藤華奈子 2024.01.19

ADVERTISEMENT

パンダのようなツートンカラーが愛らしく人気者のシャチ。水族館のかわいいイメージの一方で、実はどう猛で怖い、ともいわれています。相反するイメージを持たれるシャチは一体どんなどうぶつなのか、その特徴や生態を紹介します。

シャチの特徴は?

シャチは魚ではなく、海で暮らす哺乳類。クジラやイルカの仲間に分類されます。
おもに水温が低い北太平洋東部、北極、南極の沿岸に生息しますが、極地から赤道直下まで世界のあらゆる海域で見られます。肉食で海の食物連鎖の頂点に立ち、シャチを襲う天敵はこれといっていません。群れで協力して狩りを行うので「海のオオカミ」とも呼ばれています。
体はとても大きく、平均的な体長は7m前後。大きい個体では体長約9.8メートル、体重約10トン、背ビレの高さが2メートルほどになることも。背ビレだけで人の身長を超えてしまうのです。動きは素早く、時速50~60㎞と自動車並みのスピードで泳ぐことができます。色は背側が黒くてお腹側が白く、目の上と背ビレのすぐ後ろに白い模様があることが特徴です。下でも説明しますが、知能が高く、高度な協力プレーで狩りを行う、道具を使うなど知的な行動が観察され、感情も豊かといわれています。
シャチは1種のみですが、生息地によって遺伝的に異なるいくつかのタイプにわけられ、体の特徴や食べるものに違いがあります。これらが亜種や別種になるのではないか、という議論もあります。

シャチの知能はどのくらい?

シャチはチンパンジーやイルカと同じくらい高い知能があることが知られています。その知能の高さは次のような事実から裏付けられています。

脳はどうぶつの中で2番目に大きい

シャチの脳は5~6㎏。最大のどうぶつシロナガスクジラに次いで脳が大きいことがわかっています。ただ脳が大きいだけでなく、認知や問題解決、コミュニケーションに関わる部分が高度に発達していることも明らかになっています。

認知力が高い

シャチの認知力に関して、さまざまな調査や研究がされています。その中で鏡に映った姿を自分として認識し、自己認知力が高いことがわかっています。またパズルを解くことにも成功するなど、問題解決力や推理力が高いことも示されています。

社会性が高い

シャチは母親を中心とした数頭~100頭の群れで生活し、食事のための狩りはチームで行います。獲物を挟み撃ちにしたり、魚が多い場所で輪になって泳いで魚を囲い、1頭が輪の中に入って食事をしたりと、その方法はさまざまです。群れのリーダーは高齢の女性で、自身の経験から仲間を獲物が多い場所へ誘導し、狩猟の技術や独自の言語を伝えます。シャチは声帯がありませんが、代わりに鼻から音を出して仲間とコミュニケーションをとります。この音を言語のように使い分けて会話をしますが、音の出し方は群れによって違いがあります。その違いは方言程度のこともあれば、日本語と英語くらい異なることもあります。
シャチは無敵と紹介しましたが、赤ちゃんや子どものうちはまだ弱く、ほかの生き物に襲われるとひとたまりもありません。それでも必ず群れで行動し、移動は子どもを中央にした列を組むことで大人に守られるため、あまり襲われるケースはありません。母親が食事に行くときは、ほかの大人が子どもの面倒を見ます。
また仲間が亡くなると、その死を悼むように、しばらくの間亡骸に寄り添って泳ぐ姿も観察されています。群れの仲間で獲物を分け合うこともあり、こうした様子から共感力も高いことがうかがえます。

聴覚が優れている

高い聴覚を持ち、超音波を出して物の位置を知るエコロケーション(反響定位)を行うこともよく知られています。シャチの耳は目の下にあります。鼻から音を出し、そのはね返りを聞いて、獲物や障害物の位置を把握できるのです。位置だけでなく、対象物の形や大きさも知ることができます。エコロケーションは狩りで獲物の位置を知ることや仲間とのコミュニケーションに活用されます。

シャチは何を食べる?

シャチの食事は魚やアザラシ、アシカ、セイウチ、クジラなどの大型の哺乳類、ペンギンやカモメといった海鳥など多岐にわたります。おもに食べるものはシャチのタイプによって異なり、主食が魚のタイプと、大型の哺乳類のタイプに分かれます。

シャチは日本の海にもいる?

シャチは日本の海でも見られます。北海道での目撃が多く、羅臼沖や知床沖など特によく観察されるところではクルーズによるウォッチングツアーも開催されています。野生のシャチなので見られる時期は限られていて、必ず見られる保証もありませんが、シーズンに行けば出会える可能性はあります。多くはありませんが、千葉県沖や沖縄の海などほかの地域でも目撃されています。
水族館で会えるイメージもありますが、現在国内でシャチを飼育展示するのは2館のみ。限られたスペースで飼育すると強いストレスを与えるのでは、という風潮が世界に広がっているため、今後増えていく可能性は低いでしょう。

シャチはどう猛で恐ろしい?

シャチの学名Orcinus orcaは「冥界からの魔物」という意味。また英名のkiller whaleは「クジラ殺し」という意味になります。英名は猟師がクジラを襲うところを目撃したことに由来します。その名の通り、自分より体が大きなクジラも集団で攻撃して補食することがあり、最大のシロナガスクジラを攻撃することもあります。


恐ろしい名で呼ばれていますが、その原因はシャチの知能が高く、群れで計画的な狩りをするためと考えられます。シャチの狩りの方法はさまざまで、氷の上にいるアザラシに尾びれで立てた波をぶつけ、氷が割れたり、氷から落ちたりしたところを補食することがあります。また、勢いをつけて浜に上陸して一瞬でアシカを捕まえ、くわえて海へ戻ることも。捕まえて弱った魚を放し囮(おとり)にして、寄ってきた鳥を食べることもあります。こうした不意をついたり徹底的に追い詰めたりする狩りの方法は、捕食される側からすれば、まるで悪魔のよう。恐ろしい名前がつくのも理解できます。こうした呼び方をされるものの、古代の人々には獲物の場所を教えてくれる仲間とされ、神聖なものとされるケースもありました。シャチが恐ろしい敵か、頼もしい味方か。それは関わり方によって変わってくるのでしょう。
野生では人の死亡事故はないものの、アザラシと間違われて襲われケガを負ったケースがあるほか、近年は船が攻撃される事例も出てきています。いずれにしても、必ず距離を保って観察することが求められます。

まとめ

海の魅力的などうぶつ、シャチについて紹介しました。シャチは絶滅危惧種には指定されていませんが、開発や環境汚染、レクリエーション目的での人間の侵入などがシャチの脅威になると指摘されています。この大切な仲間のために、わたしたちもきれいな海を保つためにできることを考えていきたいですね。

ADVERTISEMENT
コメント0