長寿の象徴!鶴ってどんな鳥?縁起がいいといわれる理由は?

by 佐藤華奈子 2024.10.02

ADVERTISEMENT

長寿の象徴とされ、縁起物でもあるツル。昔話でもお馴染みですが、野生のツルを見かけることは稀です。ツルは一体どんな鳥で、日本のどこで見られるのでしょうか。また、なぜ縁起が良いとされるのでしょうか。ツルの生態や歴史に迫ります。

ツルは世界に15種いる

ツルは全長70~150㎝ほどの大型の鳥。ほっそりとした体で首と脚が長いことが特徴です。ツル科の鳥は全部で15種いて、アジアを中心に世界中に広く生息しています。色は種によって異なりますが、大半は白や濃いグレーです。一部の種は頭のてっぺんや顔の一部に羽毛がなく、赤い皮膚で覆われています。頭に冠のような羽があるカンムリヅルと呼ばれる仲間も。大半のツルは広大な湿地や草原などで群れを作って生活し、雑食で植物や魚、貝やヘビ、ネズミ、小鳥などを食べます。越冬のために渡りをして長距離を移動する種もいれば、同一地域に留まる種もいます。

日本で見られるツルは7種

アジアには多くの種類のツルが生息し、日本では7種が見られます。代表的なものはタンチョウでしょう。白い体で風切り羽と首の一部が黒く、頭のてっぺんが赤いツルで、まさに日本人がイメージするツルの姿です。北海道東部やロシア南東部などに生息し、タンチョウの中でも南北に最長2,000㎞の渡りをするものと、同一地域に留まるものに分かれます。。タンチョウのほかに、渡り鳥としてマナヅルやナベヅル、ソデグロヅル、クロヅル、カナダヅル、アネハヅルが飛来します。

日本に生息するタンチョウはどんなツル?

では、日本の代表的なツル、タンチョウは一体どんなツルなのでしょうか。名前に「ツル」とついていないのでツルとはちがう鳥だと思う人もいるかもしれません。タンチョウは漢字では「丹頂」と書きます。「丹」は赤を意味し、頭頂が赤いことからこの名前がつけられたといわれています。英名も同様の意味で「Red-Crowned Crane」です。日本のツルという意味で「Japanese Crane」と呼ばれることもあります。日本のほかにロシアや中国など東アジアに生息し、大陸に生息するタンチョウは渡りを行います。日本に生息するタンチョウは同一地域に留まり、北海道東部で見られます。
全長は110~150㎝、体重は10㎏前後、翼を広げると2mを超える最大のツルです。日本で見られる野鳥としても最大です。水辺で暮らし、ほかのツルよりも水深が深いところで食べるものを探します。1年中同じ場所にいるわけではなく、夏季と冬季で異なる場所に群れで移動をします。春から夏にかけては子育てをしやすい人里離れた湿原へ。秋から冬にかけては、食べ物が多く越冬しやすい沿岸部や農耕地など人里の近くを訪れます。
保護区がある釧路市や鶴居村では、タンチョウが食べるものが少なくなる冬季に環境省が給餌を行っています。この時期に観光スポットにもなっている給餌場所を訪れると、野生のタンチョウを見ることができます。タンチョウの行動としてよく知られているのは「求愛のダンス」。2月から3月上旬にかけて、雌雄のペアが一緒に首を上下させたり、羽を広げたりして踊るような行動を取ります。雪景色の中で踊る様子はとても幻想的です。「鳴き合い」といって、ペアで大きな声で鳴きかわす行動も有名です。夫婦の絆を確かめるため、また縄張りを主張するために行われます。

日本で見られるツルの歴史

北海道の鳥にも指定されているタンチョウは、江戸時代までは国内の広い範囲で見られる鳥でした。渡りの季節には北海道から関東・中部地方まで南下していたようです。一方、西日本に広く渡来するツルは、江戸時代の史料に大陸から渡ってきていることが記されています。
ツルは渡り鳥であることから、昔話の「ツルの恩返し」は各地で伝承として伝わっていて、発祥の地は複数の説があり、はっきりわかっていません。それほど身近な鳥であったことがうかがえます。
明治時代になるとツルは狩猟の対象になり、乱獲によって急激に数が減って姿が見られなくなります。特にタンチョウは、日本では絶滅したと考えられていました。ところが大正13年(1924年)に釧路湿原で十数羽の群れが発見されました。このニュースは奇跡的な発見として世界中に伝わりました。それから食料が少ない冬季に給餌する取り組みが始まり、保護活動が功を奏して徐々に数が回復。平成17年度の調査では1,000羽を超える数が確認されました。今も確認されるタンチョウの数は1,000羽を超えて増加傾向にあり、北海道の中で飛来する範囲も広がりつつあります。

渡り鳥のツルの居場所を増やす取り組みも

日本のツル=タンチョウといっても過言ではありませんが、渡り鳥としてやってくるほかのツルにとっても日本は重要な場所です。特に鹿児島県出水市の平野には、世界に生息するナベヅルの8~9割、マナヅルの4~5割が越冬のために飛来します。ナベヅルの数は世界で約11,000羽、マナヅルは約5,000羽と推測され、いずれも絶滅危惧種です。
出水市は国内一のツルの越冬地として知られています。ただ越冬場所が1ヶ所に集中すると、鳥インフルエンザなどの感染症が発生した場合、多くのツルが命を落とすリスクがあります。そのリスク分散のため、国内のほかの地域の湿地を再生または創出することで、ツルが越冬する場所を増やす取り組みが進められています。

ツルは縁起が良いといわれる理由

もともとは身近な鳥だったツルが、なぜ昔から縁起が良いといわれるのでしょうか。
ツルは夫婦円満、家庭円満の象徴で、婚礼衣装の白無垢にもよく描かれています。毎年パートナーが変わる鳥が多いなか、ツルは一度つがいになると、何年も同じパートナーと寄り添います。また「求愛のダンス」や「鳴き合い」といった夫婦の絆を深める行動が印象的なことに由来しているのでしょう。
ツルは長寿の象徴でもあります。よくカメと合わせて「鶴は千年、亀は万年」といわれます。中国ではツルは古来より不老不死や長寿の象徴。亀も同じく長寿の象徴であることから、中国から伝わったものといわれています。実際、タンチョウは野生では20~30年、飼育下では50年ほど生きるため、鳥の中では比較的長寿な方です。
ちなみに「鶴の一声」という慣用句は、ツルの大きくて力強い鳴き声が由来と言われています。ツルは特別天然記念物に指定される希少な鳥。あまり鳴かないという特徴もあり、鳴き声を聞く機会はほとんどないでしょう。ただひとたび鳴くと、その大きさと甲高さで、遠くまでよく響くのです。このことから、多くの人の議論や意見を押さえつける、有力者・権威者の一言として、この慣用句は生まれました。(小学館デジタル大辞泉より)

まとめ

ツルは縁起物として馴染みのある鳥で、江戸時代までは国内で広く見られる身近な鳥でした。それが乱獲によって数を減らしてしまい、絶滅したと思われたこともありました。野生で羽ばたくツルの美しさは、一度は見たい絶景です。昔と同じように、全国でツルが見られる日はくるでしょうか。わたしたち一人ひとりの行動にも、野生のツルと共存する未来がかかっているといえるでしょう。

ADVERTISEMENT
コメント0