身近で子育てを観察できる渡り鳥!ツバメってどんな鳥?巣ができたときの対処法は?

by 佐藤華奈子 2023.09.01

ADVERTISEMENT

春から初夏にかけて、街中でも巣が見られるツバメ。よく知られたおなじみの鳥ですが、その生態を知る機会は少ないのではないでしょうか。ここではツバメの特徴や、自宅や敷地内に巣ができたときの対処を紹介します。

そもそもツバメってどんな鳥?

ツバメは、全長約17㎝、翼を広げると32㎝ほどになる小型の鳥で、スズメ目ツバメ科に分類されます。背側は黒く、お腹は白で、額と喉は赤褐色です。2つに分かれた長い尾は、燕尾(えんび)服の呼び方の由来となっています。
ツバメの仲間は約80種が世界中に広く生息していて、北半球の多くの国では、春の訪れを告げる渡り鳥として知られています。日本にも春になると南の国からやって来ます。一般に「ツバメ」と呼ばれる種を含めて5種類のツバメが飛来します。ツバメの種類は体の色や巣の形で見分けることができます。日本に到着したツバメはペアになり、巣作りをして卵を産み、ヒナを育てます。ヒナが自力で飛べるまで成長して秋を迎えると、寒くなるまえに東南アジアの国々へ戻っていきます。その移動距離はなんとおよそ3,000~5,000㎞にもなります。

ツバメの特徴は?

ツバメには次のような特徴があります。見かけたらよく観察してみましょう。

飛行に適した体

ツバメは長くて大きな風切羽をもち、あまり羽ばたかなくても長距離を飛べるようになっています。またV字型の長い尾羽のおかげで、空中で機敏に方向を変えることができます。このように飛行に適した体をしているため、ツバメは食べることも水を飲むことも飛びながら行うという特徴があります。飛んでいる虫を飛びながら捕まえて食べ、水も水面まで下降して口を開け、飛びながら飲んでいます。水浴びも飛びながら行います。

人間の近くで子育てをする

ツバメは自然の中ではなく、住宅やお店、駅などの軒下に巣を作ります。これはカラスなどの天敵からヒナを守るため。カラスが避ける人の往来が多いところに巣を作っているのです。そのため、日本には一時期しかいない渡り鳥でありながら身近で子育てを観察できる鳥となっています。

さまざまな鳴き声を使い分ける

ツバメを見かけたら、鳴き声にも注目してみましょう。ツバメの鳴き声はいくつか種類があり、状況によって使い分けられています。ツバメの「チュピチュピチュピ、ジィー」というさえずりは、よく「土喰うて虫喰うて渋い」と言っているように聞こえるといわれます。本当にそう聞こえるかは人によるので、ツバメがさえずっていたら気をつけて聞いてみてください。
オスがメスに巣の場所を見せて、ここで子育てしようと誘うときはヒナに似た声で「ジー、ジー」と鳴きます。親鳥が巣に帰ったとき、ヒナが寝ていて気づかないでいると「チュイ!」と短く鳴いて呼びかけます。虫を食べたいヒナは、大きな声で「ジャージャー」と鳴きます。親は鳴き声で食事を欲しがっているヒナがわかるので、すべてのヒナに偏りなく食事を与えることができるのです。カラスや人が巣に近づいたときは「ピチィッ、ピチィッ」と鳴いて警告をすることもあります。

ツバメの巣作りから巣立つまで

ツバメが飛来する時期は地域によって異なりますが、早いところでは3月上旬にやってきて、ペアで巣を作る場所を探します。場所が決まると巣作りがスタート。巣の材料は泥と枯れ草で、唾液を混ぜてお椀型の巣を完成させます。そして4〜6月ごろに3〜7個の卵を産み、2週間ほど抱卵します。育児はお父さんとお母さんで協力して行い、交代しながら昼も夜も卵をあたため続けます。ヒナが孵ると、虫を捕まえて交互に巣まで運びます。
ヒナは孵化(ふか:卵がかえること)から3週間ほどで大人と同じサイズになり、飛ぶことができるようになります。巣立ったあとも、電線の上などでしばらく親鳥から食事を受け取ります。巣を離れたあとは河川敷などの草丈が高い場所を寝床にして、渡りの時期を待ちます。繁殖の回数は1~2回が多く、まれに3回になることもあります。

ツバメが低く飛ぶと雨が降るって本当?

「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」という言い伝えがありますが、本当といえる根拠があります。ツバメが食べているのはハエやアブ、ハチ、ガ、チョウ、羽アリ、カゲロウなど飛翔する昆虫。これらの虫は湿度が高くなると羽が湿気で重くなり、高く飛ぶことができなくなります。すると、ツバメは虫を食べるためにかなり低く飛ぶことになります。ツバメがこのように低く飛ぶときは低気圧が近づいて湿度が高くなっているので、その後、雨が降る可能性が高いのです。

ツバメは幸福を運ぶ鳥?

ツバメは田畑の虫を食べることから、昔の農家ではツバメが家に巣を作ると豊作になるといわれていました。また家のまわりで虫に刺されることが少なくなるためか、病気にならず健康でいられるともいわれていました。さらに、ツバメが巣を作るのは人の往来が多い場所。商家の軒下に巣を作ると、商売繁盛のご利益があるとも信じられていました。このようなことから、ツバメが家に巣を作ると幸せになる、と昔から言い伝えられてきました。「幸福な王子」のお話に登場し宝石を運ぶのもツバメで、このお話からも幸福を運ぶ鳥というイメージが世界中に広がりました。

ツバメが家に巣を作ったらどうしたらいい?

卵やヒナが入った巣を撤去することは、鳥獣保護法という法律に違反することになります。家や敷地内に巣ができたら巣立つまで見守りましょう。とはいえ、フンが落ちて不衛生になるのは困りものです。新聞紙を敷いた段ボール箱を巣の下に置いて汚れたら交換する、古傘や市販のフンを受ける装置を吊るすなどして対策を。フンが落ちるのは、ヒナが生まれてから巣立つまでの3週間以内のことです。またツバメが巣を作り始めてから、巣立つまでの期間は6~7週間。2ヶ月にも満たないわずかな間のことなので、うまくつきあっていきましょう。

ツバメの巣が落ちてしまったら?

時にはカラスやネコ、ヘビに狙われて巣が壊されることや、落とされてしまうことがあります。落とされた巣の中でヒナが生きていたら、そのまま箱やカゴに入れて巣があった場所の近くに置いたり、吊るすタイプの植木鉢やカップ麺の空き容器などに入れて吊るしたりすれば、子育てが続けられます。その後、無事に巣立つことができたケースもたくさんあります。

巣立ったあとの巣はどうする?

ツバメはまた翌年も同じ場所に戻って巣を作る習性があります。できれば巣はそのまま置いておきましょう。どうしても片づけたい場合、ツバメが巣立った巣を撤去することは違法にはなりません。巣を作られたくない場所であれば、巣立ってから取り除いて翌年にツバメが入らないよう防鳥ネットを張るなどしておくといいでしょう。巣を撤去しただけでは、また同じ場所に巣を作る可能性があります。

まとめ

ツバメは俳句の季語にもなっていて季節も感じられる身近な鳥です。そんなツバメの数が減少傾向にあるといいます。原因として、ツバメが巣を作りやすい軒がある建物が減ったこと、田畑が減って巣材や食料が手に入りにくくなったこと、また巣を作っても人に壊されてしまうことなどが考えられています。海を渡り、数千キロも飛び続けて安心して子育てをするために日本へ飛来するツバメたち。時代と住環境が変わっても、ツバメが夏の虫を食べて秋の実りをもたらしてくれる鳥であることは変わりません。私たちにできることとして、もし自宅や敷地内に巣ができたら、子育てを温かく見守りたいですね。

ADVERTISEMENT
コメント0