2017.06.19
大型魚を豪快に丸吞み
彫像のように動かないことで知られているハシビロコウ。巨大なくちばしと、戦いを挑んでいるかのような鋭い目つきが特徴的な鳥です。一見、コワモテなのですが、後頭部の羽毛がぴょこんと跳ね上がっていて、まるで寝ぐせのように見えるところがなんともチャーミング。学名の「Balaeniceps rex」は“クジラ頭の王様”という意味で、独特な容姿をうまく表現しています。
なぜ動かないのかというと、獲物を狙う際、相手に警戒心を起こさせないための習性です。獲物となるのは主にハイギョ。大型の魚ですが、ハシビロコウはその大きなくちばしで捕らえ、丸呑みしてしまいます。ハイギョはエラ呼吸と肺呼吸をする珍しい魚で、息継ぎのために数時間ごとに水面から口を出して呼吸をします。ハシビロコウはそのタイミングを動かずにじっと待っているのです。
ハイギョのほかにティラピアやナマズも食します。ちなみに動物園ではハイギョの代わりに鯉などを与えています。
お辞儀は親愛の証
ハシビロコウに会える動物園は国内に7か所で約20羽が飼育されています。最多の飼育数を誇るのは恩賜上野動物園(東京都)で、5羽が暮らしています。ほかにも、掛川花鳥園(静岡県)は2016年7月1日に「ハシビロコウの森」をオープンし、今のところ、1羽を飼育しています。
単独行動を好むので繁殖が難しく、動物園での繁殖例は世界でふたつしかありません(2015年時点)。人間による飼育期間が長くなるほど攻撃性が高まる傾向にあるともいわれているので、動物園での繁殖はじつに困難なことなのです。
「動かない」といわれているものの、ごくまれに飛ぶ姿を見ることもできます。首を振ってお辞儀をする姿もしばしば見られます。親愛を意味しているそうですが、動物園のお客さんに対してお辞儀をするハシビロコウもいるので、機会があったらぜひ挨拶をしに行ってみましょう。
【ハシビロコウ】
Balaeniceps rex ペリカン目ハシビロコウ科
大型の鳥類。頭頂までの高さは110~140cm。翼を広げると230~260cmにもなる。
生息地域はアフリカのビクトリア湖周辺の湿地や川など。絶滅危惧種。