by 佐藤華奈子 2023.10.24
コロンと丸っこい体につぶらな瞳、愛嬌のあるお顔。スズメは日頃、特別に意識されることもないほど身近な野鳥です。知っているようで知らないスズメの生態を知り、ぜひ観察に役立ててくださいね。
スズメってどんな鳥?
スズメはスズメ目スズメ科スズメ属の鳥。全長およそ14~15cm、体重18~30gほどの小型の野鳥です。ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯にかけて世界でも広く生息しています。日本では小笠原諸島を除く全国で見られます。山の中ではなく、人家の近くで暮らし、人工物に巣を作ります。人の近くで子育てをすることで、天敵の猛禽類などから身を守っていると考えられています。年間を通して同じ場所に留まる留鳥(りゅうちょう)ですが、数100㎞の長距離を移動するケースもあることがわかっています。繁殖期でもある春から夏にかけてはおもに虫を食べ、秋冬はおもに植物の種子や果実などを食べています。
どんな行動が見られる?
スズメを見かけたら、よく観察してみましょう。次のような行動が見られることがあります。
・両足をそろえて跳ねる
スズメは「ホッピング」と呼ばれる両足でジャンプをして進む歩き方をします。樹上で生活する小型の鳥に見られる歩き方です。地面に降りたときはピョンピョン跳ねる姿が見られます。ホッピングは着地の際に体重がかかるため、スズメのような体の小さな鳥でしか見られない歩き方です。
・水浴び&砂浴び
鳥は体をきれいにするため「水浴び」か「砂浴び」をします。たいていの鳥はどちらか一方だけをするのですが、スズメは鳥の中では珍しくどちらも行います。中には水浴びのあとに続いて砂浴びをする子も。冬は砂や水の代わりに雪浴びをすることもあります。
・すぐに逃げる
スズメは警戒心が強く、人に近づくことはほとんどありません。人間が近づくと逃げ出す距離は5mといわれ、それ以上近寄ることは難しいです。離れたところから気配を消して観察しましょう。
・子育ての様子
スズメは屋根瓦の間や建物の間、雨どい、換気扇など目立たない隙間に巣を作るので、巣に気づくことは少ないかもしれません。それでもベランダに置いた段ボールや巣箱に巣を作ることもあれば、ツバメなど別の鳥の古巣を利用することもあり、子育てを観察できるチャンスもあります。スズメは2月ごろからペアになり、3月から8月にかけて巣作りをして子育てをします。巣が完成すると一度に5〜6個の卵を産み、抱卵して10日ほどで孵化(ふか:卵がかえること)します。ヒナが巣立つ2週間ほどの間、親鳥は交代で巣へ食べるものを運びます。巣立ちの時期が来ると、ヒナは飛ぶ練習を始めます。このとき、地面に落ちたヒナを見かけることがあるかもしれません。地面にいるヒナはたいてい飛ぶ練習の最中で、近くに親鳥がいるものです。落ちているヒナはすぐに拾って保護するのではなく、まず見守るようにしましょう。人が近くにいると親鳥が警戒するので、できるだけ離れたところから見守ってください。
朝にスズメが鳴くと晴れる?
スズメの鳴き声といえば、朝の「チュン、チュン」という声を思い浮かべる人が多いでしょう。スズメは日の出の15〜10分前には目覚め、鳴き始めます。群れで一斉に鳴いて大音量になることもあります。晴れの日は特にそろって鳴くので「スズメが朝から鳴くと晴れる」といわれています。くもりの日も鳴きますが、雲が厚いと日の出のタイミングが分かりにくくなるためか、鳴き始める時間が少し遅くなるそうです。
夕方に大軍になるのは一緒に眠るため
夏から初冬にかけて、特定の樹木にスズメの大軍が集まり、1〜2時間ほど鳴いていることがあります。これはその年に巣立った若いスズメたち。スズメの数は数10羽のこともあれば、100羽を超えることも。やがて急に静かになり、飛び去ったかと思えば木に止まって集団で眠っています。みんなで集まって寝ることで、危険を早く察知し、すぐに逃げられるメリットがあると考えられています。こうして鳥が集まって眠る場所を「集団ねぐら」といい、ツバメやカラスなどほかの鳥でも見られます。
冬はもっとかわいい!ふくらスズメ
冬のスズメはますますふっくらと丸い体型になります。夏の薄い羽は、冬にはフワフワとボリュームのある羽に生え変わります。寒さが厳しくなると、羽を立ててその間に空気の層を作り寒さをしのぎます。ふくらスズメと呼ばれる状態です。さらに秋口からたっぷり食べて脂肪を蓄えるため、体自体も夏と比べて丸くなっています。
ふくらスズメは漢字で「福良雀」と書き、縁起物として家紋にもなっています。また「寒雀(かんすずめ)」は冬の季語で、寒中のころの丸々として元気な様子のスズメを指しています。寒さをしのぐために群れで集まって体を寄せ合っていることもあり、冬は特にスズメがかわいい季節といえそうです。
スズメの数は減っている?
近年、スズメの数が減っているといわれ、実際に目にすることが少なくなったと実感している人もいるでしょう。環境省が2016年から2021年にかけて約20年ぶりに実施した調査では、スズメの数は前回の調査結果の約3万羽から約2万羽に減っているという結果が出ました。
スズメが減っている原因として、住宅事情が変わってスズメが巣を作れる軒がある家が減ったこと、餌場となる田園が減ったことなどがあげられていますが、詳しいことはわかっていません。
スズメは稲や果実を食べることから、害鳥と思われることもあります。ですが夏場は稲の害虫を食べていて、スズメを駆除したら虫が増えて不作になってしまった、という話が古今東西で語られています。スズメも生態系の大切な一員。スズメのためにできることがないか、私たちひとりひとりが考えて行動することが大切です。その一歩として、身近なスズメを観察してみることから始めてみるのもいいでしょう。
まとめ
スズメは世界に広く生息し、日本では人家の近くに住む身近な野鳥。見れば見るほど行動も姿もかわいらしい鳥です。古くから馴染みがあり、縁起物でもあります。そんなスズメの数は、近年減りつつあります。まずは近くのスズメに目を向けて見守っていきたいですね。