by 佐藤華奈子 2022.07.11
古くから博識や幸福のシンボルとしてなじみがあるフクロウ。最近はふれあいができるカフェが増え、飼う人も増えています。ここではフクロウって家で飼えるの?と興味を持った方向けに、フクロウの基本的な飼い方や人気の種類を紹介します。
フクロウってどんな鳥?
フクロウは猛禽(もうきん)類の鳥。猛禽類とは、鋭い爪とクチバシを持つ肉食の鳥の仲間です。獲物は主にネズミのような小動物や小型の鳥など。ワシやタカ、ハヤブサなども同じ猛禽類の仲間になります。
大きな目も特徴のひとつで、視力がとても優れていて夜も昼間と同じように目がききます。ほかの鳥と違って目が顔の前面についていますが、首を270度動かすことで360度見渡すことができます。平たく見える顔は目を中心にくぼんでいて「顔盤(がんばん)」と呼ばれます。顔盤は集音器の役割をしていて、音源の方向を正確に把握し、獲物の位置を捉えることが可能です。
頭に羽角(うかく)と呼ばれる突起があるフクロウもいて、ミミズクと呼ばれることもありますが、この部分は耳ではなく飾り羽です。飛んでいるとき羽音がほとんどしないことも特徴です。これは獲物に近づいていることを悟られないようにするためです。
野生では南極以外のほぼ世界全域に生息していて、多様な種類がいます。大きさも15㎝程度の小型のものから、70㎝にもなる大型までさまざまです。ほとんどが夜行性ですが、日中に狩りをする種類もいます。
ペットとして飼われているフクロウも、種類によって大きさや習性が異なります。そのフクロウにあった飼い方をすることが大切になります。
フクロウの食事は?
飼育下のフクロウの食事は一般的にはマウスやヒヨコ、ウズラなどが使われます。冷凍で販売されているものを購入し、解凍してから与えましょう。マウスやヒヨコはそのまま与えることが多いですが、ウズラは内臓を処理して与える場合が多いです。食事を抵抗なく準備できるかどうかが飼育の可否の分かれ目になるでしょう。
また冷凍餌を与えるということは、これを保管する冷凍庫なども必要となります。 お迎えする前に、飼育経験者やペットショップによく相談することで、お迎えしたい子の食事内容や量、保管期間などをイメージすることができます。どれくらい冷凍庫のスペースを確保する必要があるかなど、しっかり確認しておきましょう。
フクロウの飼育環境
フクロウは「係留(けいりゅう)飼育」といって、止まり木につないで飼うのが一般的です。ケージで飼うと自由に動けないことからストレスがたまり、放し飼いにすると逃げたり誤飲したりといった事故につながるためです。
係留飼育であれば、つながれた範囲で自由に動くことができ、飛んでいける範囲を片付けておけば誤飲の危険もありません。時々は止まり木から放して広い範囲で動ける時間を作ってあげます。その際は飼い主が絶対に目を離さないようにして、誤飲や逸走(逃げてしまうこと)を防ぎましょう。
適温は種類によって異なりますが、寒さには強いものの、暑さには弱い傾向にあります。真夏でも室温が30度を超えないように室温を調節する必要があります。トイレはある程度決まった場所でする場合もありますが、基本的に至る所でするので、できれば室温調整ができるフクロウ専用の部屋があるのが理想です。
フクロウの飼育に必要なもの
係留飼育のために、パーチと呼ばれる止まり木のほか、アンクレット(足首部分につける足革)、ジェス(アンクレットに通す紐)、リーシュ(一方をジェスに通し、もう一方をパーチに固定する長い紐)といった専用の器具が必要です。
またフクロウはとても爪が鋭いため、腕に留まらせるときはファルコングローブ(鷹匠が用いる猛禽類を手に止まらせるためのグローブ)を使います。
そのほか、食餌用のハサミやピンセット、掃除を楽にするためのトイレシート、水浴び用の容器、通院用のキャリーケージなども必要になります。
ものによっては、すぐに手に入らない場合もあるため、事前にフクロウに詳しいペットショップなどで相談し、必要なものを確認・用意してからお迎えしましょう。
フクロウのお世話
毎日のお世話は食事を与えること、水換え、室内の掃除です。また週に1〜2回を目安に水浴びをさせます。フクロウは水浴びをすることで羽の汚れを落とし、健康を保っています。汚れ具合も見ながら間隔を調整して水浴びをさせましょう。また爪とクチバシが伸びるので、1~2ヶ月に1度を目安にカットします。専門店やフクロウを診察できる動物病院でお願いすることができます。
人には懐く?
フクロウは単独行動が基本で、群れで仲間と行動する鳥ではありません。そのためインコやオウムのように人に懐くことはないといわれています。リーダーの言うことを聞く習性もないため、しつけも簡単ではありません。
馴れれば飼い主の腕に止まる、なでさせてくれる、名前を覚えるなど、懐く様子を見せることはあります。孵化したころから人が育てた個体は比較的馴れやすくなります。また一般的に小型のフクロウは神経質で馴れにくく、大型のフクロウはおっとりした性格で馴れやすい傾向があります。
鳴き声はうるさい?
フクロウの鳴き声はおなじみの「ホー、ホー」のほかに「ホッホッホッ」「ゴロスケホーホー」などと表現されます。実はこのほかにも多様な鳴き声があり、性別や種類によってちがいがあるほか、威嚇の時、お腹が空いたときなど、シチュエーションによっても異なる鳴き方をします。
フクロウは大人しいイメージがあるかもしれませんが、時期や場合によっては鳴き声が気になることもあります。特に繁殖期に求愛のために鳴く場合、威嚇して叫ぶように鳴く場合は大きな鳴き声となり、ご近所への防音対策が必要となることを飼育前に予め検討しておくと良いでしょう。またご近所迷惑ほどではなくても、室内でたくさん鳴く場合があることも覚悟しておきましょう。
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ペット飼育できるフクロウの種類
ペットとして飼えるフクロウの種類は意外に多いものです。ここでは代表的な人気の種類を紹介します。
アフリカオオコノハズク
全長:約20~25cm
寿命:約10~15年
アフリカに生息する小型のフクロウ。飼育する人が多いペットとしてメジャーなフクロウです。体と頭はグレー。白い顔のまわりに黒い縁取りがあり、頭には羽角(耳のように見える飾り羽)がついています。擬態のためにとても細くなることでも有名です。性格は好奇心旺盛で活発、鳴くことは少ないといわれています。
コキンメフクロウ
全長:20㎝前後
寿命:約10~15年
こちらも定番で人気がある小型のフクロウです。黒目の周囲が黄色いことから「キンメフクロウ」と呼ばれる種類があり、その中でも小柄なことからこの名前で呼ばれています。頭や背中は暗褐色の地色に白斑が散在し、胸は淡褐色の地に暗褐色の斑が縦に並びます。日中も狩りをするため活動します。性格は神経質で攻撃的になることも。鳴き声は柔らかく「ピュー」「ピョロロ」などと鳴きます。
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メンフクロウ
全長:約30~40cm
寿命:約10~15年
リンゴの断面のようなハート型の顔が印象的な中型のフクロウです。まるでお面をかぶったように見えることからこの名前になりました。完全に夜行性で、視覚よりも聴覚を頼りに狩りをします。鳴き声は大きめです。性格は神経質で馴れるまで時間がかかります。
モリフクロウ
全長:40㎝前後
寿命:約15~20年
イギリスをはじめヨーロッパ全域、北西アフリカ、カスピ海周辺などの森林に生息する中型のフクロウ。おっとりした大人しい性格といわれています。
ベンガルワシミミズク
全長: 55㎝前後
寿命:約5~15年
ミナミワシミミズクと呼ばれることも。野生ではインド~ヒマラヤ山脈に生息しています。大型種の中では小柄な方でペットとして人気のフクロウです。フクロウの中でも特に聴覚が優れ、暑さに弱いため、静かで涼しい環境で飼育する必要があります。性格は好奇心旺盛ですが大人しく、人をあまり怖がらないといわれています。
まとめ
今ではペットの選択肢が増え、フクロウを飼う人も増えてきました。ですがフクロウは長く飼育されてきたインコやニワトリなどとちがって、野性味のある猛禽類。家庭で飼うことは簡単ではありません。
また、鳥を診察できる動物病院もまだまだ少ない中、猛禽類を診察できる動物病院はさらに少なくなります。「様子がおかしい」と思ったとき、相談・診察できる動物病院が近くにあるかはとても重要です。近隣の病院情報も確認しておきましょう。
フクロウは個性的で魅力的なペットであることは間違いありませんが、飼い続けることができるかしっかりと検討する必要があります。さまざまな懸念点をクリアして、フクロウを迎えることができれば、可愛らしい仕草や猛禽類ならではの格好良さで、日々を楽しませてくれるでしょう!