by PAWチーム 2022.09.15
皆さんは、地元の「動物愛護センター」(※)を訪れたことはありますか?「動物愛護センター」は、主に飼い主のいない犬や猫などのどうぶつのために新しい飼い主を探したり、動物愛護の啓発活動などを行う施設を言います。
センターは基本的に自治体ごとに設置されていますが、実は47都道府県のうち、唯一北海道には道が管轄する動物愛護センターがありません。市などが管理するセンター以外にも道が管轄するセンターが必要であるとして、現在、道は実証事業を進めています。
現状を把握すべく「北海道動物愛護センターをつくろう!プロジェクト」の監事である「NPO法人ニャン友ねっとわーく北海道」(以下、ニャン友ねっとわーく)の勝田珠美代表にお話を伺いました。
※自治体によっては「動物指導センター」「動物管理センター」等と呼ぶ場合もあります。
NPO法人ニャン友ねっとわーく北海道とは
2011年末よりインターネットでの呼びかけで始まったボランティア団体。札幌市・小樽(本部)留萌支部、小樽支部、室蘭支部、旭川支部、上川支部、日高支部を拠点に、猫の殺処分ゼロを目指し、 行政などから猫を引き取り、飼育希望の方に譲渡する活動や地域猫活動、多頭飼育崩壊の場から猫の保護を行っています。元々は個人ボランティアの集まりでしたが、2016年にNPO法人化。NPO法人となった今でも、個々人の活動を大切にしながら、団体としても現地に入ってレスキューを行いつつ保護猫のお世話や治療をし、里親様へご縁を繋ぐなど、多頭飼育崩壊や地域猫の問題解決に取り組んでいます。
北海道の飼育状況って?
北海道に住んでいる方にとっては当たり前かもしれせんが、道外の方にとっては北海道の自然、冬の寒さは想像がつきません。そこで、北海道での犬猫の飼育環境を、まず伺ってみました。
Q. 北海道におけるペット飼育の特徴はどんなところでしょうか?
猫は、室内飼いを推奨しています。北海道の冬は厳しいので、外飼いをしていて迷子になると凍死する可能性があるからです。大型犬は雪の中でも走り回ったりする子もいますが、小型犬は凍えてしまうので、室内ドッグランは欠かせません。
また、北海道は土地が非常に広いので、地域による違いも大きいです。酪農や農業をされている方々は、ネズミ駆除や番犬のために猫や犬を飼う方々がいらっしゃいます。そういった方々と、ペットとして猫や犬をと暮らしている方では、どうぶつに対する考え方に違いがあります。また、中には去勢、避妊手術をしない方もいるので、次々に数が増えてしまい飼いきれなくなってしまう場合もあります。
この問題を解決するためには、その土地ごとの解決方法が必要で、解決方法を最もよく理解しているのは地域の住民です。そのため、ニャン友ねっとわーくでは各所に支部を設けています。
北海道動物愛護センター 早期建設を実現する会について
Q. 地域によって問題が異なることはよくわかりましたが、なぜ道管轄の愛護センターが必要なのでしょうか?
ここ数年、多頭飼育崩壊が増えていて、特に今年に入ってから多くの犬猫が保護されています。北海道は大きい家が多いので、ご家庭で飼育できるどうぶつの数も多くなります。しかし、増えすぎて飼いきれなくなってしまった場合は、近くの保健所や愛護管理センター等で保護しなければなりません。
とはいえ、保健所はそこまで規模が大きくないので、一時的に保護する場所すら少ないのが現状です。そういった場合に、自治体は「飼い主さがしノート」を利用した対応をお願いするしかない、といったこともあります。
Q. 「飼い主さがしノート」とはどんな取り組みですか?
「飼い主さがしノート」はどうぶつを譲りたい方と、里親になりたい方を結ぶ北海道の取り組みです。道内の市区町村管轄の動物愛護センターや保健所で閲覧可能で、自治体によってはホームページに掲載されていることもあります。
しかし、例えば飼い主が高齢の場合、インターネットを使って「飼い主さがしノート」に登録したり、SNSを活用して里親を探すことが難しいこともあります。その結果、誰にも相談できずに一人で亡くなっていく方もいます。
そのような場合、現在は私たちのような愛護団体のボランティアが残されたどうぶつの保護を行っています。しかし本来であれば、地元の問題は地元で解決することが一番です。そういう意味でも、各所に愛護センターのような受け入れ施設が必要だと考えています。
また、北海道は面積が広いので、例えば広域災害が生じたときに統括して対策を講じる施設が必要です。実際に2018年の胆振東部地震では、愛護団体や近隣の民間ペットホテルの協力によって対応が行われました。しかし現在のところ、自治体ごとに対策が行われているのが現状です。
Q. 道管轄の愛護センターに期待することは何ですか?
「北海道動物愛護センターをつくろう!プロジェクト」が掲げているのは、以下のような施設です。
- 動物の愛護・福祉に配慮した施設
- 大規模災害時等に被災動物の対応ができる施設
- 譲渡前不妊手術、病気・ケガの治療ができる施設
- 多頭飼育崩壊時にも対応できる施設
- 飼い主のいない猫対策ができる施設
- ペットを介した道民交流の場となる施設
- 連携・協働、ボランティア育成、適正飼育の普及啓発の拠点となる施設
(引用元:「北海道動物愛護センターをつくろう!プロジェクト」HP)
道管轄の動物愛護センターが様々な団体や行政の「架け橋」になることで、人間の不適切な飼い方で命を失うどうぶつが、1頭でも減ることを期待しています。
Q. 道管轄の動物愛護センター設置の進捗はいかがでしょうか?
道は道央・道東・道北・道南の4ヶ所に開設する方針で、現在は道東・道央で実証事業が行われています。
道央の動物愛護センターは、酪農学園大学(江別市)の中に設置され、道からの委託で学校により運営されています。ここでは未来の獣医師や動物看護師の学生が、授業の一貫としてどうぶつの管理を行いながら、新しい飼い主への引き渡しを推進しています。なかなか譲渡先が見つからない場合など、現場で起きる問題も、学生と一緒に解決していくような「授業+実習」のカタチで取り組みが進んでいます。
また、道東では民間の愛護団体が実証事業を行っており、道央とともに来年度中の開設が見込まれています。道北・道南においては来年度から、実証事業が始まる予定です。
ニャン友ねっとわーくとしては、「どうぶつにとっても飼い主にとっても、最後まで一緒にいること」がベストだと考えているので、当たり前のようにそれが叶えられる社会を、プロジェクトに参加されている獣医師会、愛護団体、大学の行動学の先生、自治体の環境衛生課の皆さまと実現していきたいです。
Q. 愛護センター実現のための署名活動も継続されています。
理想の愛護センター実現のため、9月の動物愛護週間までに10万人の署名を集めて、北海道知事に届けたいと考えています。更に、多頭飼育崩壊の現状が理解されないまま放置されるのではなく、社会問題としてこれまでより多くの方に認識されたのは、愛護団体だけでなく市民の皆さまから寄せられた声のおかげであることを、最後にお伝えさせていただきます。
今後は、動物と人ができるだけ長く一緒に暮らしていける、そんな共生社会を作りたいです。いつか動物保護団体がなくなり、私たち自身も動物福祉団体になっていきたいと考えています。