わたしたちに手伝えることはある? 知っておきたい盲導犬のこと

by 佐藤華奈子 2022.10.28

ADVERTISEMENT

目に障害がある人をサポートする、盲導犬。どんな作業をして、どんな一生を送っているのでしょうか。また街中で盲導犬を見かけたとき、わたしたちにできることはあるのか、盲導犬について知っておきたいことを紹介します。

そもそも盲導犬って?

盲導犬は、目が見えない人・見えにくい人の外出や生活をサポートするために特別な訓練をうけた犬のこと。「身体障害者補助犬法」という法律に基づいて認定を受け、はじめて盲導犬となります。この法律があるため、公共施設や交通機関をはじめ飲食店やスーパー、ホテルや病院などにも同伴することができます。


盲導犬の利用者には、盲導犬であることがわかるよう表示をすることが義務付けられています。ハーネスやバッグに「盲導犬」と表示されているほか、利用者は「盲導犬使用者証」や「身体障害者補助犬健康管理手帳」を持ち歩いています。盲導犬のハーネスの色は道路交通法で「白または黄色」と定められています。


盲導犬以外の補助犬として、手足に障害がある人の日常生活をサポートする介助犬、耳に障害がある人に必要な音を教え音源まで誘導する聴導犬がいます。
現在、日本国内では848頭(2022年3月時点)*の盲導犬が活躍しています。


*日本補助犬情報センター https://www.jsdrc.jp/faq/faq-0004/

盲導犬のお仕事って?

盲導犬は具体的にどのようにサポートしているのでしょうか。そのサポート内容を一言でいうと、使用者が街中や室内を安全に歩けるように情報を伝えること。使用者が盲導犬と歩いているとき、盲導犬が道順を覚えているのではなく、使用者自身が指示を出して目的地へ向かいます。盲導犬は指示された方向に進んだ上で、角や段差、障害物があることを止まったり、曲がったりして知らせています。また道路の端を歩くように誘導するほか、指示があれば、ドアノブなど目的のものがある場所も伝えます。


盲導犬からの情報の伝達は、基本的にハーネスから犬の動きが伝わることで成り立っています。またドアノブの位置は犬の鼻先が向いた方向をたどると見つかるようになっています。


ハーネスを着用中の盲導犬はお仕事モードです。使用者のそばで座って待機しているときでも、犬に話しかけてはいけません。しかし、使用者が困っている様子のときには「なにかお手伝いしましょうか?」と声をかけてください。またお仕事中であっても、時間になればトイレや飲水、食事のための休憩が設けられます。家の中ではハーネスを外し、リラックスしたり、使用者と遊んだりしてくつろいで過ごします。

盲導犬の犬種は?

国内ではラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、また両者のミックスが適性を持ちやすいとされ、盲導犬となっています。

盲導犬になるまで

盲導犬を育成する団体は11団体あります。公益財団法人に限らず、社会福祉法人、一般財団法人など団体の法人格もさまざまです。ここでは盲導犬育成の一般的な流れを紹介します。


盲導犬の子犬は、盲導犬の適性を持つ両親から生まれます。出産は専用の施設や繁殖ボランティアの家庭で行われ、生後2ヶ月頃までそのまま母親や兄弟姉妹と一緒に過ごします。


次に「パピーウォーカー」などと呼ばれる盲導犬の子犬を育てるボランティア家庭のもとへ移ります。ここでの目的は、基本的な社会習慣を身につけるだけでなく、人との信頼関係を築き、人間と一緒にいること、外出することは楽しいことだと覚えてもらうこと。しつけをすることはもちろん、積極的に外出もしていきます。


そして1歳になったら、訓練所へ。いよいよ訓練が始まります。最初にそれぞれの犬の性格を知るための評価があり、犬の個性にあわせて訓練計画が立てられます。まずは担当の訓練士と訓練所内でトレーニング。その後、外出して外の世界で誘導訓練を積んでいきます。訓練中は何度も適性評価があり、適性が認められてようやく使用者とのマッチングとなります。


厳しい訓練と思われがちですが、訓練が厳しいのではなく、適性評価を厳しく判断することが大切です。使用者が決まっても、まだゴールではありません。ここから共同訓練が始まります。使用者は泊まり込みで共同生活を経験し、犬のお世話を学び、信頼関係を育み、その後、実際にペアで外出することや使用者宅近辺での訓練の日々を経て、盲導犬デビューとなります。


繰り返される評価の中で、適性がないと判断された子にもさまざまな進路があります。盲導犬を広めるPR活動をする子や繁殖犬になる子もいれば、「キャリアチェンジ犬」としてボランティア家庭に迎えられるケースもあります。

盲導犬を引退したら

盲導犬は一般に10歳前後で引退してリタイア犬になります。引退後は、ボランティア家庭のもとへ移り、ここで新たな家族の一員となって余生を過ごします。

盲導犬を見かけたら気をつけたいこと

最後に、盲導犬を見かけたときに気をつけたいことを紹介します。街を歩く盲導犬はお仕事中です。盲導犬を連れている人にとって、一緒に外を歩くことは日常です。充分に訓練を受けたペアなので、まず見守ることが基本となります。そのうえで、次のことにも気をつけてください。

やってはいけないこと

次のことは盲導犬のお仕事の妨げになるのでやめましょう。
・犬に対して声をかける、大きな音を出すこと
・正面からじっと見つめること
・盲導犬やハーネスに触れること
・食べ物を与えようと近づけること
・自分のペットを近づけること

手伝うときは気づかいを忘れずに

見守ったうえで、何か困った様子が見受けられれば、使用者に声をかけましょう。その際、緊急事態でない限り体に触れることは控えてください。はじめに「何かお困りですか?」「何か手伝いますか?」などと聞いて、困ったことがあるのか、お手伝いが必要なのか、確認をしましょう。「通りかかったものですが」「ここの店員ですが」など自分の立場を付け加えると、相手は誰から話しかけられたのかわかって安心できます。


困っているケースで多いのは、道順の指示を間違ってしまうなど、何らかの事情で目的地に辿り着けないことです。目的地まで案内する余裕があれば、使用者の空いている手を自分の肩や肘に置いてもらい、一緒に歩いて誘導しましょう。直接案内することが難しくても、口頭で道順を説明するだけでも助けになります。


また、盲導犬は信号の色を見分けることはできません。信号を渡るときは、使用者が音や周りの様子から判断して指示を出しています。音響信号がないところや雑多で音が聞こえにくい場所では、信号の色を知らせることも助けになります。


あわせて、目が見えない人・見えにくい人と話すときは、わかりやすい伝え方を知っておくとやり取りがスムーズです。「3時の方向」など時計の針に例えた方向の伝え方(クロックポジション)や、10メートル先の角を右に曲がるなど、目印が見えなくてもわかる伝え方をあらかじめ調べておくのもいいですね。

まとめ

盲導犬について、どのようにサポートしているのか、見かけたときにできることを紹介しました。出会う機会は少ないかもしれませんが、その分、見かけた際には落ち着いて見守りましょう。また見守っていて困った様子があれば声をかけましょう。盲導犬とその使用者のためにできることはたくさんあるので、興味を持ったらぜひ調べてみてください。


======================
監修:特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター
身体障害者補助犬については、こちらをご覧ください。
https://www.jsdrc.jp/
今年度は補助犬法20周年でもあり、さまざまな発信をされています。
======================

ADVERTISEMENT
コメント0