南アフリカ公認の日本人サファリガイドに「自然」を学ぶ!~前編~

by PAWチーム 2022.05.12

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アニコムには有志社員によって構成された「PAW(Project Animal Welfare)」というプロジェクトがあります。「どうぶつを幸せにしたい」という想いから、動物愛護や動物福祉、野生動物にかかわる活動を行っています。


PAWのチームの一つである「野生動物チーム」は、ペット以外の野生動物に目を向けることで、少しでも環境保護や生態系の維持について考えるきっかけを作ることができれば、と考えています。


そんな想いから、今回は「ペット」と呼ばれる子たちとは少し違ったどうぶつのお話を、南アフリカ共和国公認の日本人サファリガイド、太田ゆかさんに伺いました。

太田ゆかさんって、どんな人?

太田さん

太田さんは、学生時代からオーストラリア、マレーシアなど様々な国を旅して回ったそうです。


その中でも特に衝撃を受けたのは、野生動物と人が柵で分けられるのではなく、同じ空間で生活していたアフリカのボツワナ共和国。どうぶつと人間の間にあった繋がりの強さに惹かれた太田さんは、大学2年次に同じアフリカ大陸の南アフリカで、サバンナ保全プロジェクトのボランティアに参加しました。


「南アフリカには360度、見渡す限りサバンナが広がっています。そこで仕事ができることに強い魅力を感じました」と太田さん。


大学3年次にも1年間、南アフリカのサファリガイド訓練校への留学を経験した太田さんは、卒業後、同国のサファリ業界で働くことを決めました。

サファリガイドってどんな仕事?

サバンナのライオンたち

「サファリガイド」は、観光客にどうぶつなどが住む自然の中を案内する仕事です。太田さんは現在、南アフリカのサファリガイドとして、サファリの自然保護区である「クルーガー国立公園」に隣接する私営保護区に住みながら、観光客に保護区内を案内しています。


2016年にサファリガイドを始めて今年で6年目の太田さん。保護区の中にはライオンやヒョウなどもいて、コブラやブラックマンバなどの毒蛇が家に入ってくることもあるそうです。それでも「自然の中で生きること」が、彼女にとって大きなモチベーションになっているようです。


日本に住む私たちにとって「野生動物」というと、動物園にいるような姿を思い浮かべることが多いのではないでしょうか?しかし太田さんは、動物園にいるどうぶつと、自然の中にいるどうぶつは「顔つきが違う」といいます。


また、ライオンやチーターなどは“怖い”イメージがありますが、「意外と野生動物は人間を襲いません」(太田さん)。おそらくこれは人間に近づくと危ない、という本能的な恐怖心からではないか、と話します。人間は旧石器時代からずっと狩猟をしてきた種なので、人に対して肉食獣としての本能的恐怖心があるのかもしれません。

心の発電所は、愛犬「ジュノ」。

太田さんとじゅの

サバンナの厳しい自然の中で生活している太田さんですが、心の支えになっているどうぶつがいるといいます。


そのどうぶつこそが、グレートデンとブラッドハウンドのミックス犬である「ジュノ」です。密猟取締犬として非常に優秀だった母親から生まれ、犬種の特性なのか鼻もとても良く利きますが、性格は穏やか。その優しさゆえに番犬には向かなかったようですが、厳しい環境で生活する太田さんにとって、大切なパートナーだといいます。

サバンナのペット事情

「そもそも自然も野生動物も多いサバンナで、ペットを飼う人なんているの?」とお考えの方もいるでしょう。しかし日本と同様、犬や猫を愛玩動物として、一緒に暮らす方は多いようです。


ただ、特に貧しいエリアなどでは、「犬=番犬」という考え方が根強く、家の中で飼っていても犬はソファに乗せたくない、ベッドには上げない、という方も多くいます。


日本で暮らしていたときからどうぶつ好きだった太田さんは、そこにギャップを感じたようです。確かに、日本で暮らしている私たちにとって、ペットは「番犬」というより「家族」ですよね。

ペットを野生動物から守る

内庭と外庭

ただ、サバンナの中でペットを飼うときには、日本では通常起こりえないことも想定する必要があると、太田さんはいいます。


実際に、ハイエナやヒョウにペットが食べられた、という話を聞いたこともあるそうです。


そのため、家の庭の柵は二重になっていて、外庭(時々野生動物が入ってきてしまう)と内庭(プライベートの庭で、野生動物はほとんど入ってこない)をそれぞれ柵で囲って生活しています。ペットを外で遊ばせるときは、たとえ内庭でも、見守りながら遊ばせる必要があるそうです。

太田さんにとって、ジュノとは

心の発電所

アニコムでは、一緒に暮らすどうぶつは、飼い主さんの「心の発電所」と考えています。今回お話を伺った太田さんも、この考え方に深く同意されていました。


愛犬ジュノは番犬でもなく、逆に太田さんが野生動物から守らなくてはなりません。ただ、そんなジュノがいるからこそ、言葉も円滑に通じない、生まれ育った日本とは全く異なる国で、たった一人でも頑張れる。ジュノは太田さんの活動の原動力になっているようでした。


今回お話を伺ったのは、太田さんが一時帰国で日本に戻られたタイミングでした。野生動物の保護について、時に厳しく、悲しいお話も口にされていましたが、ジュノの話をしているときは、とても活き活きとしていました。


「トラブルで、想定していたよりも長く日本にいる。アフリカに置いてきたジュノが心残り」と、常にジュノのことを気にかけていらっしゃる様子から、ジュノは太田さんの「心の支え」になっていることが伝わってきました。


Yuka on Safari
Yuka on Safari – 南アフリカ政府公認日本人女性サファリガイド

追記

このインタビューを終えた数日後、ジュノが毒蛇に噛まれ亡くなったことを知らされました。


編集部宛てのメールには、「あまりにも突然のことでいまだに信じられませんが、きっとジュノは今も見守ってくれていると思って、これからも現地で頑張っていきます」と書かれていました。


生まれ育った日本から遠く離れた異国で、一人働く太田さんにとって、ジュノがどれだけ大切な存在だったのかは、想像に難くありません。そんな“家族”のような存在だったジュノが、あまりにも突然、旅立ってしまった悲しみと、太田さんの気持ちを考えると、胸が痛みます。


編集部一同、心よりお悔やみ申し上げます。


だれよりも深くどうぶつを愛し、どうぶつを守るために活動する太田さんを、ジュノはきっとずっと見守ってくれていると、信じてやみません。

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