by PAWチーム 2022.01.18
動物介在教育を行っている一般社団法人マナーニ様(以下マナーニ)の「動物介在学習プログラム」を見学した様子をレポート!
前編では、ワンちゃんとふれあう前のお約束について確認した子どもたち。
続く後編では、実際にワンちゃんとふれあった子どもたちの変化についてお伝えします! 本学習で学べること、また、本活動にかける想いもご紹介します!
前編はこちら▼
子どもとワンちゃんの未来をつくる「こども笑顔のラインプロジェクト」とは? ー前編ー
座学学習では何を伝えているの?
「座学」学習では、教室に戻って、人 とワンちゃんの共通点・異なる点について学びます。人とワンちゃんの体の大きさを比較するために、実際にワンちゃんの感覚では人がどのくらい大きいのか、なぜ突然触ってはいけないのかという理由を「大きな手」を使って説明します。子どもたちからは「上から手が来て怖かった 」という感想が出てきました。
続いて、ワンちゃんの感情について学びます。ここでは、同じワンちゃんの異なる表情の写真を使って、「いまこのワンちゃんはどんな気持ちなんだろうね?」と問いかけます。笑っているように感じる写真には「嬉しそう!」という声が、唸るような表情の写真には「怒っている!」という声が出ました。写真の表情から気持ちを考えることで、ワンちゃんにも「人と同じように感情があり、いろんな表情があるんだ」ということを学習します。
最後に、須﨑先生から言葉が話せないワンちゃんは「どうやって相手を認識し、挨拶をするのか」、「実際にワンちゃんとの挨拶はどうしたらよいのか」ということを教えてもらいます。ここで、ゴールデン・レトリバーのルークくんとハンドラーの大矢さんが登場!さっき教わったワンちゃんとの挨拶を練習してみます。
一通り挨拶の練習をして、座学は終了。次は「ふれあい」学習です。
ふれあい学習では何を伝えているの?
「ふれあい」学習では、1グループに約3人の小さなグループを5つ作り行います。どうぶつが好きな子、苦手な子、アレルギーのある子、さまざまな子どもの事情に配慮するため、事前に保護者にアンケートを取り、グループ分けを行いました。介在犬も、そうした事情に合わせ、マッチするワンちゃんが割り当てられます。例えばどうぶつが怖い子どもは、動きがゆっくりなシニア犬や、経験があるベテラン犬、体の小さい小型犬が担当します。
当日、私はベテラン介在犬のカニーヘン・ダックスフンドのロッキーくんとハンドラーの河村さんのサポート役につきました。「ロッキーはシニア犬で体も小さいので、いつもどうぶつに苦手意識がある子どもたちを担当しています」と河村さん。少し緊張気味の子どもたちに、「怖いなぁと思っている人、いますか?」と優しく問いかけます。この会話から、このグループでは、まずはハンドラーさんと子どもたちが同じ目線に立つことが重要なのだと感じました。
ふれあうことで学ぶこと
続いて、1人ひとり、ロッキーくんと挨拶をしてみます。グーにした手をロッキーくんの鼻に近づけて、子どもたち自ら歩み寄ってもらいます。もちろん、近づけるのすら怖い、という子も。そこでサポーターである私の出番です。私も河村さんを見習って、子どもと同じ目線に立ち、「一緒にだったら、大丈夫かな?」とグーにした手を横に添えます。私が先にロッキーくんの鼻に手を近づけると、子どもたちも自然と真似てくれました。挨拶ができて「やったね!すごいね!」とみんな自然と笑顔に。
次は、ふれあいながらロッキーくんの体について学びます。「やってみたい人?」と最初に聞いて手を挙げてもらいます。子どもたちが「自らやってみよう!」という雰囲気づくりをハンドラーさんが行っていたのはさすがでした。さらに、苦手な子でも安心して触れるようロッキーくんをしっかりと抱っこします。ロッキーくんは撫でられても、暴れたりせず、静かに子どもたちを受け入れます。子どもたちも、こちらから言うまでもなく、優しく、ロッキーくんを思いやるように触っていたのがとても印象的でした。おなかや耳の中を観察したり、爪の数を数えて人との違いを確かめたり、肉球を触って触感を感じたりします。
ふれあいの間、ロッキーくんはウトウトしたり目を閉じたり、とてもリラックスした様子。さすがベテラン犬!子どもたちも安心してふれあえます。
最初は緊張気味だった子どもたちも、いつの間にか前のめりの姿勢になり、緊張も解けすっかり笑顔になっていました。ふれあう前は、「触ったことがなくて、怖い」と発言していた子どもたちが、ふれあった後に、「あったかいね」「気持ちいいね」「かわいいな」と感想を話してくれます。とてもポジティブな言葉に変わっていたことが印象的でした!中には、「僕も同じワンちゃん飼ってみたいな!」という子も。心にも大きな変化があったのだと感じます。
人もどうぶつも同じ命
「座学」「ふれあい」学習の後は、みんなで教室に集合し、今回の授業の振り返りを行います。
学習前の緊張はすっかり無くなったのか、みんなリラックスした様子でそれぞれ感想を述べ、須﨑先生がまとめに入ります。代表の児童の心音と、介在犬の心音を聴き比べ、ワンちゃんの方が鼓動が速いことを感じたり、最初に確認した人の時計とワンちゃんの時計を比較して、ワンちゃんの時間は人より速く進んでいることを体感(人間の時計では10:20を指しているのに、ワンちゃんの時計は13:40と約3時間も先に進んでいました!)。
さらに、“命”について深堀していきます。人もどうぶつも同じ命だということを確認しつつも、心臓の速さや流れる時間が異なることを子どもたちに伝えます。
サポートスタッフとして参加して感じたこと
私は、実はどうぶつが苦手な子どもでした。というより、どのようにふれあえば良いのかわからず、慣れるまで苦労したのを覚えています。授業開始直後は、「過去の自分と同じようにどうぶつに苦手意識がある子どもたちをぜひサポートしたい!」と意気揚々としていましたが、反面、「全く触れない子もいるかもしれない・・・」 と緊張と不安もありました。しかし、最終的には全員がふれあいができたことにとても感銘を受けました。
須﨑先生の「楽しかった人?」という問いに、元気よく手を挙げた子どもたちの中には、最初にワンちゃんが苦手だと話していた子どももいました。
今ここにいる子どもたち一人ひとりが未来をつくり、生きていきます。今日の授業を通して「どうぶつもお友達も、そして自分自身も尊重することの大切さ」を知った子どもたちはこれから出会う人々のことも、きっと尊重するようになるでしょう。そう考えると、動物介在教育にはとても大きな意義があるのだなと実感しました。
「ゴールは相手の存在を尊重すること、命の大切さを伝えることだが、すべてが今日完璧に伝わるとは思ってない。この授業が終わって楽しかった、笑顔になれた、それでいい。こうして、命に触れる授業を経る過程が大切。将来きっと気づいてくれる。」と須﨑先生。さらに、参加されたハンドラーさんからは「未来を作るのは人だけではない。(ここにいる)ワンちゃんたちが(ほかの)ワンちゃんたちの社会を変えるんだ。」とお話してくださいました。
介在学習動物としてワンちゃんを起用している現場を見学させていただき、社交的で人と積極的に関わることが好きな介在犬たちが次々と子どもたちと仲良くなっていく様子を目の当たりにし、なぜワンちゃんが介在教育現場に必要とされるのかを直接肌で感じることができました。
今後もPAWでは動物介在活動についての認識を広めるために、情報を発信し、さまざまな活動を続けていきます!
最後に、今回、活動の見学にご協力いただいたマナーニ様、ハンドラーの皆様、学習介在犬のワンちゃんたち、学校関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
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子どもとワンちゃんの未来をつくる「こども笑顔のラインプロジェクト」とは? ー前編ー