マイクロチップの義務化?動物虐待の厳罰化。その他どう変わる? 動物愛護法改正を解説!

by 編集部 2020.09.20

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「動物の愛護及び管理に関する法律」、略して「動物愛護法(動愛法)」が2019年6月19日に改正されました。そして、2020年6月1日から段階的に施行されています。今回の改正で、一体何が変わったのでしょうか? 本記事では、そもそも動物愛護法とは?から、今回の改正内容まで徹底解説します! 今回の改正は、飼い主に直接関わる部分は少ないですが、動物愛護法は動物と関わるすべての人に関係する法律ですし、飼い主ならば理解しておきたいことです。

動物愛護法とは?

人に抱っこされる子犬

動物愛護法とは、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することがないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めている法律のことです。(環境省のHPより引用)

どうして改正するの?

動物愛護法は施行状況の確認を行い、必要に応じて改正をするよう定められています。2012年の動物愛護法改正の際に、①幼齢の犬猫の販売等の制限(販売日数の規制)②マイクロチップの装着の義務づけについて必要な検討を行うことが規定されていました。

今回の改正の背景

そうした背景をうけ、今回は動物取扱業のさらなる適正化と動物の不適切な取扱いへの対応強化をするために改正が行われました。


■主な改正内容

  1. 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

  2. 動物の所有者等が順守すべき責務規定を明確化

  3. 動物の適正飼養のための規制の強化

  4. 都道府県等の措置等の拡充

  5. マイクロチップの義務化

  6. その他

それぞれの項目ごとに改正ポイントをまとめます。

改正ポイント1:第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

飼い主であれば、利用することもあるだろうペットショップやトリミングサロン、ペットホテルなどの「第一種動物取扱業」に関して、変更がありました。きちんと法律を知ること、かつ、その法律が守られているところを利用することが飼い主として必要になるのではないでしょうか。


第一種動物取扱業とは?

「第一種動物取扱業」とは、有償・無償の別を問わず、反復・継続して事業者の営利を目的として動物の取扱いを行う、社会通念上、業として認められる行為のことをいいます。販売、保管、貸出し、 訓練、 展示、競りあっせん、譲受飼養の7種類の区分があり、具体的には先程述べた通り、ペットショップ、トリミングサロン、ペットホテルといった事業者などが該当します。


事業所・業種ごとに、動物愛護法に基づき、都道府県知事または政令指定都市の長の登録が必要です。(環境省HPより引用)

どう変わったの?

第一種動物取扱業による適正な飼育等を促進するために、改正されたポイントが以下の通りです。


  • 登録拒否事由の追加

  • 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示

  • 遵守基準:飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等

  • 犬・猫の販売場所を事業所に限定

  • 出生後56日(8週)を経過しない犬又は猫の販売等を制限

それぞれ細かく見ていきます。


・登録拒否事由の追加【第12条】

事業者側の対応に不備がある場合、行政は第一種動物取扱業への登録を拒否することができます。その際のハードルが高くなりました。


改正前

改正後

登録を取り消された場合2年間登録ができない

登録が取り消された場合5年間登録ができない

関連法(種の保存法、鳥獣保護法、外来生物法)違反のみが登録拒否の対象で、2年間登録ができない

何の罪かを問わず禁固以上の刑に処せられた場合は、5年間登録ができない

種の保存法、鳥獣保護法、外来生物法の違法取引で罰金以上の刑に処せられた場合2年間登録ができない

種の保存法、鳥獣保護法、外来生物法に違反し罰金以上の刑に処せられた者は5年間登録ができない

(追加)
外為法違反の中の「動物の密輸入、密輸出」で罰金以上の刑に処せられた者も追加

(追加)
暴力団又は暴力団員でなくなってから5年経過しないと登録できない

(追加)
不正又は不誠実な行為をするおそれがある者は登録できない

(追加)
役員のみ欠格要件が定められていたが使用人についても違反に該当すれば登録できない


・環境省令で定める遵守基準を具体的に明示【第21条】

環境省令で定めている動物の管理方法等に関する基準が明示されました。


■遵守基準:
飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等


・犬・猫の販売場所を事業所に限定【第21条の4項】

犬猫を販売するときは、動物の現在の状態を見せて、必要な情報を提供することが定められています。今回の改正により、「事業所」において、その対応をすることが定められました。要は、事業所以外(空港・駅・顧客へ配達等)での引き渡しが禁止となった、ということです。


・出生後56日(8週)を経過しない犬又は猫の販売等を制限【第22条】

生後56日(8週)齢未満の犬猫は販売禁止となりました。


※例外規定あり
天然記念物に指定されている日本犬(柴犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、北海道犬、四国犬)を専門に繁殖する業者が、直接一般の飼い主に販売する場合は、「7週齢を超えればよい」とされています。


▶Point:
犬猫のネット販売などが禁止となったり、生後56日(8週)齢未満の犬猫も原則販売禁止となったりと、ペットの販売のハードルが高くなりました。


改正ポイント2:動物の所有者等が守るべき責務・規定を明確化【第7条第1項】

本

本法律では、環境大臣は動物の飼養・保管に関して、「動物の飼養及び保管に関しよるべき基準」を定めることができるとされています。さらに今回の改正で、動物の管理者及び飼養保管者は、その従うべき基準を遵守すべき責務があるということが明確化されました。


動物の分類ごとに生き方・役目は異なるものの、飼養されるすべての動物に共通して、命あるものとしてみだりに傷つくことなく、守られるべきであり、それぞれ基準は以下の通りです。


■飼養・保管等の基準

  • 家庭動物


    基準:家庭動物等の飼養及び保管に関する基準


    例:原則としてその家庭動物等について去勢手術、不妊手術、雌雄の分別飼育等 その繁殖を制限するための措置を講じること。


  • 展示動物


    基準:展示動物の飼養及び保管に関する基準


    例:例えば動物園では、観覧者に対して、動物園動物または触れ合い動物にみだりに食物等を与えないよう指導すること。


  • 実験動物


    基準:実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準


    例:実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、痛みを感じないように麻酔薬等を投与したり、実験等の期間をできるだけ短くするなど、できる限り実験動物に苦痛を与えないようにすること。


  • 産業動物


    基準:産業動物の飼養及び保管に関する基準


    例:管理者及び飼養者は、産業動物の使役等の利用にあたって、産業動物の安全の保持に努めるとともに、産業動物に対する虐待を防止すること。


環境省HPより引用


▶Point:
分類ごとにそれぞれ定められている基準を、動物の管理者及び飼養保管者は遵守すべき責務があることを明確化。


改正ポイント3:動物の適正飼養のための規制の強化

抱っこされる子猫

動物を適正に飼い、養うための規制が強化されました。強化されたポイントは4つ。それぞれ簡単にご紹介します。


①動物の適正飼養が困難な場合の繁殖防止の義務化【第37条】

犬猫をみだりに繁殖することを避けるべく、繁殖防止のための避妊・去勢手術などをすることが努力義務から義務化へと変わりました。


▶Point:
むやみに繁殖して増えてしまい、飼育しきれず不幸な子が生じてしまうことを防ぐためです。


②都道府県知事による指導、助言、報告徴収、立入検査等を規定

改正ポイントを2つにわけてご説明します。


①「多頭飼育や飼育管理を行う者」に限定せず、指導可能に【第25条第1項】

都道府県知事は、不適正な飼養等によって、生活環境が損なわれていると認めたときは、原因者全般に対し指導・助言を行うことができます。この「原因者全般」という点が今回のポイントです。今までは「多頭飼育や飼育管理を行う者」に限定されていましたが、今回の改正によって限定されなくなりました。


②不適正飼養者への立ち入り権限の付与【第25条第5項】

都道府県知事は、不適正な飼養等によって、動物が衰弱したり虐待のおそれがあったりすると認められた場合に、飼養者に対して必要な事項の報告を求めることができます。また、動物の飼養もしくは保管に関係ある場所に立ち入り、検査できる権限も付与されました。


▶Point:
どちらも、不適切な環境で飼育されている子を減らすための改正と言えるのではないでしょうか。


③特定動物(危険動物)に関する規制の強化【第25条の2】

“人の生命・身体または財産等に害を加える恐れがある動物”として政令で定める動物(特定動物)を、愛玩目的で飼養することが禁じられました。なお今までは、許可を得られれば飼育することができました。


④動物虐待に対する罰則の引き上げ【第44条】

以下の通り、罰則が引き上げられました。


改正前

改正後

動物を殺傷した場合:
2年以下の懲役又は200万円以下の罰金

動物を殺傷した場合:
5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

動物を遺棄・虐待した場合:
100万円以下の罰金

動物を遺棄・虐待した場合:
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

改正ポイント4:都道府県等の措置等の拡充

動物愛護管理センターに関する規定が新設されました。

①動物愛護管理センターの業務を規定【第37条の2】

都道府県等は、動物愛護管理に関する事務を所掌する部局または施設が、動物愛護管理センターとしての機能を果たすようにすることと規定しました。

②動物愛護管理担当職員の位置づけの明確化【第37条の3】

都道府県等は、動物愛護管理員等の職名を有する職員、「動物愛護管理担当職員」を置くこととし、指定都市・中核市は必須、その他の市町村は努力義務としました。

改正ポイント5:マイクロチップの義務化

犬や猫などの動物の所有者は、自分の所有であることを明らかにするために、マイクロチップの装着等を行うべき旨が定められました。


■マイクロチップとは?
直径2㎜、長さ約8~12㎜の円筒形の電子標識器具で、内部はIC、コンデンサ、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスで覆われています。それぞれのチップには、世界で唯一の15桁の数字が記録されており、この番号を専用のリーダーで読み取ることができます。動物の安全で確実な個体識別の方法となり、突然の迷子、災害、盗難、事故などの場合にも、確実な身元証明ができます。

①犬猫の繁殖業者等にマイクロチップの装着・登録を義務付け

ペットショップやブリーダーなどの第一種動物取扱業に限っては、マイクロチップ装着が義務化されました。一般の飼い主は、努力義務とされています。


②登録を受けた犬猫を所有したものに変更届出の義務付け

マイクロチップを装着した場合は、「登録は義務」となります。一般の飼い主であっても、登録を受けた犬猫を飼うことになった場合は、変更届出が義務付けされました。


▶Point:
マイクロチップが装着されていれば、万が一のときにも飼い主さんの元に戻れる確率が高まります。また、所有者が明らかになるため、飼育放棄を防ぐことにもつながります。


改正ポイント6:その他

その他の改正ポイントもご紹介します。

獣医師による虐待の通報の義務化【第41条の2】

獣医師は虐待などを受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事やその他の関係機関に通報することが、努力義務から、義務化されました。


ただし、自治体に連絡をするのか、警察に通報するのか、明確な定めはなく、微妙な判断はすべて現場に委ねられています。


▶Point:
動物虐待の早期発見に有効ではないかとされる獣医師の通報の義務化。ただ、本改正では通報先が分かりにくい点が課題とされています。


関係機関の連携を強化【第41条の4】

動物愛護業務を担当する部局と畜産や公衆衛生、福祉を担当する部局、警察、民間団体との連携を強化するために、以下に関する自治体位への情報提供や技術的助言等をすることが国の努力義務として定められました。

  1. 動物愛護管理担当職員の設置

  2. 畜産、公衆衛生または福祉に関する業務の担当部局、民間団体との連携強化

  3. 地域における犬猫等の動物の適切な管理に関する情報提供、技術的助言

施行スケジュール

今回の改正の施行スケジュールは3段階となっています。


1.公布から1年以内


■下記以外の改正事項全般


2.公布から2年以内


■環境省令等で定める動物取扱業者の遵守基準
■出生後56日を経過しない犬・猫の販売規制
※いわゆる8週齢規制


3.公布から3年以内


■マイクロチップの装着・登録義務等のマイクロチップ 関連の事項全般


まとめ

子どもと犬が幸せそうに寝転ぶ様子

いかがでしたでしょうか。わたしたちが法律に守られているように、動物だって法律に守られています。今回の改正で、動物虐待への罰則は厳しくなったものの、人間の法律に比べ、まだまだ甘いのが現状です。まずは、この法律をひとりひとりが正しく理解しておくことで、動物を守ることにつながっていくのではないでしょうか。動物が正しく守られること、そして、人間と動物が共生できる世の中を、これからも目指していきたいですね。

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