by 佐藤華奈子 2023.09.01
ずんぐりした体に短めの手足。鼻が平たく、耳が短くなったコアラのようなお顔のウォンバット。コアラやカンガルーほど知名度はありませんが、愛らしい動きや驚きの生態から度々話題になるオーストラリアの野生動物です。個性あふれる地球の仲間、ウォンバットの特徴やマメ知識を紹介します。
ウォンバットってどんな動物?
ウォンバットはオーストラリアに生息する有袋類(ゆうたいるい:腹部にある袋状の器官で、未熟な状態で生まれた子どもを育てるどうぶつのこと)。「ヒメウォンバット」「キタケバナウォンバット」「ミナミケバナウォンバット」の3つの亜種がいます。大きさは亜種により異なりますが、体長はおよそ70~120㎝、体重は11~35㎏ほど。しっぽは退化し、ずんぐりとしたクマのような体型です。分類上コアラが最も近い仲間ですが、木に登ることはなく、土の中に巣穴を作って暮らしています。そのため地上のコアラと呼ばれることも。名前の由来は、オーストラリアの先住民アボリジニーの言葉で「平らな鼻」という意味です。
草食動物で、夜に長時間歩き回って草や低木の根を食べます。日中は巣穴で過ごすことが多いですが、日光浴をして体を暖めるために出歩くこともあります。
「穴掘り名人」「ブルドーザー」と呼ばれるように、穴を掘るのが大得意。巣穴の長さは20~30mになることもあります。通路となるトンネルと、トイレや寝室などいくつかの部屋があり、1つの巣穴に10ヶ所ほどの出入口が設けられます。
基本的に繁殖期以外は単独で行動しますが、巣穴をほかのウォンバットと共有することもあります。天敵は、タスマニアデビルやディンゴ、キツネなどです。
ウォンバットの驚きのマメ知識
穴に潜って生活し、あまり目立つことのないウォンバット。でもおだやかな姿とは裏腹にびっくりするような生態が多々あります。
マメ知識①うんちが四角い!
ウォンバットの唯一無二の特徴が四角いうんちをすること。サイコロのようなキューブ状のうんちをするどうぶつは他に確認されていません。一体なぜ、こんな形になるのでしょうか。お尻の穴が四角いわけではありません。長年の研究で、特殊な構造の腸壁によるものということがわかってきました。厚く硬い腸壁と薄く柔らかい腸壁の2種類が組み合わさり、硬い部分を通過するときにうんちが固まり、柔らかい部分を通過するときに角ができて、腸の後半でキューブ状になることがわかっています。腸壁のほかに、生息地の乾燥した環境も関係しているといわれていて、動物園のウォンバットは四角いうんちをしないこともあります。巣穴の出入口が斜面になっているウォンバットにとって、この転がりにくい形が縄張りを主張するために好都合ともいわれています。
マメ知識②お尻が硬い!
速く走って逃げる、巣穴に逃げ込む、木に登るなど、どうぶつたちはそれぞれ天敵から逃れる方法を持っています。時には鋭い牙や爪、ツノで反撃をすることもあります。ウォンバットの武器は、なんとお尻! お尻が軟骨で覆われていてとても硬いのです。
ウォンバットは天敵に追われると、巣穴に飛び込み、お尻でフタをするように入口をふさぎます。もし噛みつかれても、硬いから大丈夫。力強い後足で蹴り上げたり、お尻を振り上げて天井とお尻の間に天敵の頭をはさんだりして反撃します。こうして反撃された側は死に至ることもあるのだとか。ユニークですがとても強い闘い方です。
マメ知識③時速40㎞で走れる
ウォンバットはあまり足が速いようには見えないかもしれません。実際に、普段はゆっくり歩いて行動します。しかし巣穴の外で天敵に会うと走って逃げます。このときの速さは時速40㎞近くになることも。あくまで瞬間的な速度で短い距離ではありますが、想像以上に機敏に動くのです。
マメ知識④歯は生涯伸び続ける
有袋類の仲間では珍しく、ウォンバットは歯が一生伸び続けます。硬い草木を食べることで伸びた歯がすり減り、長さが整えられます。草食とはいえ、鋭い歯を持っているので噛まれると危険です。
マメ知識⑤赤ちゃんを育てるポケットは後ろ向きについている
有袋類の特徴である赤ちゃんを育てるポケットは、お腹に後ろ向きについています。巣穴を掘って生活するので、穴掘りをしたときに赤ちゃんに土がかからないためです。子育て中のお母さんウォンバットを後ろからみると、股の間に袋から顔を出した赤ちゃんが見えることがあります。
マメ知識⑥性格は人懐っこい
ウォンバットの性格は温和でおおらかで、人に懐きやすいといわれています。とはいえ野生動物なので、警戒して攻撃的になることも。人であってもウォンバットを驚かせてしまったり、敵と見なされたりすると、猛スピードで駆け寄ってきて鋭い爪や歯で攻撃されることがあります。
マメ知識⑦飼育下では長生きする
野生下の寿命は5~15年程度ですが、飼育下では20~25年と長生きです。30歳を越えた例も何頭も確認されています。ちなみにギネスで世界最高齢と認定されたウォンバットは2022年時点で33歳。国内の動物園で飼育されています。
まとめ
癒し系の見た目に反して、機敏で強い一面もあるウォンバット。巣穴を掘ることが農業の妨げとなり害獣とされたこともありましたが、今では亜種のひとつキタケバナウォンバットの絶滅が危ぶまれていることもあり、大切に保護されています。
日本でウォンバットがいる動物園は多くはありませんが、いくつかの園で飼育されています。興味を持ったらぜひ会いに行ってみてくださいね。