2019.03.13
▲活動犬:バティ
前編では、活動の様子をご紹介しつつ、活動犬が利用者さんに与える影響力をご紹介しました。
続く後編では、人びとを元気づける活動犬が安全に活動できるよう、センター職員やボランティアさん、彩華園の職員さんがどのような取り組みをしているのか、前編にもご登場いただいた指導センター職員の中塚寛之さんのインタビューとともにご紹介します。
活動時だけではない、知られざる努力
▲活動犬:りんご
彩華園のミーティングルーム内でも落ち着いている
彩華園の利用者さんたちと、おだやかにふれあっていた活動犬たち。ワンちゃんがこのようにふるまえる秘訣は、活動時以外にも、絶えず努力を積み重ねているからでした。
「毎月2回、指導センターでは『養成犬教室』という勉強会をやっていて、ボランティアとワンちゃんたちに参加してもらっています。1時間程度、全員着席した状態で講義を聞いてもらうのですが、そうやって定期的に集まって、ワンちゃん同士がお互いを認識しあう状況を保つことが、スムーズに活動するために重要です。
例えば、今日初めて会ったとか、久しぶりに会ったワンちゃん同士となると、興奮して活動にならなくなるんです。男の子同士はやっぱり争ってしまいますし。でも今日集まってくれたワンちゃんたちは、養成犬教室を通じてお互いを認識しあっているので、そういうことがありません。そういう努力の積み重ねの結果が、活動につながっていると思います」(中塚さん)
ちなみに、養成犬教室で講義を行う場所は、彩華園のミーティングルームをモデルにしているとのこと。ボランティアに車いすに乗ってもらったり松葉づえをついてもらった上で他のワンちゃんたちと一緒に過ごしたり、部屋移動を体験するのだとか。
活動場所としてもっとも規模が大きい彩華園をモデルにし、活動犬たちを実践に近い状態に慣れさせることで、スムーズに活動ができるように配慮されていました。
活動犬のストレスを少しでも減らしたい
▲センター活動犬:シルク
さわられるのが少し苦手な様子
活動を通して人々の笑顔を増やしている活動犬。ワンちゃんが、安全に活動するために、センター職員、ボランティアの皆さんは、活動中の活動犬のストレス具合を常に確認し、活動犬が疲れていそうならハンドラーが利用者さんと代わりにお話しするなどして、活動犬を休ませるようにしていました。
「ワンちゃんたちにしても、大勢の知らない人が自分をさわろうとするのだから、やっぱり負担が大きいはずです。でもこの活動は、さわることだけがすべてではなくて、私は“目から入るもの”の効果もあると思っています。
シルク(センター活動犬)は、活動犬のなかでも特にさわられるのが苦手なので、シルクに頑張ってもらうために自分はどうしたらいいかを考えながら活動しています。さわらせるよりも、シルクを見てもらいつつ、自分が利用者さんとしゃべったり握手をしたりして、シルクのストレスを軽減しながら活動しています」(中塚さん)
ひとくちに活動犬と言っても、個性も経験も特徴も違うワンちゃんたち。その違いを正して「みんながこうあるべき」とするのではなく、それぞれの個性を活かしつつ、ワンちゃんも人も協調することが、動物介在活動を行うにあたっては不可欠なのだとわかりました。
活動犬が元気づけるのは、利用者さんだけではない
▲活動犬:リバティ
彩華園の職員さんとふれあい中
活動犬が元気づけるのは、利用者さんだけではありません。彩華園で勤務されている職員の方々もまた、活動犬にふれあうことで励まされるのだといいます。
「この活動は利用者さんへの影響ももちろんですが、実は働いている職員の方たちを癒すことが、利用者さんに一番還元されると思っています。職員の方たちにも参加してもらって、癒されてもらって、その分を利用者さんに返してもらうという、いい循環ができるように考えています」(中塚さん)
さらに、ボランティアの皆さんも愛犬とともに活動することで交流の場が増えたり、愛犬が活動する姿に元気をもらっているとお話を聞かせてくださいました。
動物介在活動を知ってほしい
▲活動後のボランティアの皆さんと活動犬たち。無事終了し皆さん笑顔!
動物介在活動を実際に見学させていただき、活動犬が安全に活動できるよう多くの方が努力されていること、その上で活動犬も精一杯与えられたお仕事を全うしていることを知りました。
そして、やはりワンちゃんは人々を明るくする力を持っていて、ワンちゃんを通して元気づけられた方々を見ることが私たちの元気にもつながりました。
この記事を通して動物介在活動に興味を持ってくださった方がおひとりでも増えれば嬉しい限りです。
今回、活動の見学にご協力いただいた埼玉県動物指導センター様、動物愛護ボランティアの皆様、彩華園様、ボランティア活動犬に心より感謝申し上げます。
【関連リンク】
埼玉県動物指導センター
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ワンちゃんが元気をお届け! 動物介在活動の魅力 ―前編―