by 編集部 2023.05.09
各都道府県には、地域の動物のためにさまざまな活動をしている「動物愛護推進員」というボランティアの方々がいることを、ご存じでしょうか。ボランティアの方々は、それぞれが動物愛護において関心が高い分野で活動をしています。
今回はそんな動物愛護推進員の方に、実際にどんな活動をしているのか、また動物に対する想いなどについてお話を伺いました。
【関連記事】
「自治体の動物愛護への取り組みを知ろう!~埼玉県の場合~」
「適正飼養」をキーワードに行政と市民の橋渡しになりたい 岡井 様(推進員歴13年)
推進員になったきっかけを教えてください。
ロンドンで過ごしていたとき、飼育動物の扱いが日本と違うなと感じていました。日本で目にしたものは、炎天下で過ごしている動物…「人に飼われているのだろうけどケアができていないような現実」でした。そこで、飼い主さんへ、動物を正しく飼うという意味の「適正飼養」を啓発できないかと考えました。当初から、自分のキーワードは「適正飼養」。これを一番に伝えるために、推進員になりました。
「適正飼養」を啓発するために、どのような活動をされているのでしょうか?
熱中症の予防イベントを行っています。地域で、人に対しての熱中症の予防イベントが行われることを知ったとき、そこから飼育動物に繋げる良い場所だと思いました。推進員の中で、「チーム上尾(あげお)」というグループを作り、活動をしています。特に「人もペットも熱中症予防」というチームの取り組みでは、熱中症予防声かけプロジェクトという非営利団体が開催している「ひと涼みアワード」で、5年連続優秀賞を受賞しています。
どのようなときにやりがいを感じますか?
イベントに来て、見て、感じて、「あ~そうだったのか!」と感動していただけたとき、良かったなと思います。こちらはあくまでも知るきっかけを提供しているだけなので、参加された方は感じたことを基に行動に移してもらいたいと思っています。
推進員としての、これからの目標を教えてください。
行政と市民の橋渡しとなり、啓発活動を継続していくことです。「行政と共に市民に啓発していくこと」に意味があると思っていますが、行政のメンバーも変わりますし、今年も去年と同じことができる!とは限らず意外と継続が難しいのです。
動物愛護に対する思いや、地域の人々へのメッセージがありましたらこの場でぜひお話しください。
動物を飼っている方、これから飼おうと思っている方で「適正飼養」についてあまり考えたことがないな…という方は、是非正しい知識と情報で、動物をケアしてほしいと思います。命を預かり、生涯ケアができるよう、ご自身のライフサイクルと合わせて動物を飼うことについて考えることが重要だと思っています。
また、飼っていない方に関しては、動物を飼う側がマナーをしっかり守り生活していくことを、温かく見守っていただきたいです。
人と動物の共生社会を作っていきたい 清水 様(推進員歴10年)
※この画像はイメージです。
推進員になったきっかけを教えてください。
動物との共生社会を実現させたい、そのために、地元で行政と連携して、地域と繋がり、自分のスキルを活かしたいと思っていました。
主にどんな活動をされているのでしょうか?
ペット防災のイベントを行っています。あるとき、町内会の懇談会で「高低差のある地域だからこそ、人に対して防災イベントをやろう」と決まり、地域アドバイザーの方が行うことになったのですが、その際「並行して飼育動物に対してもイベントをできないか」と依頼があったのです。
地域の繋がりのきっかけになると思い、幅広い層が参加できるようなイベントにしました。ペット防災の講演には50人程度の方に参加していただきました。中には「ペット防災」という言葉が新鮮に感じる方もいらっしゃったようです。
他にも活動されていることがあると伺いましたが…
「クリーンアンドマナーアップキャンペーン」ですね。「動物との共生社会を目指す会 Vest.」という、推進員と朝霞市民を中心としたグループで活動を行っています。市民の方々と一緒に、動物の糞を含め、市内の道路上のゴミ拾いを行ったり、ワンちゃんをお散歩中の方を見かけたら、ゴミ袋をお渡しするなどして、マナーの啓発をしています。
おかげで、今はほとんどゴミを見かけなくなりました!お子様連れで参加してくださる方もいらっしゃり、みなさん喜んで一緒に活動してくださいます。
推進員としての、これからの目標を教えてください。
推進員だけでは力が足りないと感じることがあるので、市役所・保健所などもっと行政と連携して活動していきたいです。
動物愛護に対する思いや、地域の人々へのメッセージがありましたらこの場で是非お話しください。
高齢者と飼育動物の問題について、対応が必要だと感じています。最近、高齢者ご本人から「入院、施設入所で動物の行き場が…」という相談を受けることがあります。年金生活、生活保護受給者の方がペットシッターを利用することは難しく、行政と連携して協力的な受け皿になっていけたらより良いかなと思います。
多くの人に命の大切さを知ってもらえる活動をしていきたい 望月 様(推進員歴15年)
推進員になったきっかけを教えてください。
もともと愛玩動物飼養管理士の資格を持ち活動していたのですが、その活動仲間に埼玉県の動物愛護推進員をしている方がいて、誘われました。当時は、推進員は公募するものではなく、推薦形式だったのです。
主にどんな活動をされているのでしょうか?
推進員が主体の「わんtoきっず」という団体を立ち上げ、お子様向けの「お仕事体験」イベントを行っています。「わんtoきっず」には現役のトレーナー、獣医師、トリマーがいます。仕事に関するリアルな話が提供できることはもちろんですが、人や動物に対する思いやり、命の大切さなど、動物愛護の気持ちを育むことができる、と思ったことがこの団体を立ち上げたきっかけです。
「わんtoきっず」メンバーと暮らしている動物たちの中で、トレーナーの判断でイベントに無理なく参加できるような子を選び、実際にイベントに連れていっています。
「お仕事体験」の評判はどうでしょうか?
いつも早々に定員オーバーとなり、親御様もお子様もとても喜んでくださいます。お子様には「動物を迎えるときには、生涯責任を持ってお世話ができるかどうか考えよう、○年後にあなたたちが○歳になったときを想像してみよう、もし無理そうと思うなら、迎えないことも愛情なんだよ」とお話をしています。
あるとき「ちゃんと家族と相談したよ!」と報告をもらったときにはやりがいを感じました。ただ、動物同伴可能な施設がそこまで多くなく、加えて今はコロナ禍でイベントを行いたくてもできない状況で、もどかしい思いをしています。
推進員としての、これからの目標を教えてください。
今の子どもたちが大人になったとき、自分や動物の命の大切さをきちんと考えることで、相手への思いやりを持てるようになってほしいと思っています。そのような子どもたちが増えるよう、活動していくことが目標です。人と動物の命の大切さを知る人が増えれば、おのずと、不幸になってしまう動物は減っていくでしょう。
動物愛護に対する思いや、地域の人々へのメッセージがありましたらこの場で是非お話しください。
もし「動物をお家に迎えたい」と思ったときは、人間と暮らすことが幸せな動物か、それがどんな動物なのか、どんな本能を持つのか、どんなお世話やしつけが必要なのかを、事前に把握することが重要だと思います。その命に一生責任を持つことが、双方の幸せとなるはずです。
インタビューを終えて
今回、3名の動物愛護推進員の方にお話を伺いました。やはり共通するのは「命の大切さを知り、動物に対する正しい知識を持ち、人と動物の適切な関係を築いていきたい」という思い。今回お伺いした活動も、それぞれの信念に基づいていて、私も参加してみたいと思うようなものばかりでした。今回初めて動物愛護推進員について知った方も、興味を持っていただけたらとても嬉しいです。
【関連リンク】
動物との共生社会を目指す会 Vest.
(清水様より伺った「クリーンアンドマナーアップキャンペーン」を行うグループ)