2023.05.22
リクガメはとてもおとなしく、人によく慣れる性質があり、頭も良く学習能力が高いといわれます。リクガメにはどんな特徴があるのか、飼育に必要な道具やごはん、一緒に暮らしていくポイントをご紹介します。
目次
リクガメの特徴(種類・寿命・生息地など)
リクガメは、爬虫類カメ目リクガメ科のカメの総称です。世界中に約60種類ほどいるとされ、乾燥した草地や砂地などに住み、水に入ることはほとんどありません。
野生のリクガメの生息地は、ヨーロッパ南部や、アフリカ、アジア南部、アメリカ大陸など幅広く分布していますが、日本には生息していません。
リクガメの種類は様々ですが、ペットとしてよく見られるリクガメは、小型種の20センチほどのサイズが主です。ヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ロシアリクガメ、ホルスフィールドリクガメ(別名ヨツユビリクガメ)などが挙げられます。ゾウガメに代表されるような大型種には、甲長が50㎝を超えるものもいます。
リクガメの甲羅は、ミズガメに比べて盛り上がっていて、ドーム型が多く幾何学模様が特徴です。※甲羅が扁平な種類も例外的に存在します。
口は、ギザギザが付いたくちばしのような形で、小さい舌を持っています。口で植物を咬み切ったあと、舌も使い、野菜や果物を含む植物を上手に食べるようにできています。ミズガメと異なり、手に水かきが無くツメが生えています。
リクガメは、野生下では10度以下になると冬眠を開始します。飼育下では冬眠を避けるため、25℃~32℃の高い温度で飼育します。冬眠させると、亡くなってしまう危険があるためです。
ペットとして飼育するリクガメの寿命は20~50年以上といわれますので、大事に育てましょう。次に、飼いやすい小型のリクガメの飼育に必要なものを紹介します。
飼育に必要なグッズは?
リクガメを飼うにあたって必要なものは、以下の通りです。
ケージ
多くの方が爬虫類用ケージを使用しています。ガラス製やアクリル製、プラスチック製のものがあります。引き戸を開けてお世話ができるようになっていて観察がしやすい、網目状のため温度や湿度調節がしやすいというメリットがあります。なお、ケージの代用品となるプラスチックのケースなどで飼育している方もいます。
ヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ホルスフィールドリクガメは、60㎝幅のケージがあれば飼育は可能ですが、運動量が多く活発に歩き回るため、可能であれば90㎝幅以上の広いケージを用意してあげると良いでしょう。高さは、リクガメが乗り越えられなければ問題ないため、低くても大丈夫です。
また、ケージの上が開くタイプと手前が開くタイプがありますが、天敵による上からの動きを怖がる場合もあるので、性格に合わせて選ぶのがおすすめです。
床材
リクガメの床材には、赤玉土、ヤシガラ・ヤシガラ土、バークチップ、フォレストフロア、人工芝など様々な種類があります。それぞれのメリット・デメリットを比較するとともに、飼育するリクガメが多湿と乾燥いずれを好む種類であるかを考慮し、わが子に合う床材を選びましょう。
【赤玉土】
弱酸性で硬すぎないものを選びましょう。値段が安く保湿性や排水性にも優れ、他の床材と混ぜて使用することもあります。土埃が出るので、汚れやすく掃除に手間がかかるというデメリットがあります。
【ヤシガラ・ヤシガラ土】
ヤシガラとは、ヤシの木や実の繊維を粉砕したもの。ヤシガラ土は、それをさらに細かく砕いた床材です。
ヤシガラのメリットは、保湿性が高く、乾燥したまま使用することもできる点。多湿と乾燥、いずれの環境を好むリクガメでも使用することができます。
ヤシガラ土のメリットは、保湿性に優れ、足元も適度に固まり歩きやすい点ですが、赤玉土と同じく土埃が出るので、汚れやすく掃除に手間がかかるというデメリットがあります。
写真提供:アニコムアンバサダー2期生 たわしちゃん(ヤシガラ使用時)
【バークチップ】※1
松の皮を砕いた床材です。床材が柔らかそうな場合、硬いバークチップを混ぜることで、調整することができます。保湿性は低いため、乾燥した環境を好むリクガメに使用することが多いです。
写真提供:アニコムアンバサダー2期生 たわしちゃん(バークチップ使用時)
【フォレストフロア】※1
ヒノキの皮を砕いた床材です。保湿性は高く、多湿環境を好むリクガメに最適です。
※1 木を原料とした床材は、アレルギーが生じる場合があるので注意して使いましょう。
【人口芝】
埃などが出ないため交換がしやすく、洗浄も容易にできるというメリットがありますが、誤飲の可能性がある点に注意が必要です。
【新聞紙・ペットシーツ】
頻繁に交換が必要になりますが、埃などが出ないため交換はしやすく、ケージ内を清潔に保ちやすいというメリットがあります。
ヒーター
ヒーターには、ケージ上部に設置し、上からリクガメと空間を温めるヒーターと、ケージ下に設置し下からリクガメを温めるパネルヒーター、一部分の狭い場所を集中して保温できる保温球のような照射スポットランプ、バスキングライトなどがあります。
ヒーターを使ってケージの中で、30~35℃程度の温度の高い部分(ホットスポット)と低い部分を作ると、自分で好みの温度帯へ移動できるので、ケージ内に温度勾配をつけてあげましょう。
食後はお腹を温めて消化を促すので、ケージの下から温めるパネルヒーターを、ケージの1/3くらいの範囲に設置しましょう。また、室温の上がりすぎを防ぐために、設定温度を超えると自動的に電源がオフになり自動管理できるものや、サーモスタットを併用すると良いでしょう。室温が下がると自動的に電源が入るので、ケージ内の温度を快適に保つことができます。
さらにケージ内の温度は周辺の環境温度にも影響を受けます。必要に応じてエアコンや暖房器具を併用して、リクガメが快適に過ごせるように気をつけてあげてください。
温湿度計
リクガメを飼育するにあたって温度と湿度の管理はとても重要なため、必ず用意しましょう。ケージ内が快適な状態であることは、健康維持にもつながります。
最適温度:昼間30℃前後、夜間23~27℃
最適湿度:乾燥地帯に住むリクガメの場合40%、多湿地帯に住むリクガメの場合60~80%
照明
リクガメは強い紫外線を浴びることで、カルシウムの吸収を促進させるビタミンD3を体の中で作り、健康的な甲羅を維持し、成長しています。紫外線ライトは、とても重要なため、必ず用意しましょう。
ライトには、電球タイプや蛍光管タイプがあり、ワット数や紫外線の照射量は様々です。使用するケージに合わせて選ぶと良いでしょう。
ライトにタイマーを付けることで、ライトの照射を管理できます。夏は10時間、冬は8時間など、日照時間を目安として季節により照射時間を調整しましょう。
シェルター
野生のリクガメは外敵から身を隠して生活するので、隠れ場がある方がストレスは軽減され、安心して生活ができます。リクガメのサイズに合ったものか、少し大きめのシェルターを設置してあげましょう。市販品のシェルターには、岩を模したロックシェルターや木製のシェルター、ケージ内のオブジェも兼ねるものなど、様々な種類があります。植木鉢などの園芸用品を使用したり、ブロックや木材から手作りされる飼い主さんもいますが、素材によってはリクガメが登ろうとして落下したり、素材自体が重いなどのデメリットもあるので、最初は飼育用の市販品を使うことをおすすめします。
水飲み皿
ひっくり返されない安定感のある、浅めの容器を選びましょう。水入れは毎日洗浄して、新鮮な水を用意してください。
餌入れ
平らなタイプの平皿と、柵が付いている皿の2種類があります。
【平皿】
素材にもよりますが、重みがある方が、設置場所から動きにくい、リクガメが乗ってもひっくり返らないなどといったメリットがあります。飼育用の市販品は上記の機能が付いているのでおすすめです。人間が使うお皿を使用している飼い主さんもいます。
【柵が付いている皿】
円形のステンレス製が多く、リクガメが頭を伸ばして柵の間から餌を食べられる設計になっています。多頭飼いの場合は、それぞれの方向から各自満遍なく餌を食べられるというメリットがありますが、カメの大きさによっては柵の内側に入ってしまう可能性や、位置がずれやすいので、注意が必要です。
レイアウトグッズ
リクガメが歩き回る場所を多く確保するため、水入れや餌入れ以外は入れない方が良いでしょう。ただ、リクガメが簡単に登れるような傾斜のあるレンガや石などを置いてあげると、適度な運動になります。
ごはんは何をあげればいい?
成長期の幼体では、1日1~2回、成体の場合は1日1回、必ずごはんを与えましょう。1回分の量として明確な決まりはありませんが、少し残すくらいの量を与えてください。ごはんの時間は、リクガメの代謝が上がる午前中がおすすめです。
ヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ホルスフィールドリクガメなどは草食性で、野菜や果物が主食で、キノコも食べます。また、リクガメの種類により好みが分かれ、植物や昆虫を食べる種類もいます。以下に、リクガメの飼育時に与える代表的なごはんを記載します。
野菜
主食の野菜に他の野菜や野草を組み合わせながら、全部で3~4種類を用意してあげるのが理想です。
【主食として与える野菜】
小松菜、チンゲン菜、大根の葉、カブの葉、水菜、豆苗、つまみ菜、サラダ菜、モロヘイヤなど
カルシウム・ミネラル・鉄分・ビタミンが豊富に含まれる栄養バランスの良い葉物野菜を主食として与えましょう。
【副食として与える野菜】
キャベツ、レタス、オクラ、白菜、アスパラガス、そら豆、枝豆、シイタケ、マイタケなど
主食として与える野菜よりも栄養バランスが劣っていたり、成分のバランスが偏っていて過剰摂取に注意が必要な野菜は、副食として与えるようにしましょう。
【たまに与える野菜】
キュウリ、トマト、カボチャ、ニンジン、サツマイモなど
菜の花やブロッコリーも与えて問題ありませんが、アブラナ科の野菜は多く与えると甲状腺に負担がかかるので、少量もしくはご褒美程度にあげてください。ほうれん草のようにシュウ酸が多く含まれる野菜も与えて問題ありませんが、少量にとどめてください。
野草
野草を野菜の代わりに食べているリクガメもいます。野生のリクガメは一生のうち、何十~何百種類もの植物を食べるといわれます。あらかじめ品種を調べ、安全性を確認してから与えるようにしましょう。
【手に入りやすい野草】
タンポポ、ヨモギ、ハルジオン、シロツメクサ、エノコログサ、ホトケノザ、オオバコ、ナズナ、ハコベ、オオイヌノフグリ、ツユクサ、オニタビラコ、カラスノエンドウ、ノゲシ、ヒメオドリコソウ、スズメノカタビラなど
果物
バナナ、リンゴ、イチゴ、キウイ、マンゴーなど。
栄養価が高すぎるため、食欲不振や体調不良時に、栄養補給として与える程度が良いとされます。
サプリメント・人工フード
サプリメントや人工フードは、不足した栄養分を補うものです。主食(野菜・野草)をしっかり与えたうえで、あげるようにしましょう。
カルシウムやミネラル補給には、市販のカトルボーン(イカの甲)や牡蠣殻をかじらせる、カルシウムパウダーを与えるなどが効果的です。ビタミン補給には、ごはんに振りかけるビタミン剤があります。
リクガメ飼育用の人工フードは、栄養バランスが整っていますが、与えすぎると肥満になります。記載の用量を守りましょう。
日頃から気をつけてあげるべきことは?
日頃からリクガメの様子をよく観察し、異変に気がついてあげることが、病気の予防や早期発見につながります。次のポイントを参考にして、日々の健康チェックを心がけましょう。
目、鼻、口、耳
【目】
ちゃんと目を開いているか、目やにがついていたり涙目になっていないか、目が濁っていたり赤くなっていないか、左右の目に違いがないかなどを確認しましょう。
【鼻】
鼻水を垂らしていないか、鼻ちょうちんができていないかを確認しましょう。カメは横隔膜が無いので、咳やくしゃみができません。上記の症状があれば感染症やアレルギーの可能性や、環境面で問題がある場合もあります。
【口】
口を開ける動作が多くないか、口を開けて呼吸していないかを確認するだけでなく、口腔内もチェックしましょう。口が白っぽくないか、口内炎や膿が出ていないかを確認することも大切です。
【耳】
目の後方にある、皮膚が薄く丸くなっている部分が耳です。目の脇が腫れている場合は耳の病気の可能性があるので注意しましょう。
皮膚、爪、甲羅
【皮膚】
腫れやコブ、傷がないかを確認しましょう。外傷から細菌感染が生じたり、膿瘍が形成されてコブになったりすることがあります。
【爪】
通常、床材を掘ったり、硬い部分を歩き回ったりするうちに削れることが多いのですが、室内やケージでリクガメを飼育していると、柔らかい床材上での生活となるため、爪切りが必要になることがあります。爪が伸び過ぎると、甲羅を持ち上げて歩行できなくなることもあるので注意してください。また、栄養障害になると爪が曲がって伸びるなど、伸び方に異常をきたすこともあります。
爪に光を当てると、神経と血管が通っている部分は濃いピンクで、先端は薄くなっています。先端の色が薄い部分のみ、数ミリ残して切っていきますが、飼い主さんで難しい場合は動物病院にお願いしましょう。
【甲羅】
ケラチンというタンパク質が主成分として作られています。健康なリクガメの場合、甲羅の大きさが毎年少しずつ大きくなりますが、健康面で問題があると甲羅の形が変形し、均一に大きくならなくなります。この場合は、栄養状態に問題があるか、代謝性疾患などの病気の可能性があります。甲羅の色に変色や斑点が見られる場合は、感染症の可能性があります。
尿、便、総排泄腔
【尿】
リクガメの健康な尿は、無色で水に近く無臭です。臭いが強いときは、尿路系に異常が生じている可能性があるので、臭いをチェックしましょう。
【便】
健康な便の色は、黒緑色をしています。便が硬い場合や踏ん張っても排便しない場合は、便秘の可能性があります。水分を多く含む形が無い便の場合は、下痢の可能性があります。
【総排泄腔】
カメをはじめとした爬虫類は、ひとつのおしりの穴から、便・尿・卵が出てきます。この穴を「総排泄腔」と呼びます。腫れや変色が無いか、石が詰まってないか、臓器の脱出がみられないかを確認しましょう。
元気、食欲
【元気】
リクガメの運動量はかなり多く、日中は活発に動き回ります。いつもの行動に変わりがないかを確認しましょう。
【ごはん】
食べた量と、食べたものに偏りがないかを確認しましょう。嗜好性の高い野菜や果物だけ食べて、主食の野菜を食べなくなった場合、食欲の低下や病気が疑われます。
体重
お迎えしたばかりの頃や幼体の頃は週に1回程度、体重と甲長を測りましょう。成体の場合は月に1回測定すると良いでしょう。甲長は、リクガメの頭側の甲羅の端から、尾のある反対側の端までを計測します。体重だけでなく、元気や食欲、排泄の状況など、複数の健康チェックを踏まえて判断することが大切です。
リクガメを診てもらえる病院は?
いかがだったでしょうか?気をつけないといけないことがたくさんあって驚かれた方もいらっしゃるでしょう。
どんなに飼い主さんが愛情を持って日々注意をしていても、ケガ・病気になってしまう可能性はゼロではありません。アニコム損保の統計によると、カメには呼吸器疾患や消化器疾患が多く見られます。
※アニコム損保「家庭どうぶつ白書2022」より
万が一のときにわが子を診てもらえる病院は、必ず事前に確認しておきましょう。
どうぶつ病院を探すには、アニコム損保の【どうぶつ病院検索】が便利です。
リクガメのことを正しく理解して、最後まで大切に飼育してあげてくださいね。
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