珍しい種もたくさんいる! 日本の野生動物の特徴

by 佐藤華奈子 2023.09.01

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海に囲まれ山岳地帯もある日本は、実は固有な野生動物の宝庫です。でも国内にどんな野生動物がいるのか、知る機会は少ないのでは。日本の代表的な野生動物を聞かれても、すぐに思い浮かばない人もいるでしょう。ここでは、世界的に見ると珍しい日本の野生動物の特徴について解説します。私たちにとっては身近なあの動物も、世界規模で見るとレアな種かもしれません。

日本の野生動物の特徴

国土が南北に長い日本は、ほとんどが温帯であるものの、亜寒帯から亜熱帯までいくつかの気候区分に分かれています。さらに高山帯や平野、河川、海とさまざまな自然環境があり、地域によって生息する動物の種類が異なります。特に北海道は本州以南と大きく異なるため、津軽海峡が生物地理学上の分布境界とされ、この境界線が「ブラキストン線」と呼ばれています。一方の南側は、屋久島・種子島と奄美大島の間で大きな違いがあることがわかっていて、この境界が「渡瀬(わたせ)線」と呼ばれています。
日本に生息する動物種は、ユーラシア大陸とつながっていた名残として大陸のものと似ています。それでいて、日本にしか生息していない「固有種」が多いという特徴があります。なんと陸に住む哺乳類のおよそ4割、爬虫類の6割、両生類の8割が固有種です。たとえば哺乳類では、ニホンザル、ニホンカモシカ、二ホンノウサギ、二ホンリス、ムササビ、二ホンモモンガ、ヤマネ、アカネズミ、ヤチネズミ、アマミノクロウサギなどが固有種になります。ニホンオオカミ、二ホンカワウソも固有種でしたが絶滅してしまいました。
固有種といえば、オーストラリアにしかいないコアラやカンガルー、カモノハシなどが有名です。これらは本当にオーストラリア大陸にしかいない、類を見ない野生動物です。ところが、日本の場合はサルにしてもノウサギやリスにしても、海外に同属の仲間が生息しています。固有といわれてもあまりピンとこないかもしれませんが、野生生物の保護を考えたとき、種の多様性はとても重要なことです。植物も含めた日本の野生生物は、確認されているだけでおよそ9万種になります。ひとつの島国に多様な生物種が集まっているということは、それだけで貴重なことなのです。

日本に生息する哺乳類

国土面積のわりに多様な哺乳類がいることも、日本の野生動物の特徴のひとつです。その数は100種以上。ここからは哺乳類に焦点をあてて特徴を紹介します。
ブラキストン線から上の北海道は、大陸と離れて島になった歴史が比較的浅いため、大陸と共通する種が多く見られます。北海道の野生動物として、エゾヒグマやエゾシカ、エゾナキウサギなどが有名ですが、これらは固有種ではなく、地域群のひとつである亜種とされています。
その下の本州から九州、四国では、ニホンザルや二ホンノウサギ、ヤマネなど小型哺乳類の多くが固有種です。
そして渡瀬線より南の南西諸島には、西表島のイリオモテヤマネコ、奄美大島のアマミノクロウサギなど生きた化石と呼ばれる原始的な種がいます。これらは海で囲まれた島という環境のために、大陸と陸続きのときに入ってきた種が原始的な形を残してきたといわれています。大陸にいる近縁種(生物の分類上、近い関係にある種のこと)よりも原始的な形をしていたり、近縁種が絶滅したりして、学術的に貴重な種とされています。 ちなみに日本で最も大きな哺乳類はクマ。北海道にいるエゾヒグマは100~300㎏程と、世界のヒグマと比較すると小さめですが、過去には体重520㎏、体長243cmのオスが記録されているようです。そして最小の哺乳類はトウキョウトガリネズミ。「トウキョウ」とありますが、実際の生息地は北海道です。世界最小の哺乳類であるチビトガリネズミの亜種で、体重はわずか1.5~1.8gほど。1円玉2枚分より軽いネズミです。

日本独自の野生動物種は?

固有種が多い日本の哺乳類の中でも、世界で有名な日本独自の仲間を紹介します。

北限のサル

ニホンザルは、いうまでもなく顔とお尻が赤く、多くの動物園のサル山にいるあのサルです。日本では珍しくない野生動物ですが、実は人間を除く霊長類で最も北に生息しているのがニホンザルです。サルの仲間はたいてい暖かいところに生息しています。そのため、雪が降るところにサルがいる、ということが世界的に見るととても珍しいのです。ニホンザルは英名で「Snow Monkey」と呼ばれています。ニホンザルのなかでも最も北の下北半島に住むニホンザルは「北限のサル」として国の天然記念物に指定されています。

山奥の生きている化石

国の特別天然記念物に指定されている二ホンカモシカ。本州や九州、四国の山岳地帯に広く生息しています。紛らわしいのですが、カモシカはシカ科ではなくウシ科の仲間。分類上は同じウシ科のヤギに近い動物です。ウシ科の中でも原始的な形を残していて「氷河期の生き残り」「生きている化石」と呼ばれることもあるほどです。カモシカ属の仲間はほかにタイワンカモシカ、スマトラカモシカがいて、ニホンカモシカを加えても3種のみ。学術的にもとても貴重な種です。

世界中にいても日本が最多

日本全国の山地や林、草原で見られる二ホンジカ。日本にはエゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクシカなど複数の亜種がいます。二ホンジカの英名は「sika deer」。発音は「サイカディア」ですが、sikaは日本語のシカに由来しています。意外にも日本の固有種ではなく、中国やロシアにも生息しているほか、ヨーロッパやアメリカ、ニュージーランドなどで人為的に移入されて野生化しているケースもあります。とはいえ本来の生息地で絶滅してしまったところもあり、現在は日本が個体数も亜種の数も最も多い国となっています。

こんな動物見たことない!といわれる珍獣

世界3大珍獣のひとつであるコビトカバと海外の動物園が交換してくれて、その動物を一目見ようと長蛇の列ができる……そんなレアな野生動物が何かわかりますか?
答えは……タヌキ! 日本では都市部でもみられる身近な野生動物です。ところが世界の生息地をみると、日本以外ではベトナム北部、中国東部~北東部、ロシア南東部など、極東にしかいない珍しい存在なのです。海外ではタヌキを知らない人も多く、知っていても実在しない空想上の生き物と思われていることも。英語ではアライグマ(raccoon)に似ていることから「raccoon dog」と呼ばれています。dogはタヌキがアライグマ科ではなくイヌ科であることからきています。日本語の「Tanuki」で紹介されることもあり、固有種や絶滅危惧種でなくても、日本を代表する動物といえます。


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まとめ

日本の野生動物の特徴や代表的といえる動物種を紹介しました。世界的には珍しい野生動物でも、日本では農作物の被害が問題になっているケースもあります。これは世界各地で起きていることで、絶滅危惧種のコンドルやトラも家畜を襲う害獣として駆除されてしまうことがあります。人間の生活を守りつつ、どうやって希少な野生動物と共生していくか。それは地球規模で考えていかなくてはならない問題で、多様な固有種がいる日本に住む私たちが、率先して考えていくべき課題といえるでしょう。

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コメント1

さくさん

ほかはとってもわかりやすくてよかったのですが名前の一覧がほしいです。

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