海の向こうからいぬ語り⑥ 犬を責めないでキャンペーン(飼い主の責任!)

by 藤田りか子 2018.11.27

ある日本のメディアの方から質問をうけた。


「電車など公共の乗り物に犬も乗れるし、犬に保険をかけている割合も世界一だそうですし、スウェーデンっていう国は犬に甘い国と理解してよろしいですよね?」


スウェーデンは犬大国であるということを、どこかで聞きかじったらしく、犬たちが好き放題をしても許される国、と理解されたようだ。


彼はジャーナリストだが、犬の世界に携わる人ではないから、「犬に責任のある国」と「犬に甘い国」のニュアンスの区別がよくつけられなかったのだろう。よって無理もないのだが、しかし一般の「犬大国」に対する見解とは、やはりその程度のものか、と少しがっかりした。




スウェーデンが犬を大切にする国であるのは確かだ。80%の飼い犬に保険がかけられている。外での犬のおしっこをとやかく言われる日本に比べると、大半の犬たちはのびのびと暮らしている。散歩も十分している。スウェーデンの散歩平均時間は約一時間だ。世界的にも非常に長い散歩愛好国。そしてこの国では犬の嗅覚を利用した、簡単なドッグスポーツがとても盛んだ。狩猟犬として活躍する犬もたくさんいる。つまり犬たちは犬らしく「したいこと」をさせてもらっている。その意味では「犬に甘い国」であるかもしれない。


しかし、電車に乗れる、という「甘さ」が許されるには、犬好きの間のみならず、まず社会で犬が受け入れられてなくてはならない。となると、スウェーデンは社会での秩序を保ちながら犬に甘い国、と解釈したほうがよさそうだ。そして秩序を作るのは、犬ではなく、人間。そう、飼い主の責任である。




スウェーデン・ケネルクラブは2013年4月、「犬を責めないで!」キャンペーンを全国的に開催した。


このうたい文句、裏を返せば「犬じゃない! 責めるのなら飼い主!」ということなるのだが、まさに「飼い主の責任意識を高めよう!」というのが、その意図だ。つまり社会で犬がより甘えられる環境をつくるには、まずは飼い主の公衆におけるエチケットが守られていなければならない、ということ。


「私たち犬愛好家は、往来の人々すべてが犬を好きではない、ということをちゃんと認識すべきです。その中で相手を思いやり、秩序よく犬と暮らしてゆくべきでしょう」


とはケネルクラブのキャンペーン責任者の一人であるマリーアン・ニルソンさん。犬好きでもない人のところに、突然リードにつながれていない犬が走ってやってきたら? これは社会のエチケット違反である。




このキャンペーンにおいて、「さすがスウェーデン」と私が高く評価したのは、ケネルクラブが「国民レベル」でこのキャンペーンを繰り広げたところだ。単なるクラブ内の内輪運動ではなく、いくつかの大都市の広場でブースを立て、デモやスピーチを行うなど、メディアを巻き込んで大々的に展開した。


会報誌などで会員に向けて少々仰ぎたてても、このキャンペーンに比べれば、あまり効果は期待できないだろう。自ら、公衆の場に出ねば。スウェーデンでは、社会における犬の認知度はすでに、かなり高いのである。




最後に、「犬を責めないで」キャンペーンで謳われている「飼い主のための賢い12のルール」を紹介したい。いくつかはとてもベーシックだが、私たち日本人飼い主にとっても、非常に教訓となる内容だ。


  1. 1.うんちを拾うこと!

  2. 2.公共の場所で犬を放さない!

  3. 3.犬を吠えさせない
    (このルールの裏には、吠えさせないようしつけをすること。そしてフラストレーションで吠えさせないように、犬のメンタル面を十分満足させてあげること、と読めるのだ)

  4. 4.追いかけさせないこと!
    (野生動物であれ、ほかの愛玩動物であれ、犬はほかの動物を追いかけてはいけない! 犬の行動にコントロールをもたせること)

  5. 5.正しく犬と外出を行うこと
    (犬が許可されないところには入らない。決して暑い日に犬を車に置き去りにしないこと)

  6. 6.決して監視なしで犬をつないだままにしないこと!

  7. 7.ほかの犬に対しても思いやりをもって
    (必ずしもすべての犬が、あなたの犬と挨拶したいとは限らない!ということ。他の犬の気持ちを尊重しよう、という意味)

  8. 8.他人を尊重すること
    (たとえば、あなたと犬が、公共の場所をすべて占有してもいいという権利はどこにもないはず!)

  9. 9.花火などの爆音に犬をさらさない(花火の爆音を怖がる犬へ)

  10. 10.犬には保険をかけて!

  11. 11.倫理とモラルをもって犬と接するべし
    (犬は人間の遊び道具でもなければ、アクセサリーでもありません!)

  12. 12.犬にマイクロチップを挿入すること。飼い主登録を行うこと
    (飼い主の登録はスウェーデンでは法的な義務でもある)

※本記事はブログメディア「dog actually」に2013年4月13日に初出したものを、一部修正して公開しています


【関連リンク】
・スウェーデン・ケネルクラブ 「犬を責めないで!」キャンペーン
・飼い主のための賢い12のルール


【この連載について】

世界中どこでも、人がいるところには犬がいます。両者の関係も、国が違えば千差万別、十人十色! スウェーデン在住のドッグライター・藤田りか子さんが、海の向こうからワールドワイドな犬情報を提供してくれるこの連載。あなたの常識を吹き飛ばす、犬との新しい付き合い方が見つかるかも?


【藤田りか子 プロフィール】

スウェーデン在住。レトリーバー2匹と暮らす。トレーニングは趣味、競技会はパッション。著書に「最新世界の犬種大図鑑(誠文堂新光社)」。犬雑誌「TERRA CANINA」編集者、Web「犬曰く」で活躍。

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