by 尾形聡子 2018.04.24
仕事から戻って帰宅したとき、ちょっと近所に買い物へ出て戻ったとき、数日間家を空けて帰ってきたとき。離れている時間の長さは違えど、日々の暮らしの中では愛犬と“別れ”、そして “再会”することを繰り返しています。
離れるのは距離的なものだけでなく、たとえ一緒に眠っていたとしても、夜に寝るときの“おやすみ”(別れ)と、朝起きたときの“おはよう” (再会)も同様ではないでしょうか。
そんなとき、皆さんは愛犬とどのように挨拶をかわしていますか? スウェーデン農業科学大学の研究者らは、人から犬への挨拶のしかたで再会時の犬の状態がどのように変化するかを調べ、その結果を『Physiology & Behavior』に発表しました。
実験には12頭のメスのビーグルが参加。犬たちは事前に慣れさせておいた実験室まで親しい人に連れていかれた後、その人は実験室を退出し、犬は実験室の一区画に残されます。実験室には犬にとって見知らぬ人がひとり座っていますが、その人は犬とのコンタクトを一切取りません。
その状態で25分間過ごした後、離ればなれになっていた親しい人が実験室に戻ってきて、3パターンの接触方法を取りました。
ひとつは、穏やかで親しみのある方法で犬の身体に触れたり話しかける方法、ふたつ目は犬に話しかけるのみ、もうひとつは犬を完全に無視して椅子に座り、雑誌を読んで過ごすという方法で、それぞれ4分間続けられました。
研究者らは、犬の行動と、「テストの前」「親しい人が部屋に戻ってきたのを見た直後」「3通りの接触をはかった後」に血液を採取し、血液中の2種類のホルモン、オキシトシン(幸せホルモン)とコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度を測定することで、再会したときの犬の精神状態が人の接し方によって変化するのかどうかを調べました。
その結果、3パターンのどの接触方法においても、実験エリアに親しい人が戻ってきたのを見た直後に犬のオキシトシンレベルは上昇していました。しかし、接触方法により、4分間過ごした後のオキシトシンの上昇度合いは異なりました。
身体に触れて話しかける方法で接触した場合には、犬の血中オキシトシンは非常に高いレベルにまで上昇して、最後までその状態を保っていましたが、言葉のみのコミュニケーションのパターンではそこまでの高濃度にはなりませんでした。
犬を無視した場合には、オキシトシンレベルはあっという間に減少しました。また、親しい人と離れていた25分間にストレスによって上昇したコルチゾールレベルは、いずれのパターンでも親しい人と接触した後には減少していましたが、やはり、身体接触と言葉の両方を使った場合がより大きくコルチゾールレベルが減少していました。
また行動も異なっていることが観察されました。接触と言葉の両方のパターンでは、身体接触をすればするほど犬はより人をなめようとする行動をとりました。言葉だけの場合、接触開始時には犬は尻尾を振り軽く吠える特徴が見られ、犬を無視したパターンでは、犬はなんとか誰かと接触をはかろうと実験室にいた見知らぬ人のほうへとアプローチする様子が見られたそうです。これらのことより、人の接し方によって、犬の人への接触行動が変化していることがわかりました。
犬は、親しい人が戻ってきたのを見た瞬間に喜びを感じ、その喜びは、身体と言葉の両方の接触をはかることで強化されているという結果は予想通りともいえますが、もうひとつ、言葉は使わずに身体の接触をはかるというパターンがあればどうなっていたのだろうかと想像してしまいます。
さらに、私自身が分離不安気味の犬たちと暮らしているだけに、分離不安がある場合にはどうなるのかも気になるところです。実験は行われていませんでしたが、犬が独りでいるときに上昇するコルチゾールをなるべく抑え、再会したときに上昇するオキシトシンレベルを大きく上げられるようにすることで、少しずつ分離不安の症状もやわらいでいく場合もあるのではないかとも思うのです。
それにしても犬は、私たちとのちょっとした“再会”をも心から喜んでくれる生き物なのだなと、しみじみ感じるものです。
※本記事はブログメディア「dog actually」に2013年11月7日に初出したものを、一部修正して公開しています
【参考サイト】
Psychology Today「What Is the Best Way to Greet Your Dog?」