by 尾形聡子 2018.03.27
愛犬のヒゲのお手入れ、みなさんどうしていますか?
トリミングの必要のない短毛種の場合には、とりわけ気にせずそのままにしているかと思うのですが、トリミングが必要な犬種の場合、顔の毛をカットする時にはヒゲも一緒にカットしていることが多いのではないでしょうか。
哺乳類に広く見られるヒゲは、五感のひとつの「触覚」を司る感覚器として、障害物や獲物との距離をはかったり、平衡感覚を保ったりするのに使われています。そのような理由から、私たちの身近に暮らす動物、猫については、そのヒゲの重要性について知られていて、むやみに切ってはいけないことは周知の事実となっています。
しかし、犬はどうでしょう? 人間の男性のように、もはや触覚としての機能を持たず、見た目の装飾的な問題だけで切る、切らないと判断してもいいものなのでしょうか。
実は侮れない、感覚器としてのヒゲの役割
触覚に関わる脳の特定の領域を調べることで、動物がヒゲを通じて得ている情報がどれほど重要であるかを知ることができます。
犬のヒゲは猫のヒゲに比べると、感覚器としてそれほど敏感ではないといえるものの、犬でも触覚を感知する脳領域のおよそ40%が、顔に集中しています。犬のヒゲは主に上あごに集中して生えていることは、みなさんもご存じのはず。
また、犬も一本一本のヒゲの位置を特定できるだけの脳機能を持っていることから、決して感覚器としての機能を侮ってはならない、ということが示唆されるそうなのです。
実際に、薄暗い環境の中では、犬はヒゲを使ってわずかな気流の変動など周囲からの情報を得ているようです。特に、視力が弱かったり、失ってしまった犬にとっては、ヒゲから得られる情報は重要に違いないと思います。視力に問題がない犬でも、よく観察してみると、ヒゲが生えている部分の筋肉を使ってヒゲを動かし、周囲の情報を得ているように見えることもあるでしょう。
試しに犬のヒゲにちょっと触ってみようとしたり、実際に触ってみてください。犬はそれに対してヒゲを動かしたり顔を背けたりといった反応を示すはずです。
そのヒゲ、いつか愛犬を助けてくれる日が来るかも?
犬は五感のうち、とりわけ嗅覚を発達させてきた生き物です。その代わりに触覚としてのヒゲの機能が退化してきたのだとしても、その役割はゼロとは言い切れない、犬のヒゲは決して無用の長物ではないと思うのです。
周囲からの情報、とりわけ自分の身体のすぐ近くの情報を得られないのは、犬にとってストレスになります。想像ですが、もしかしたら、トリミングの際に一緒にヒゲも短く切りそろえられると、それまでヒゲから受信していた身辺周りの情報を突然遮断されてしまったかのように感じないともいえません。
また、年齢を重ねていくにつれて五感は少しずつ弱まっていきます。そんな時こそヒゲが、低下したほかの機能をカバーすべく活躍してくれるかもしれませんね。
※本記事はブログメディア「dog actually」に2011年9月21日に初出したものを、一部修正して公開しています