by 尾形聡子 2019.08.09
世の中の大半の人は、その人生の中でペットと触れあう経験をしてきていると思います。最初の触れ合いの年齢によっては正確な記憶は残っていないでしょうが、幼少期にペットとかかわった人の場合、そのときの古い記憶が残っているのではないかと思います。テキサス工科大学の研究者らは、子ども時代の最初の記憶がその後の人生におけるペットに対するふるまいや感情を左右するかどうかを調べ、その結果を『Human Animal Interaction Bulletin』に発表しました。
研究者らは223人に対して、今現在ペットがどれほど好きなのか、そして、ペットと友人と自動車に関するもっとも古い記憶についてのアンケート調査を行い、分析を行いました。
その結果、ペットの記憶は自動車の記憶と比較すると、ポジティブな感情とネガティブな感情の両方に言及するような記憶が多く含まれていました。ペットへの記憶はもっとも感情的に激しく、詳細な感覚が含まれていました。また、友人に対するポジティブな感情よりペットに対するそれは少なかったものの、生きものではない自動車への記憶よりもペットとの記憶は友人との感情的記憶に類似していました。
ペットの記憶が友人よりもポジティブでなかったのは、ペットとの思い出がすべて喜ばしいものではなく、多くの子どもがペットの死をもって初めて命を失うことを経験したり、それと類似した悲劇的なできごとがあったからだと研究者らは言っています。
ペットが好きかどうかという点から分析した結果、友人とペットの記憶に対してとてもポジティブな記憶がある人々が、ペットのことをとても好きと回答していました。一方、ペットが好きではないと答えた人々のペットへの記憶はより自動車に対するものと類似していました。たとえばそれは、ペットや自動車を“それ(It)”とか“あれ(That)”といった代名詞を用いて回答するところに共通してあらわれていたそうです。
ペットとの相互作用により、絆や満足感が導き出される
さらに記憶に残るペットとの関係性がより相互的だった人々は、ペットに対するふるまいもペットの記憶もよりポジティブな傾向にありました。それについて研究者らは、ペットとの相互作用によってペットとの絆や満足感が導き出されることとなり、その結果、長期的にみると積極的なふるまいをするようになるのだろうと言っています。
ちなみに、ペットについては83%が自分自身のペットについての記憶でした。記憶についての平均的な回答の長さは3つのカテゴリでほぼ同じであり、女性は男性よりも友人とペットについてより長い回答を書いていたそうです。
このような結果ではありましたが、研究者らは、幼少期のペットの記憶と大人になってからのふるまいとに因果関係があるとは言い切れず、その関係性はもっと複雑であるとしています。たとえばペットに接した初期の記憶が周囲の大人の態度によって作られるかもしれない可能性なども考える必要があるからです。
みなさんの、もっとも古いペットとの記憶はどのようなものでしょう?中には最初はとても怖かった、いじわるをされたというような記憶の方もいるかもしれません。幼少期の記憶は、今現在のみなさんのペットに対して抱く感情やふるまいに大きく影響していると感じますか?
【参考リンク】
【参考文献】
(登録しないと論文は見られません。リンクは雑誌のトップページになります)