by 佐藤華奈子 2023.07.21
毎年9月24日は世界ゴリラの日(World Gorilla Day)。ゴリラとその生息地を守ることを目的にダイアン・フォッシー・国際ゴリラ財団によって定められました。ゴリラに注目し、野生のゴリラを守るために行動を起こす日とされています。ゴリラについて啓発することや、ゴリラを知ることもその行動のひとつです。ここではゴリラについて、知っておきたい特徴や生態、保護活動の現状を紹介します。
ゴリラってどんなどうぶつ?
ゴリラは最大の類人猿で、チンパンジー、ボノボに次いで分類上3番目に人間に近いどうぶつです。体が大きく筋力も強いため、最強の霊長類とも呼ばれます。
アフリカ中央部に生息し、熱帯雨林で群れの仲間と暮らしています。群れの規模は10~30頭ほど。1頭のオスと数頭のメス、その子どもたちで構成されます。オスは13~15歳ごろに背中の毛が白く変化して銀色に見えるようになり「シルバーバック」と呼ばれます。
ゴリラは攻撃的になることはあっても、決して好戦的で凶暴なわけではありません。繊細で臆病な面もあり、平和主義で極力争いを避けることがわかっています。木を倒したり鉄の棒を曲げたりできるほど強い力は、危険がせまったとき、群れを守るために使われます。
ゴリラといえば、胸をたたいて音を鳴らすドラミングが有名です。これは挑発ではなく、ほかのオスを威嚇して無駄な戦いを避けるために行うものです。
基本的に草食で、主食は植物の葉や茎、果実、種や根など。アリやシロアリを食べることもあります。大きな体を植物で支えるためにたくさん食べる必要があり、1日の活動時間のほとんどを食べることに費やします。特定の巣は持たず、毎日移動して移動先で簡単な寝床を作って休みます。
決まった繁殖期はなく、1年中繁殖が可能です。妊娠期間は約8ヶ月。通常1子で、双子が生まれることは稀です。赤ちゃんが自分でお母さんの背中にしがみつけるようになるまで、お母さんは4ヶ月ほど赤ちゃんを抱っこして、移動するときは片手で支えながら歩きます。赤ちゃんは生後半年くらいで安定して歩けるようになり、3~4歳で離乳。8~15歳ごろに生まれ育った群れから自立します。野生下の平均寿命は35~40歳です。
ゴリラにはどんな種類がある?
ゴリラは「ヒガシゴリラ」と「ニシゴリラ」の2種に分けられます。ヒガシゴリラには亜種として「マウンテンゴリラ」と「ヒガシローランドゴリラ」が。ニシゴリラには「ニシローランドゴリラ」と「クロスリバーゴリラ」がいます。
マウンテンゴリラは体重135~220㎏で、大きなオスは200㎏を超えることもある最大のゴリラ。一時は200~300頭ほどしか確認できず絶滅が危ぶまれましたが、その後、増加が確認され、現在の生息数は1000頭ほどといわれています。
ヒガシローランドゴリラについては、まだ詳しい生態がわかっていません。
ニシローランドゴリラは生息数が最も多く昔から研究されている亜種。頭胴長(頭・顔の先端からお尻までの長さのこと)は150~170㎝、体重は90~180㎏ほどになります。
クロスリバーゴリラは、外見はニシローランドゴリラに似ていますが、頭蓋骨や歯にわずかな違いがあります。その数は現在250~300頭ほどと推測され、最も絶滅に近い亜種です。
ヒガシローランドゴリラ、ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで最も危険度の高いCR(Critically Endangered:絶滅寸前)に分類されています。増加が確認されたマウンテンゴリラのみ、危険度が下がりEN(Endangered:絶滅危機)に変更されました。しかし、依然として絶滅が危ぶまれる状態であることは変わりありません。
ゴリラの数が減ってしまうおもな原因は、開発による生息地の減少や密猟、感染症などです。人間に近いゴリラは人と同じ感染症にかかりやすく、過去には麻疹や疥癬の流行やエボラウイルスによる大量死が報告されています。
どんな保護活動が行われている?
生息地での野生のゴリラの保護と並行して、世界中の動物園でゴリラの繁殖が試みられています。
日本の動物園で見られるのはニシローランドゴリラのみ(2023年2月時点)。世界の動物園を見ても、飼育されているのはほぼニシローランドゴリラです。日本の動物園に初めてゴリラがやってきたのは1954年のことです。それからさまざまな園に導入され、1990年のピーク時には国内で50頭ほどが飼育されていました。ところが1980年にワシントン条約によって野生のゴリラの国際取引が禁止された影響で、その後は減少に転じます。2000年代に入ると30頭を下回り、今では20頭ほどに減ってしまいました。
国内でも以前から繁殖が試みられていましたが、成功例は海外と比べて少ないものでした。その要因として、日本の動物園ではたいてい1頭か2頭のペアで飼育されてきたことがあげられます。ゴリラは本来群れで生活します。研究が進むにつれて、ゴリラは野生と同じように群れで生活することが繁殖を成功させる鍵だとわかってきました。さらに、母親と早期に離され人工哺育で育ったメスのゴリラは繁殖が成功しにくいこと、幼いころからペアで飼育すると兄弟姉妹のような感覚になり、適齢期に繁殖相手として意識できないこともわかったのです。
そこで、国内でゴリラの群れを作る試みがスタートしました。1996年、上野動物園に「ゴリラ・トラの住む森」が整備され、1~2頭で飼育されていた全国のゴリラが集められて群れが完成しました。2000年には同園ではじめて赤ちゃんが誕生。その後、ほかの動物園も含めて度々繁殖に成功し、「国内でゴリラが見られなくなる」と思われた状況に何とか歯止めがかかっているところです。ゴリラの赤ちゃん誕生は喜ばしいニュースですが、まだ安心できる状況にはありません。
まとめ
ゴリラはただ見ているだけでも人間と似ているところがあり、親しみを感じる類人猿です。そんなゴリラを守っていかなくてはならない理由は、単に人間に近いから、というだけではありません。ゴリラを思い出すときは、今絶滅の危機にあること、ゴリラ以外のたくさんの野生動物たちも同じように危機にあることに意識を向けてみてください。そして私たちにできることも考えて、行動に移してみましょう。自然環境に負担をかけない生活を心掛けること、野生のどうぶつたちを知ること。今すぐ無理なくできることがきっとあるはずです。
2さなにやめのめやなやさん
すごかった