悪い夢を食べてくれる?不思議などうぶつ・バクの驚きの真実!

by 佐藤華奈子 2025.06.18

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悪い夢を食べるといわれるバク。なぜそんな風にいわれるようになったのでしょうか。そもそも、バクはどんなどうぶつなのでしょうか?その特徴や知っておきたい驚きの真実を紹介します。

バクってどんなどうぶつ?

バクは何の仲間でしょうか。アリクイ?ブタ?……意外にゾウ?そのどれでもありません。バクは奇蹄目(きていもく)に分類され、ウマやサイの仲間です。
一番の特徴は長い鼻。ゾウほどではありませんが、この長い鼻を器用に使って地面の物を拾いあげたり、木の葉や果物を取ったりして口へ運びます。体は大きく、大きな種では300㎏を超えることも。南アメリカの野生動物では最大です。しっぽは短く、前足は4つ、後足は3つに分かれています。目と耳は小さく、体は流線形。ヤブの中を進むことに適した身体になっています。数千万年前からほとんど姿形が変わらず、現存する有蹄類の中で最も原始的などうぶつです。生きた化石といわれることもあります。

バクがすむところ

中央アメリカから南アメリカ、東南アジアの森林や熱帯雨林、湿地に分布しています。

バクが食べるもの

草食で木の葉や果実、水草や種子を食べます。森林から水辺を毎日長時間、広範囲に歩き回って採食します。

バクの寿命と一生

寿命は野生下で25~30年、飼育下で30年程度といわれています。
妊娠期間はとても長く、13~14ヶ月です。1度の出産で産まれるのは1頭で、双子はまれ。赤ちゃんの色は親と異なり、ウリ坊のようなまだら模様です。生後半年ほどで大人と同じ色になり、1年半で大人と同じ大きさに成長します。1~2歳までは母親と一緒に過ごし、2~4歳で繁殖ができるようになります。

バクの種類

現存するバクは4種。体の色や大きさ、生息地は種によって異なります。


マレーバク

マレーシア、タイ、インドネシアなどに生息。体長220~250cm、体重300~360㎏でバクの仲間では最大です。白と黒のツートンカラーも特徴です。


アメリカバク

南アメリカに広く分布。体長200㎝前後、体重200~250㎏。ブラジルバクと呼ばれていたことも。全身が灰褐色で、首に筋肉が盛り上がったコブのような部分があります。


ベアードバク

中央アメリカのメキシコからコロンビアに生息。体長200㎝前後、体重200~300㎏。アメリカに生息するバクの中で最大です。全体は茶褐色から黒で、あごと胸、耳先の毛が白くなっています。


ヤマバク

アンデス山脈の標高が高いところに生息。最小のバクです。体長180㎝、体重130~140㎏。体色は赤褐色から黒。寒さから身を守るため、長く柔らかい毛で覆われています。

バクの驚きの真実

夢ではないバクの真実を紹介します。

夢を食べるバクは別物

「バクが悪い夢を食べる」という古くからある伝承は、日本独自のものです。そして、夢を食べるバクは空想上の生き物。実在する野生動物のバクのことではありません。
空想のバクは中国から伝わりました。鼻はゾウ、目はサイ、しっぽはウシ、足はトラ、体形はクマに似ているといいます。古代中国では、このバクが悪霊を払うと信じられ、その毛皮の上で寝ると疫病を遠ざけるといわれました。またその形を絵に描くことや枕にすることで邪気を払う風習もあったようです。これが室町時代の日本で悪夢を払うと信じられるようになり、やがて夢を食べるという話が広がったということです。
どうぶつのバクの英名はtapir(テイパー、タピア)です。日本でバクと呼ばれるようになったのは、空想上のバクと同じものと思われたから、もしくは実在するバクをモデルに空想上のバクが生まれたからといわれています。

生まれてすぐ泳げるほど泳ぎが得意

実在のバクは水辺が大好き。水中にいることも少なくありません。暑いときは水に入って体を冷やします。泳ぐことも得意で、潜水もできてしまいます。水に潜って水底を歩きながら水草を食べることも。水中にいる間は、鼻先をシュノーケルのように水面に出して呼吸をしています。なんと生後数日から泳ぐことができるほどで、生まれながらの泳ぎの達人です。

視力はよくない

つぶらな瞳のバク。実は視力はあまりよくありません。立体的に見ることや距離感をつかむことも苦手です。目がよくない分、優れた嗅覚や聴覚を駆使して周囲を把握しています。

二つ名は「森の庭師」

バクはさまざまな種類の果実や草を食べ、その種を排泄します。バクはとても広い範囲を移動しながら食事をして排泄を繰り返しています。こうしてバクが種を撒くことで生息地の森林の植生(しょくせい:特定地域の植物の集合体のこと)ができていて、生息環境に大きな影響を与えていることがわかっています。バクによって作られた森にほかのどうぶつたちも生息することができ、地域の生態系にとって大切な存在です。こうした事実からバクは「森の庭師」と呼ばれています。

バクは絶滅危惧種

残念ながら4つの種すべてのバクが今、絶滅の危機にあります。森林伐採、農業、開発による生息地の消失、そして狩猟が主な原因です。現在、地球上に存在するバクの数はどの種も数千頭と推定されています。妊娠期間が長く一度に1頭しか生まれないことから、保護活動をしても数が増えにくい状況にあります。

まとめ

悪い夢を食べるバクは空想上の生き物で、実在するどうぶつのバクのことではありません。夢には関係なくても、生息地では豊かな森の環境づくりに欠かせない重要な存在です。このユニークで素敵な仲間のためにできることを、わたしたち一人ひとりが考えていきたいですね。

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