クマ出没注意!?被害にあわないために。

2020.08.27

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コロナ禍で遠方への旅行などが難しい状況が続いていますが、少しでも人込みを避けるために都会を離れて自然の中でリフレッシュする人も多いようです。これから秋にかけて、キャンプなど山の自然を楽しむのに良い季節が続きます。そんな中、全国でクマの目撃情報やクマに人や犬が襲われる事故が多発しています。せっかくの楽しいレジャーでクマの被害にあわないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。クマという動物について、少し勉強してみましょう。

そもそもクマってどんな動物?

クマといわれて思い浮かべるのは、かわいらしいマスコットキャラクター、あるいは獰猛な野生動物のイメージでしょうか。冬眠をする動物としても有名ですね。クマはネコ目(食肉目)に分類される哺乳類で、実は犬や猫と同じ仲間です。日本には北海道に生息するエゾヒグマと本州・四国に生息する二ホンツキノワグマの2種がいて、エゾヒグマは日本に生息する最大の陸上動物です。九州にもかつてはツキノワグマが生息していましたが、現在は絶滅したと考えられています。


いずれのクマも普段は山奥で生活しています。獰猛で動物を襲うイメージもあるクマですが、食性は雑食性で、植物をより好んで食べます。春はブナの新芽や山菜などの若い柔らかな植物を主食にしています。夏は柔らかく食べやすい植物が少なく、クマにとって厳しい季節で、植物の代わりにアリやハチなどの昆虫を食べることが増えます。秋は冬眠に備えて食いだめをする季節で、ミズナラやブナなどの木の実を主食とします。冬になって冬眠に入ると食餌は一切取りません。

クマによる被害ってどんなものがあるの?

2020年にニュースになっているものだけでも、6月に長野県南木曽町でジョギング中の男性が襲われて死亡、8月には長野県松本市(上高地)のキャンプ場で連日クマが出没して宿泊客が襲われてケガ、秋田県では農場の子牛が、北海道では犬が襲われるなど、被害が相次いでいます。また、被害には至らないものの、夏になって日本各地でクマの目撃情報も増えています。 このように、毎年夏から秋にかけてクマが人里に現れて農作物を荒らす、人や動物を襲うなどの被害が出ています。

なぜクマが人里に現れるのか?

クマが人里に現れる原因として考えられているのは山の食糧不足です。

例年、クマの出没は夏ごろピークを迎えます。これは夏にクマの主食となる植物が少なくなるためで、食料を求めて人里に下りてきたクマが農作物を荒らすなどの被害が見られます。 その後、秋になると山に木の実が付き始めるため、クマはまた山の中で食糧を得られるようになります。
しかし、木の実の付き方は毎年一定ではなく、木の実が多くつく豊作の年と、あまりつかない凶作の年があります。豊作の年であれば、秋になるとクマは山に戻っていくため夏をピークにクマの出没は減少する傾向にあります。しかし凶作の年は、秋になっても山の食料が不足するため、食糧を求めて人里に下りてくるクマが増えます。このように木の実が凶作の年は夏以降もクマの出没が減少しないため、大量出没となって問題になります。

なぜ人を襲う?

クマは積極的に肉食をする動物ではありません。つまり人を食べるために人を襲うということはめったにありません。また、警戒心が強く臆病なので、人を攻撃する目的でクマの方から近づいてくることもあまりありません。クマが人を攻撃する理由のほとんどは身を守るための防衛的行動であると考えられています。不意の遭遇に驚き、とっさに身を守るために攻撃する、食糧を確保するために縄張りから敵を排除する、親子連れで子熊を守るために立ち向かうなどの理由から人を襲うことがあるようです。

このため、人間の方からクマを刺激しないように気を付ければ、積極的に襲ってくることは少ないものと考えられています。

今年の大量出没の可能性は?

夏はもともと山にクマの食料が少なくなる時期なので、クマの出没が増えるのは仕方ないことではあります。しかし今年は、梅雨の長雨の影響で例年以上に夏の食料が不足しているため、出没が増える可能性があるといわれています。

近年では2010年や2016年、2019年にクマが大量に出没して問題になりましたが、いずれもブナなどの木の実が凶作だった年でした。 ブナの木の実の豊凶に関しては、農林水産省の東北森林管理局が毎年東北地方で春の開花状況から秋の着果予想を発表しています。これによると2020年は、大凶作であった2019年ほどではないものの、やや凶作の傾向だと予測されています。記録的な大量出没にはならないかもしれませんが、特に凶作の地域では秋以降もクマの出没が多くなる可能性があるので注意が必要です。

クマの被害にあわないために

クマの生息域でクマの被害にあわないためにはどうしたらよいのでしょうか。その対策をいくつかご紹介します。


・遭遇しないように対策する


クマの被害にあわないためには、クマと遭遇しないことが一番です。私たちが山などの自然の中に遊びに行くことは、クマの生活圏に入り込むことになるので、いつクマと遭遇してもおかしくありません。 クマは臆病な性格で、人間の存在を感じると、多くの場合クマの方から遭遇を避けてくれるといわれています。簡単な方法としては、クマ鈴をつけて歩く、ラジオなどをスピーカーで流しながら歩く、大人数で話しながら歩くなど、音で人間の存在を教える方法があります。


・クマをおびき寄せない


クマの出没が確認されている地域では、クマの食料となるものを屋外に出さないように注意しましょう。生ごみは、クマにとっては立派な食料になるので、地域で決められた収集時間に合わせてゴミを出すようにして、長時間屋外に置かないようにしましょう。また、北海道で犬が襲われているように、お腹を空かせたクマはほかの動物を襲って食べることもあります。クマの出没があった場合には、犬などのペットはできるだけ屋内に入れてクマに襲われないようにしましょう。 クマは一度エサになるものがあることを学習すると、同じ場所に何度も現れることがよくあります。一度クマの食害があった場所には極力近づかないようにしましょう。 山でキャンプをする場合にはテントなど人が寝泊まりする場所と、調理・食事をする場所を離すことで、クマが食べ物を見つけても人が襲われずに済むことがあります。


・山に犬は連れて行かない


犬を連れて山歩きを楽しむ方もいますが、犬は優れた嗅覚で野生動物の存在を察知し、警戒のために吠える等相手を刺激する行動をとることがあります。クマがこれに反応して、こちらを攻撃してくる可能性があります。クマに対する訓練を受けていない犬をクマの生息地に連れていくことは危険な場合があります。

万が一クマに遭遇したら。

「クマに出会ったら死んだふりをしろ。」というのは昔からよくいわれる対処法ですが、これはあまりよい方法ではないと今ではいわれています。
クマが好奇心から人の身体を転がそうとしたり、エサと思われて食べられてしまう可能性があるようです。また、走って逃げることもよくありません。クマは素早く動くものに本能的に反応して追いかけてきます。クマが走るスピードは40~60km/h程で自動車が町中を走るのと同じくらいのスピードです。人間の走るスピードでは逃げ切れません。

ではどのように対処するのが正しいのでしょうか。


・慌てない


まずはとにかく落ち着くことです。人が慌てて突発的な行動をしてしまうと、クマがそれに驚いて攻撃的な行動に出てくることがあります。


・離れた距離で遭遇した場合


クマがこちらに気が付いていなければ、気づかれないように静かにその場から離れましょう。気が付いていてもこちらを気にしていなければ、刺激しないように静かに離れるようにします。


・クマがこちらに近づいてくる場合


クマが人間の存在に気が付いていない場合があります。石や倒木の上に立ち上がって手を振りながら穏やかに声をかけて人間の存在を知らせることで、クマが立ち去ってくれる可能性があります。 それでもクマが近づいてくる場合は、興味本位や捕食目的で近づいてくる可能性があります。車内や屋内、木の上などに退避しましょう。


・近距離で遭遇した場合


クマを刺激しないように、落ち着いてクマと向き合いながら後退します。近くに木などの障害物があれば、突進してこないように障害物を間に挟むような位置に移動しましょう。クマ撃退スプレーがあれば万が一に備えて準備しながら…と言いたいところですが、とっさにこんな冷静な行動ができる人はごく一部でしょう。多くの場合はこちらが驚いて立ち尽くしている間に、クマが全速力で逃げていくようです。


・子グマを見つけた場合


絶対に近づいてはいけません。子グマの近くには必ず母グマがいます。子グマを守ろうとして母グマが攻撃してくる可能性が非常に高いので、速やかに子グマから離れるようにしましょう。


・突進してきた!


クマの突進の多くは、威嚇突進行動で、途中で止まって地面を叩くなど威嚇した後に後退することが多いようです。突進が止まったら、クマとの間に障害物を挟むようにゆっくりと後退しましょう。


・それでも向かってくる場合


最悪の状況ですが、できる限り身を守る行動をとりましょう。クマ撃退スプレーがあれば、クマの顔をめがけて噴射します。それでも攻撃が止まらないようであれば地面にうつぶせになってお腹と顔を守り、首の後ろに手をまわして保護します。

クマ撃退スプレーについて

唐辛子の成分などが入ったスプレーで、その刺激でクマをひるませて逃げる隙を作るための道具です。ただし、その刺激によって逆にクマが興奮することもあるため、むやみに使うものではありません。あくまでも緊急回避用の最終手段です。 登山用品店などで販売されているほか、クマが多い地域ではレンタルされていることもあります。クマと遭遇する可能性がある場合には、携帯しておくといざというときに身を守れるかもしれません。

実際にクマと遭遇した場合、ほとんどの人は足がすくんでしまい、冷静な行動ができなくなってしまいます。これらの対処法は、あくまでも万が一出会ってしまった場合のものです。クマの被害にあわないためには、とにかく遭遇しないことが一番です。クマの多い場所にむやみに立ち入らない、どうしても立ち入る場合にはクマを遠ざけるための対処を十分に行うようにしましょう。

まとめ

これから自然を楽しむ良い季節になりますが、自然に入るということはそこで生活するクマなどの野生動物たちの住処にお邪魔をするということ。事前の情報収集や対策を十分に行って、クマとの遭遇を避けて被害にあわないようにしましょう。

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