ウロコを持つほ乳類!センザンコウのマメ知識

by 佐藤華奈子 2025.07.14

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トゲトゲのウロコに包まれているのに、つぶらな瞳。長めの鼻を持ち、舌もしっぽも長い不思議などうぶつ。それがセンザンコウです。あまり名前を聞く機会がなく、馴染みのない野生動物ですが、一体どんなどうぶつなのでしょうか。

センザンコウってどんなどうぶつ?

センザンコウは鱗甲(りんこう)目センザンコウ科に分類されます。鱗甲目はセンザンコウ科のみで構成され、アジアとアフリカに4種ずつ、あわせて8種の仲間が生息しています。日本に野生はいませんが、近いところでは台湾に生息しています。鱗甲目の名前の通り、背側は硬いウロコで覆われているのが特徴のほ乳類です。
体の大きさは種によって異なり、大半は猫くらいの大きさですが、体長が1m近くになる大型のものもいます。体重は4~30㎏ほど。しっぽが長く、頭の先からお尻までと同じくらいの長さです。顔やお腹にウロコはなく、天敵に襲われるとボールのように体を丸めてウロコがない部分を守ります。さらに、しっぽの付け根から臭い液を出して天敵を遠ざけることも。昆虫食で地面を掘ってアリの巣を見つけ、長い舌でアリを捕まえて食べます。夜行性で群れは作らず、繁殖期以外は単独で行動します。
体を丸めるところはアルマジロに、アリを食べるところはアリクイによく似ていますが、どちらの仲間でもありません。分類ではまったく別の仲間ですが、似たような環境でそれぞれ進化した結果、同じような特徴を持ち合わせることとなりました。

センザンコウのマメ知識

謎が多いセンザンコウのマメ知識を見ていきましょう。

ウロコの成分は人間の髪や爪と同じ

センザンコウのウロコはケラチンと呼ばれるたんぱく質で作られています。人間の髪や爪、サイの角も同じケラチンからできています。ウロコはとても硬く、ライオンでも噛み砕くことができないといいます。噛むことができないので、ライオンは食べることをあきらめてしまうそうです。丈夫なウロコは重さもあり、センザンコウの全体重のおよそ2割を占めるそうです。ウロコの数や大きさも種によって異なりますが、多いものでは1,000枚を超えるウロコをまとっているといいます。

歩く姿は松ぼっくり?

歩き方もユニークです。体を起こして前足をあげ、後足だけで2足歩行をします。ウロコを背にトコトコ歩く姿は、まるで松かさが歩いているようで「歩く松ぼっくり」と呼ばれることも。愛らしい歩き方をしますが、速く走ることはできません。四足歩行をする際は、前足の爪を守るためにこぶしを地面につく形で歩きます。

ウロコは生後2日で硬くなる

赤ちゃんはウロコが柔らかい状態で生まれます。ウロコは誕生後、2日かけて硬くなります。生後3ヶ月を過ぎて離乳するまで、赤ちゃんはお母さんの背中に乗って移動します。1回の出産で生まれるのは基本的に1頭で、2頭生まれるのはまれです。

舌の長さが体長を超える!?

センザンコウは鋭い爪がある前足で穴を掘り、アリや土の中の虫を探します。アリの巣を見つけると、長く粘着性がある舌を伸ばして食べていきます。口の中に歯はなく、舌は折りたたまれて入っています。舌を伸ばすと、自身の体長を超えることもあるそうです。

耳と鼻を閉じることができる

耳の穴も鼻・口も、狭くして閉じることができるようになっています。食事の際は耳や鼻に虫が入らないように、しっかり閉じて食べているそうです。

樹上で生活する種も

ほとんどのセンザンコウが地上で生活しますが、樹上で生活するものもいます。アフリカに生息するオナガセンザンコウやキノボリセンザンコウは木に登ります。特にオナガセンザンコウはほとんど木の上で過ごします。長いしっぽを枝に巻きつけて木を登っていくことも。木登りだけでなく、泳ぐこともできます。ほかのセンザンコウと同じくアリやシロアリが主食で、地上の巣を壊すだけでなく、木の枝をはうアリを舐めとったり、樹上にできたアリの巣から食べたりすることもあります。

飼育は難しい

センザンコウは繊細でストレスに弱く、飼育が大変難しいといわれています。飼育下で繁殖することも困難です。こうした事情から動物園にいることも稀で、日本では幻のようなとても珍しい存在になっています。

世界で最も密猟されているほ乳類

世界で問題となっている野生動物の密猟。その中でもセンザンコウは取引される数が多く「世界で最も密猟されているほ乳類」といわれています。珍しいウロコは古くからさまざまな病気に効くと信じられ、科学的に効果が証明されていないにも関わらず、薬の材料として利用され続けてきました。またその肉自体に滋養の効果があるといわれて高級食材とされるほか、独特な革が装飾品に使用されることもあります。そのための密猟が原因で、センザンコウの数は減り続け、現在は8種すべてが絶滅危惧種に指定されています。持続可能な資源ではないことから2016年にワシントン条約で8種すべての国際的な商取引が禁止されました。それでもウロコの需要がなくなることはなく、今も密売の摘発は続いています。

まとめ

センザンコウは珍しいウロコが注目されがちですが、実は歩く姿や丸まる姿がかわいい、愛らしいどうぶつです。そんなセンザンコウは古くから信じられている迷信のために密猟され、絶滅の危機にあります。昔から信じられている価値観を変えることは簡単ではありません。それでも今の地球環境を見て、意識を変えるべきことは変えていくこと。密猟の問題に限らず、わたしたち一人ひとりができることと向き合っていきたいですね。

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