森の建築家!ビーバーを見るとき知っておきたいマメ知識を紹介

by 佐藤華奈子 2024.05.01

ADVERTISEMENT

ダムを作ることで知られるビーバー。近年は動物園で野菜を運ぶ姿も話題になりました。注目したいのはそれだけではありません。泳ぎが得意だったり、手先が器用だったり、つぶらな瞳で愛嬌のあるお顔だったり。実は独自の魅力がたっぷりなどうぶつです。そんなビーバーの知っておきたい豆知識を紹介します。

ビーバーってどんなどうぶつ?

ビーバーは水中で生活する哺乳類で、齧歯目ビーバー科の仲間。北アメリカに生息する「アメリカビーバー」と、ドイツやフランス、ロシア、スカンジナビア南部などに生息する「ヨーロッパビーバー」の2種がいます。体重はおよそ20~30kg。齧歯目の中ではカピバラに次いで2番目に大きな仲間です。


体は水中で過ごすことに適応し、後足には水かきがあり、平らな形状のしっぽはウロコで覆われています。目は顔の高い位置にあり、泳ぐときに水面に顔の半分を出すと、耳・目・鼻がすべて水上に出て、水の外の様子を知ることができます。目には瞬膜と呼ばれるまぶたのように動く膜があり、水中ではこれを閉じて目を保護しています。ビーバーの語源は茶色、褐色を意味する古英語。その名の通り茶褐色で防水機能が高い毛に包まれています。
別名は海狸(うみだぬき、かいり)ですが、実際に住んでいるのは淡水の池。川の流れを止めるダムを作る習性が知られています。人間以外で環境を変える構造物を作る唯一のどうぶつと言われ、森の建築家と呼ばれることも。


野生では両親とその子どもからなる10頭くらいの群れで巣を共有して暮らしています。夜行性でおもな食事は樹皮や木の葉、木の芽、小枝や水生植物など。天敵はオオカミやコヨーテ、クマ、キツネやフクロウなどです。

マメ知識①歯がオレンジ色!?

ビーバーの前歯を見たことはありますか?イラストなどでは再現されていないかもしれませんが、実はオレンジ色をしています。
ビーバーの歯は木をかじって倒すことができるほど丈夫なものです。歯がとても頑丈な理由はコーティングにあります。歯を保護するエナメル質の中に鉄分が豊富に含まれているのです。鉄で守られた歯で木をかじると、木のタンニンという成分によって酸化して表面がオレンジ色になります。
エナメル質に鉄分が含まれているのは前歯の表だけなので、裏側や奥歯は白いまま。また、生まれたばかりの赤ちゃんはすべて白い歯です。オレンジの前歯は木をたくさんかじった証なのです。

マメ知識②食事は前足で持って食べる

ビーバーは手先が器用で、前足で物を持つことが得意。食べるときはハムスターのように前足で食べるものをしっかり持って口へ運びます。巣の材料となる枝や泥、石なども、前足でつかみ、二足歩行で運ぶことがあります。

マメ知識③危険を感じるとしっぽで水面を叩く

平たい形のしっぽは、水中を泳ぐときに梶の役割をします。それだけでなく、天敵など危険が迫ると、水面に打ち付けて大きな音を出し、仲間に知らせることも。まるで銃声のような大きな音で、水中にいる仲間に逃げるように知らせるだけでなく、天敵を怖がらせて遠ざける効果もあるのだとか。

マメ知識④巣はダムではなくロッジを作って住む

ダム作りで有名なビーバーですが、ダムは巣ではありません。枝を組み合わせて「ロッジ」と呼ばれる山型の構造物を作り、その中で暮らしています。外から見ると湖面に枝を積み上げた山があるだけにしか見えませんが、その構造はとても機能的。ロッジの床面は水面より高い場所にあり、水中ではなく乾いた場所で食事をして眠ることができます。入り口は水中にしかなく、水にもぐることができない天敵が中に入れないようになっています。

マメ知識⑤ダムを作るのは巣を守るため

巣ではないとしたら、なぜダムを作るのでしょうか。それは巣の安全を守るため。川の流れをダムでせきとめることで、巣の入り口の水位が保たれ、入り口は水中にあり続けて安全を保つことができます。水位の変化が少ない場所では、流れを止める必要がないのでロッジだけで生活し、ダムを作ることはないのだそう。一方で、何世代にも渡って巨大なダムを作るケースもあります。その規模は数100mに及ぶこともあり、発見された中で最大のダムは850mと言われています。

マメ知識⑥ビーバーのダムは森の生態系も守っている

ビーバーにとって、ダムは必須のものではなく、巣を維持するために流れの調整が必要な場合に作るものです。それでも一度ビーバーがダムを作ると、流れによる侵食が減り、水生植物がよく育ちます。そして流れの少ないところに生息する水中の生き物が集まり、その場所に生息する生物の多様性を高めています。天然のダムは貯水の役割をし、洪水を減らす効果も。さらに森林火災の延焼を止める効果もあることがわかっています。ビーバーのダムが森の生態系に与える恩恵は計り知れません。ビーバーは生態系に大きな影響を与えるキーストーン種でもあります。

ビーバーは絶滅危惧種?

現在は絶滅危惧種には指定されていまませんが、過去には乱獲され絶滅の危機にさらされたこともありました。北アメリカでもヨーロッパでも保護活動が功を奏し、生息数は危機的な状況からは回復しています。イギリスでは400年ほど前に絶滅してしまい、他国から導入した群れを野生に放す再導入が試みられています。

まとめ

知っておきたいビーバーのマメ知識を紹介しました。木こりから資材の運搬、大工仕事まで、一頭で何でもこなすことができるビーバー。自分の周囲をよく見て環境を整えていく姿勢や、その行動が自然を豊かにすることにつながっている点は、わたしたちも見習っていきたいですね。

ADVERTISEMENT
コメント0