アナグマは日本にもいる?意外と身近な野生動物!

by 佐藤華奈子 2024.05.01

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海外の絵本や物語に度々登場するアナグマ。日本でも広範囲に生息しているので、見かけることもありますが、どんな姿をしているのか、どこにいるのか知らないという人も多いのでは。タヌキやキツネと同じように昔から身近にいたにも関わらず、存在があまり知られていないアナグマの謎に迫ります。

アナグマってどんなどうぶつ?

アナグマはクマではなく、イタチ科アナグマ亜科アナグマ属の仲間。名前の通り、穴を掘って巣を作ります。体は背中が丸まったくさび形。前足は穴を掘るために筋肉が発達して太く、5本の指の先に鋭い爪を持っています。穴を掘ることに特化した体のため、木に登ることも、素早く走ることも、長距離を移動することも苦手です。地中の巣穴は大規模で、寝室や子育てをする部屋などいくつも部屋が作られています。これといった天敵は存在せず、巣穴とその周辺で静かに暮らしています。


ヨーロッパからアジアまで広く分布し、欧米ではなじみのある動物です。以前はアナグマ属は1種で各地のアナグマは亜種とされていましたが、2000年代に見直され、ヨーロッパアナグマ、アジアアナグマ、二ホンアナグマの3種に分類されました。
日本にいるのは二ホンアナグマで、一般にアナグマと呼ばれます。このほか地方によってムジナ、マミ、ササグマなど色々な呼び方があります。二ホンアナグマの特徴はほかの2種と比較して小さめで、毛色が薄茶色であることです(ヨーロッパやロシアのアナグマは白黒)。体長はおよそ50~70㎝、体重は4~14㎏ほどになります。背側は薄茶色ですが黒褐色が混ざる子や濃い色の子もいます。足とお腹は濃い茶色~黒。顔は白く、目のまわりに黒の縦線が入ります。顔はタヌキに似ていますが、タヌキより鼻が長く、耳は小さめです。


基本的に夜行性で日暮れごろに巣穴から出て単独で活動します。4~6月ごろは子育てのため日中も活動する姿が見られます。冬は巣穴で冬眠します。冬眠前には体に脂肪を蓄えるため、体重は夏期の1.5倍以上に! 1年を通してみると、8割以上の時間を巣穴で過ごすといいます。

アナグマはどこにいる?

日本にいる二ホンアナグマは本州、四国、九州に広く生息しています。おもな生息地は山林でタヌキやキツネより分布は狭いといわれていますが、農地や住宅街でも見かけることがあります。東京にもいて、登山ができる山の中はもちろん、緑が多い場所の近くでは都市部でも目撃されています。

アナグマは何を食べる?

雑食で歩き回りながらミミズや幼虫、昆虫、果実などを見つけて食べます。好んで食べるのはミミズで、ミミズが多い地域ではたくさん食べていることがわかっています。農地に現れて農作物を食べることもあり、害獣と見なされてしまうこともあります。

タヌキと似ているって本当?

タヌキはイヌ科のどうぶつで、アナグマと近縁ではありません。にもかかわらず、よく似たところがあります。まず体の大きさが同じくらいで、顔も似ています。よく見れば体型は異なりますが、アナグマはずんぐりしたタヌキのようにも見えます。
住むところも同じで、どちらも里山で暮らしてきました。アナグマは巣穴を掘って生活するため、山の中にいることが多いものの、アナグマの巣穴をタヌキなどほかの動物が利用することもあります。この様子から「同じ穴のムジナ」という言葉が生まれました。食性も似ていて、ほかの身近な中型哺乳類のキツネやテン、イタチが肉食であるのに対して、タヌキとアナグマは雑食です。
さらに、行動にも似たところがあります。タヌキには「ためフン」と呼ばれる同じ場所でトイレをして排泄物を積み重ねる習性がありますが、アナグマも同じようにためフンをします。タヌキのためフンが数世代にわたって受け継がれることもある一方で、アナグマの場合は10~20cm程度の穴を掘って排泄する程度で小規模のものです。

アナグマはなぜ昔話に出てこない?

タヌキやキツネはよく人を化かすどうぶつとして昔話にも登場しますが、アナグマは日本の昔話にはみられません。上で説明したようにタヌキと似ていることから、日本ではアナグマは長らくタヌキと混同され、同じどうぶつと考えられてきたようです。アナグマの別名の「ムジナ」は地方によってはタヌキを指す場合と両方を指す場合もあり、明確に区別されていなかったことがうかがえます。アナグマは巣穴を掘るために山の中で暮らすことが多かったこと、ほとんど巣にこもっている習性から、人に見つかることが少なく、もし姿を見られてもタヌキだと思われていたのでしょう。
タヌキが登場する昔話も、一部は「ムジナ」という言葉がタヌキとして伝わっただけで本当はアナグマである可能性もあります。

まとめ

タヌキに似ていること、タヌキの方がよく人里に現れることから、日本ではマイナーな存在であり続けたアナグマ。でも実は、愛嬌のあるお顔、見ていて楽しい行動など、観察するだけでも魅力のある存在です。今まで注目されてこなかった分、これからは様々な発見があるかもしれません。これからはアナグマも身近な野生動物として注目していきたいですね。

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