犬での新型コロナ「陽性」、でも「感染は不明」ってどういうこと?

by 編集部 2020.08.06

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【2021年12月27日 追記】

今般の新型コロナウイルス感染症に対する各所の取組み状況等をふまえ、 「#StayAnicom」プロジェクトは2021年12月29日受付分をもって終了とさせていただきます。
何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます。


アニコムグループでは、2020年4月10日より新型コロナウイルスに感染した方が安心して治療に専念できるように、感染された方と暮らしているペットを一時お預かりするプロジェクト『#StayAnicom』を実施しています。これまで犬31頭、猫12頭、ウサギ1羽(8/5時点)の合計42頭のペットをお預かりしてきました。
新型コロナウイルスの感染予防に配慮したお預かりを行うために、これまでお預かりしたすべてのペットに対して、深咽頭(のどの奥)から採取した粘膜で複数回のPCR検査を行い、「陰性」であることを確認していました。その中で今回、異なる2つの世帯からお預かりした犬2頭で陽性反応が確認され、外部の検査施設でも陽性反応が確認されました。

▼ニュースリリースはこちら
犬における新型コロナウイルスの陽性を確認

まだ感染したとは言えない!?

今回の犬におけるPCR検査陽性の確認は、感染が確認されたというものではありません。

連日、各種メディアでは、人の新型コロナウイルスのPCR検査陽性者の数を、感染者数として報道されています。このため、今回の犬でのPCR検査陽性の発表を聞いて新型コロナウイルスが犬にも“感染した”と思われた方も多いのではないでしょうか。
しかし現時点では、犬に新型コロナウイルスの感染があったとは断定できません。

「PCR陽性」だけど「感染したかはわからない」ってどういうこと?

「ウイルスが感染する」とは、どういったことなのでしょうか。

医学的には「感染」とは、病原体(細菌やウイルスなど)が生き物の体内に入り込んで定着し、増殖することとされています。身体に病原体が付着しただけでは感染とは呼ばないのです。
例えば、コロナウイルス感染者の飛沫などで汚染されたドアノブを触ることで手のひらにコロナウイルスが付着しても、感染が成立したことにはなりません。この手についたウイルスが口や目などの粘膜から体内に侵入して、増殖することで、初めて感染したことになります。

PCR(Polymerase Chain Reactionの略)検査とは、ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する検査です。この検査でわかることはウイルスが存在しているかどうかであって、厳密には感染の有無は調べられません。人では深咽頭などの上部気道でコロナウイルスが“増殖”することがわかっているため、この部分の検体でPCR陽性が確認されれば感染しているとみなされています。
しかし犬の場合は、感染が成立するのか、感染した場合に身体のどの場所で増殖するのかということがまだわかっていません。このため現時点では、今回の犬でのPCR検査陽性という結果は、新型コロナウイルスの存在が確認されただけで、感染とは言えないのです。

犬への感染はどうやって確認する?

では、今回PCR検査陽性が確認された犬で感染が成立するかどうかは、どのように確認するのでしょうか。
これには「犬の体の中で新型コロナウイルスが増殖した」という何らかの証拠をつかむ必要があります。この証拠をつかむ一つの方法として、人でも行われている『抗体検査』があります。

病原体が体内で増殖すると、これを排除するために身体の免疫システムが働きます。免疫システムが病原体を排除するために身体の中で作りだす道具の一つが抗体です。免疫システムはさまざまな病原体に対応してそれぞれ異なる抗体を作り出します。新型コロナウイルスの感染に対しても対新型コロナウイルス用の抗体が作られるため、この抗体が検査で検出されれば、新型コロナウイルスが感染していた証拠となります。感染が成立していなければ、この抗体は検出されません。

ウイルスの感染後、抗体検査の結果が陽性になるまでは一定の期間を要します。今回PCR検査で陽性が確認された犬たちは、今後期間をおいて抗体検査を実施し、感染が成立したかの判断を行う予定です。

とはいえ、本当に大丈夫?

海外では犬でも感染した例がいくつか報告されていますが、1回目のPCR検査陽性後にPCRの再検査と抗体検査で感染が否定された事例もあります。これまでの研究で、さまざまな動物で新型コロナウイルスに感染するかを調べられていますが、犬は新型コロナウイルスに対する感受性が低く、感染が成立しにくいことが報告されています。そして、犬から人へ感染したという事例は今のところまだありません。また、犬同士で感染がおこるのかということも、まだわかってはいません。

今回確認された事例の経過は引き続き慎重に見ていく必要がありますが、これまでの情報を基に考えれば、犬への感染に関して、過度に恐れる必要はないであろうと思われます。

他のペットや人への感染は?

#StayAnicomプロジェクトではペットたちをお預かりした後、複数回のPCR検査で陰性が確認されるまでは1頭ずつ隔離してお世話を行い、ペット同士での新型コロナウイルスの感染が起こらないように配慮しています。今回陽性が確認された2頭の犬以外は、すべてのペットでPCR検査の陰性を確認しており、現時点ではペット同士での感染は起こっていないものと考えています。

また、お預かりにあたっている#StayAnicomクルーは全員防護服を着用するなど、二次感染防御を徹底しています。今回陽性が確認された犬と接触したすべてのクルーを対象にPCR検査を行いましたが、現時点では全員陰性で、体調不良も確認されていません。

生活で気を付けたいこと

犬でのPCR検査陽性の発表を聞いて、どうぶつたちと暮らす皆さんはさまざまな不安を抱いたかもしれません。withコロナの社会で、どうぶつたちと暮らすにあたってどのようなことに気を付けたらよいでしょうか?

・まずは人が感染しないように
現在のところ、ペットへの感染は飼い主から起こると考えられています。そのため、私たち自身の身体を守るためにも、3密を避ける、マスクなどの装着で粘膜を守る、積極的に手洗いや洗顔を行うなど、新しい生活様式を実践して新型コロナウイルスを家庭内に持ち込まないようにしましょう。

・過度の接触をしないように
いくら気を付けていても感染してしまうことがあります。万が一、人が感染していた場合に、顔をなめさせる等のスキンシップを行うと、ペットへの感染を引き起こしてしまう可能性があります。また、現在のところは、ペットから人への感染は確認されていませんが、可能性が完全に否定されたわけでもありません。ペット以外の動物では、一部人への感染が疑われている例もあります。人とペット、お互いの無用のリスクをなくすためには、過度の接触はしないように心がけましょう。

・どうぶつにマスクはしない!!
感染予防のために犬にマスクを装着する動画が話題になっています。しかし、マスクで犬の鼻や口をふさいでしまうと、とても呼吸がしづらくなってしまいます。また、犬は汗をかくことができず、舌など口の粘膜から熱を発散して体温調整を行っています。マスクで口をふさぐと体温調節ができなくなり、最悪の場合、熱中症になり命にかかわる危険性があります。このように、犬にマスクを装着するのは非常に危険なことですので、絶対にしないようにしましょう。

このようなことに気を付ければ、例えば周りと適切な距離をとってお散歩に出かける等、これまで通りの日常的な生活を送ることは問題ないと考えられます。

まとめ

日本国内の犬に新型コロナウイルスのPCR検査陽性が確認されたことは事実です。しかし、今回の検査ではまだ犬への感染が起こったとは判断できません。今後の経過は随時アニコムのホームページ等で情報を発信していきます。

新型コロナウイルスの犬への感染は成立しにくいものと考えられています。また、犬から人への感染は現時点では確認されておらず、非常に起こりにくいものと考えられていますので、過度に怖がる必要はありません。愛するペットたちを守るため、正しい情報を収集して、新しい生活様式を実践しながら、新型コロナウイルスと適切に向き合うようにしましょう。



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