by 編集部 2020.08.06
中国の武漢・湖北省で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、世界中で拡大し続けています。日本でも日々感染者の報告がテレビのニュースで流れ、治療法も確立されていない中、いつ収束するのかは目途が立っていない状況です。
そんな中、2020年2月28日には香港で「犬から新型コロナウイルスの陽性反応が出た」との報道もありました。ペットを飼っている方は、ご自身のみならずわが子は大丈夫かと不安な日々を過ごされているのではないでしょうか。
そこで今回は、現時点において判明している情報から、本感染症とペットに関する最新情報をお伝えします。
犬で新型コロナ「陽性」の報道について(8月6日追記)
2020年8月3日、アニコムでは「犬で新型コロナ陽性が確認された」と発表しました。
ただし、感染が成立していたかどうかは不明です。
下記の記事で詳しく解説しています。
犬での新型コロナ「陽性」、でも「感染は不明」ってどういうこと?
新型コロナウイルスは犬猫にも感染する?(5月15日追記)
米科学雑誌「サイエンス」に、新型コロナウイルスの動物への感染に関する研究結果が報告されました。研究の結果、猫とフェレットでは感染がおこりやすいことがわかりました。また、猫では飛沫感染により猫同士での感染が起こることもわかりました。逆に、犬は感染を起こしにくいであろうと報告されています。 ただし、人への感染源になるといった報告はいまのところありません。また、犬猫が発症する(病状を呈する)かについても、正確にわかっていませんが、東京大学の研究等により、すこしずつ明らかになりはじめています。(後述)
ただ、感染の可能性がある以上、人と同様、人ごみやドッグランの利用は避け、散歩も家の周りをまわるくらいの程度にとどめるのが安全だと考えられます。
日々新しい情報が更新されていきますので、状況が変化した場合には、私たちからもすみやかにお伝えいたします。
「動物への感染が確認された」と報道されているけど?(6月16日追記)
海外で、犬や猫をはじめとする動物への新型コロナウイルスの感染が確認されたと複数報じられています。これまで確認されている感染報告は、下記の通りです。
2月28日:ペットの犬(香港)
※犬に症状があったとの報道はありません。
※その後、上記の犬が死亡したとの報道がありました。ただし17歳で高齢ということもあり、コロナウイルスの感染によるものかは不明です。
3月19日:ペットの犬(香港)
※犬に症状があったとの報道はありません。
3月27日:ペットの猫(ベルギー)
※猫には呼吸器症状や消化器症状が見られたものの、その後快方に向かっているとのことです。
4月2日:ペットの猫(香港)
※猫に症状があったとの報道はありません。
4月4日:ペットの猫(中国・武漢市)
※猫に症状があったかどうか、現時点では不明です。
4月5日:動物園のマレートラ(アメリカ・ニューヨーク州ブロンクス動物園)
※このトラには症状が見られました。また他にも計6頭のトラやライオンに咳や食欲不振の症状が出ているものの、いずれも快方に向かっているとのことです。
4月22日:ペットの猫 2頭(アメリカ・ニューヨーク州)
※別々の家庭で飼われていた2頭の猫への感染が確認されました。
※2頭とも軽い呼吸器症状が出ていますが、今のところ快方に向かうものとみられています。
※1頭の猫の飼い主は新型コロナウイルスの陽性反応が確認されています。この家にはもう1頭猫が飼われていますが、こちらには呼吸器の症状は見られないようです。
※もう1頭の陽性の猫の家庭では、新型コロナウイルスの症状が出ている人はいなかったようです。
4月22日:トラ4頭、ライオン3頭(アメリカ・ニューヨーク州ブロンクス動物園)
※マレートラの新型コロナウイルス陽性反応が確認された動物園で、ほかのトラ4頭(うち1頭は無症状)、ライオン3頭に新たに陽性反応が確認されました。
※咳などの症状がみられていた7頭は、今は普段通りの様子まで回復しており、咳もあまりしなくなっています。
4月下旬~:ミンク(オランダ)
複数の繁殖施設で感染が確認され、一部の施設では人への感染も発生しました。
5月13日:実験感染の猫(東京大学)
東京大学と米ウィスコンシン大学の研究チームは、実験環境において、「猫への感染」および「猫から猫への感染」が認められたと発表しました。実験的に、3匹の猫を新型コロナウイルスに感染させたところ、3匹とも3日後にはウイルスの排泄が見られた(=感染が成立した)と報告されています。また、この3匹を、それぞれ健常猫と同居させたところ、いずれの健常猫も新たに感染が確認されたと報じられています。感染した猫に病的な症状は見られていません。
5月15日:ペットの犬1頭、野良猫3頭(オランダ)
※ペットの犬は重度の呼吸器症状があり死亡しました。コロナウイルス感染が原因かはわかっていません。
※ミンクの繁殖施設周辺にいた野良猫で抗体検査の陽性反応がみられましたが、症状があったかは分かっていません。
6月2日:ペットの犬1頭(アメリカ、ニューヨーク市)
※軽度の呼吸器症状がみられました。
※飼い主にも陽性反応がみられ、飼い主から感染したとみられています。
※同居のもう1頭の犬には感染していません。
4月28日に感染の報告があったアメリカ、ノースカロライナ州の犬はのちの検査で感染が否定されました。
各国の政府は、いずれも以下のように呼びかけています。
・現時点でペットから人への感染は確認されていないため、冷静な対応を心掛け、むやみにペットを捨てるといったことがないようにすること
・人からペットへの感染は特殊なケースではあるものの、感染者はペットとも適切な距離をとり、接触を避けること
なお、日本において、ペットにおける新型コロナウイルスの検査を行う体制は整っているとは言えません。動物病院でも、この検査を行うことはできません。また、仮にペットに新型コロナウイルス感染の可能性があっても、確認することや治療することも困難な状況と考えられます。
こうした状況を受け、アニコムでは「#StayAnicomプロジェクト」を起動し、コロナに感染した飼い主さまのペットを預かる取組みや、感染者宅への訪問ペットケア(※訪問サービスは終了いたしました)を行っています。特に、感染がほぼ確実視されている猫では、猫飼育中の家庭に預けることは推奨できません。もし飼い主さまが感染なされ、入院等でお世話ができない状況の場合には、本サービスもご活用ください。
●施設でのお預かりに関する情報
●訪問ペットケアに関する情報(※終了しました)
オランダで新型コロナウイルスがミンクから人に感染
オランダ政府は5月20日、新型コロナウイルスがミンクから人に感染した可能性が高いと発表しました。動物から人への初の感染例とみられます。
4月下旬にオランダの2つのミンク繁殖施設でミンクへの新型コロナウイルスの感染が確認されていました。同施設で働く従業員にも新型コロナウイルス感染が認められており、当初は人からミンクへの感染が疑われていました。しかし詳細な調査の結果、人の感染例のうち少なくとも2例はミンクから人への感染が強く疑われることが判明しました。また、同施設にいる野良猫にも陽性反応が認められており、感染拡大への影響を調査しています。
オランダ国内にある140か所の繁殖施設のうち、10か所でミンクへの新型コロナウイルスの感染が確認されています。
現在のところ動物から人への感染が疑われるのはこのミンクの例だけですが、まだ十分に分かっていないことも多く、動物との不必要な接触は控えることが推奨されています。
日々新しい情報が更新されていますので、信頼できる各機関の公表情報を参考にしてください。私たちからもできるかぎりお知らせいたします。
自分が新型コロナウイルスにかかった場合、ペットの世話はどうすべき?
万が一、ご自身が新型コロナウイルス感染症にかかってしまった場合、人に対する接触を制限するのと同様に、ペットは家の中で隔離することが望まれます。当然、ペットや他の動物との接触も極力控えてください。どうしてもペットの世話をする、あるいは近くにいる必要がある場合には、ペットを触る前後に手洗いをして、マスクをするしかありません。もちろん、撫でる、くっつく、キスをする、顔などを舐めさせる、同じ食べ物をシェアするといった接触も避けてください。
感染の可能性がある動物を隔離入院させられる動物病院も少ないと考えられます。飼い主が軽症の場合には、ご自身での世話を行ってください。
もし、飼い主が入院しないといけない場合には、ペットの世話は家族の別の人に任せる、あるいは信頼できる預け先にお願いするといった対応がよいでしょう。その際には、ご自身が感染したことを相手先にも申告し、十分注意して世話をしてもらう必要があります。保健所にも申告する必要があるかもしれません。
なお、感染した方が生活していた場所にペットを残し、知人やペットシッターに世話を依頼するといった方法は、感染症対策の観点から望ましくありません。
自分や家族が感染した際、ペットに対してすべきこと(4月7日追記)
新型コロナウイルスに感染した人の住環境には、大量のウイルスが存在しています。そのことを前提に、以下のことに注意してください。
【感染した人に、ペットを近付けない】
ペット自身の身体にウイルスが付着しないよう、感染した人が療養している部屋にペットが出入りしないようにしてください。汚染したマスクやリネン類にもペットが接触しないよう注意が必要です。
【ペットを知人宅やペットホテルに預けるときは】
万が一自分が入院しなくてならない・あるいはペットを知人に預けることになった場合でも、ペットとの別れがつらいからと言って、抱きしめたりしないように注意してください。
その上で、以下それぞれのケースについて解説します。
■飼い主側が預け先に連れていく場合
感染した飼い主と濃厚接触していない方に協力をお願いして、ペットを届けてもらうようにしましょう。
・ペットはキャリーバッグに入れて連れて行きましょう。
・できれば、預かる側で用意したキャリーバッグに入れ替えましょう。
・無理な場合は、預かったキャリーバッグを次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒してください。(消毒についてはこちら)
・預かる側は、マスク・グローブ・エプロン・メガネといった防護服を装着しましょう。
■預かる側が飼い主宅にペットを受け取りに行く場合
・飼い主宅はウイルスで汚染していることに注意しましょう。
・入室する前に、マスク・グローブ・ガウン・メガネといった防護衣類を装着しましょう。これらを廃棄するための容器も用意してください。
・できれば2名で預かりに行きましょう。1名は汚染環境に入らない人として、入室する人の防護服着脱を手伝うなど、汚染拡大防止につとめてください。
・預かる側で用意したキャリーバッグにペットを入れます。キャリーバッグが用意できない場合(飼い主のものを使用する場合)は、キャリーバッグの外側を消毒してください。(消毒についてはこちら)
■シャンプーをする
ペットの毛を介してウイルスが伝播しないよう、ペットはシャンプーをしてください。シャンプー(界面活性剤)でウイルスを消毒することができます。
①防護のため、マスク・グローブ・エプロン・メガネを装着しましょう。
②可能であれば屋外で、屋内で実施する場合は後で消毒しやすい環境(余計なものを片付ける、ビニールシートで被う等)で行ってください。
③お湯の勢いは弱くしましょう。毛に当たったお湯が跳ね返ってご自身や周りに飛び散ることを防ぐためです。
④丁寧にお湯で流したら、シャンプーをしてください。シャンプー剤を使う前に体を振らせないよう注意してください。
⑤シャンプー後、よくすすいだらタオルで拭き、ドライヤーで乾かします。
⑥すべての工程が終了したら、防護に使ったものを外しましょう。ペットを拭いたタオルや防護に使用したものは、一般的な家庭用洗剤で洗濯すれば再利用可能です。
■預け先でのペットの扱いで注意すべきこと
・ペットはウイルスを保有しているかもしれません。14日間は隔離が望ましいでしょう。
・キスをしない、お皿を共有しないなど、適切な衛生を保ちましょう。
・糞便を取り扱う際は、マスクやグローブを着用してください。
■首輪やキャリーバッグの消毒方法
首輪やリード、キャリーバッグなどのグッズは0.05%(※)に薄めた家庭用塩素系漂白剤で拭いて消毒しまょう。その後、塩素を拭きとるためもう一度水拭きしてください。
※例:原液濃度6%の製品の場合、水3Lに消毒液25ml
原液濃度5%の製品の場合、水2Lに消毒液20ml
※参考:ペットボトルのキャップ1杯が約5ml
洗濯や消毒について、詳しくはこちら(厚生労働省HPへ)
感染者とペットに濃厚接触歴がある。自分のペットは新型コロナウイルス感染症にかかっていない?
もし新型コロナウイルスの感染者と、ご自身のペットの間で濃厚接触したことがある場合には、すぐさまペットを動物病院に連れていくのではなく、まずは電話で保健所に相談してください。
しかし、前述したように、現状は以下の通りと考えられます。
・症状がなければ、動物病院でできる治療はほとんどない
・動物病院で検査することはほとんど不可能
・感染可能性のある動物を隔離入院させられる病院はかなり少ない
基本的には、自宅での隔離が第一選択となりますが、この点も含めて保健所および動物病院に相談して判断してください。
この騒動前から、犬猫にも「コロナウイルス感染症」があるって本当? 人にもうつる?
実は、犬や猫にも、それぞれ「コロナウイルス感染症」が存在します。名前がややこしいのですが、今回の「新型コロナウイルス」とは異なるもので、ほとんど別のウイルスと考えても構いません。犬猫に感染する従来のコロナウイルスが、人を含めた他の動物種に感染したという報告はありません。
なお、犬の場合は「犬コロナウイルス感染症(CCV)」といって、軽い下痢の症状を起こします。猫の場合は、発熱や神経症状、腹膜炎などを引き起こします。これらはいずれも、肺炎を主な症状とする今回の新型コロナウイルス感染症とは、原因となるウイルスも感染する動物種も全く異なる病気ですので、混同しないように気を付けましょう。
【関連リンク】
新型コロナウイルス対策のために、犬にコロナワクチン接種をすべき?
犬コロナウイルス感染症(CCV)にはワクチンがあります。6種混合ワクチンなどに含まれていますね。
ですが、これはあくまで従来の犬コロナウイルスに対しての免疫をつけることを目的としているので、今回の「新型コロナウイルス感染症」を予防するためのものではありません。
そのため現在流通している犬コロナウイルスに対するワクチンが、新型コロナウイルスに対しても同時に防御効果を示すといった証拠はありません。
【関連リンク】
まずはご自身の感染防御の徹底を
ペットを守るためには、何よりもまずはご自身の感染防御を徹底していただくことが重要です。
詳しくは下記サイトもご参照ください。
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
首相官邸:新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~
新型コロナウイルス感染症については日々新しい情報が更新されていますので、特にペットに関する状況が変化した場合にはすみやかにお伝えいたします。
そして何よりも、この世界的危機が一日でも早く収束することを願っています。
最後に「ペットは悪くない」
今回の事例では、ペットはたまたま飼い主からウイルスをもらってしまったに過ぎず、ペットが感染源となって伝播させたというものではありません。すべてのペットが感染するかについてもさらなる調査・研究が必要です。ペットは大切な家族であり、過剰に怖がることはしないようにしてください。飼育放棄などはもってのほかです。これまでと同じく、愛情を持って接してあげることが、いまのところの最善策です。
※本記事は以下の情報をもとに作成しています。
・The New Coronavirus and Companion Animal-Advice for WSAVA Members./ WSAVA(世界小動物獣医師会)/ 2020年2月9日
・飼い主さんに向けて(新型コロナウイルスQ&A) / 東京都獣医師会
・JBVPからのお知らせ 香港の犬からの新型コロナウイルス検出に関する追加情報 / 一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム / 2020年3月5日更新
・新型コロナウイルスに感染した人が飼っているペットを預かるために知っておきたいこと(Ver.1)/ 東京都獣医師会/ 2020年4月6日
・Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and other domesticated animals to SARS-coronavirus 2/Science/2020年4月8日
・新型コロナ、ネコ2匹に感染 米で初めて/ 日本経済新聞/ 2020年4月22日
・Two cats are first U.S. pets to test positive for coronavirus/ The New York Times
・Confirmation of COVID-19 in two pet cats in New York/ USDA
・米ニューヨーク州でトラ5頭、ライオン3頭、ネコ2匹が新型コロナウイルスに感染/ businessinsider/ 2020年4月24日
・Update: Bronx Zoo Tigers and Lions Recovering from COVID-19/ WCSNewsroom/ 2020年4月22日
・犬が新型コロナ陽性、米国初の事例か 飼い主の家族感染/ CNN/ 2020年4月29日
・North Carolina Pet Believed to Be First Dog in the U.S. to Test Positive for Virus That Causes COVID-19 in Humans/ TIME/ 2020年4月28日
・新型コロナウイルスはネコの間で感染伝播する/ 東京大学医科学研究所/ 2020年5月14日
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