by アニコム魚人 2018.08.17
金魚すくいでもらった金魚が、朝起きたら洗面器の中でぷかーっと浮いていた…筆者にも身に覚えがありますが、そういう経験をされた方、多いのではないでしょうか。
そんな気の毒な金魚の仲間入りをさせず、イキイキぴちぴちと飼い続けるためにはどうすればよいのか。
魚のことなら右に出るものはいないと誰もが認めるアニコム社員(自称「アニコム魚人」)にその秘訣を聞いてみたところ、お迎えのポイントと金魚への熱い想いを瞬殺で原稿にしたためてくれました。
昔犠牲にしてしまった金魚たちへの懺悔の気持ちを込め、この夏に迎えられた金魚たちが1匹でも救われることを願って、ここにご紹介します…。
そもそも金魚は短命な生き物…なのか?
今年も熱い祭りの季節がやってきた。夏祭りや盆踊り、夏休み真っ盛りの子供達が心を躍らせる瞬間。
その中でも昔から親しまれてきたのが「金魚すくい」。浴衣の袖を水で濡らしながら、真っ赤な金魚を夢中で追いかけた記憶がある人も多いことだろう。
その一方で、子供たちが意気揚々と自宅に連れ帰った金魚が、その後末永く幸せに暮らしたという話はほとんど耳にしない。
祭りの興奮が冷めるか冷めないかの間に、金魚は儚くその一生を終えているのである。
ここから「金魚すくいの金魚は長生きしない」と言われるのであろう。
金魚はこんなに大変だったのか…
しかし、果たして金魚とは本当に短命な生き物なのであろうか。最初に、彼らの生い立ちに思いを馳せてみよう。
金魚すくいに使われる金魚たちは養魚場で生まれ、池の中で大勢の仲間と一緒に育つ。祭りの数日前になると池から網で一網打尽にすくわれ、ビニール袋の中に詰められる。
少ない水の中に数百匹単位で詰められ、注入された酸素の圧力で袋ははちきれんばかりである。
まるで朝の通勤ラッシュのような状態で出荷され、祭り会場へと運ばれた彼らは、真夏の日差しで温まったわずかな水の中で、子供たちの手に追いかけ回される。
すくわれた後も小さな袋の中で祭りが終わるまで揺さぶられ、家に帰り着く頃には疲労困憊である。
家に来るまでの間に、彼らはこれほどの辛苦を耐え忍んでいるのである。
金魚の立場で考えればわかる、正しいお迎えの方法
そんな彼らを、いきなり洗面器の真新しい水に放り込んではいないだろうか。歓迎の気持ちとばかりに、餌を与えてはいないだろうか。
我々人間に置き換えてみてほしい。激しく揺れる飛行機で、日本とまったく気候の違う国にいきなり連れてこられたら、体調を崩さないほうがおかしい。いきなり食事をするなど、とても考えられないはずだ。
では、我々は金魚に何がしてやれるのか。我々が金魚を前にしてできることは、「金魚をいたわる」ことである。
気をつけるべきことを、簡潔に挙げてみよう。
①カルキのない安全な水
水道水に含まれるカルキを中和する。市販の「カルキ抜き」を使うか、2日間ほど汲みおいた水を使う。水の量(水槽の容量)はできるだけ多いほうがいい。
②水をあわせる
水温、水質を急に変えると金魚は大きなストレスを受ける。持ち帰った袋のまましばらく水槽に浮かべ、水温をあわせる。
その後、袋の口を開けて水槽の水を徐々に混ぜていく。口を開けた袋を水面に浮かべておくと、自分で水槽内に泳ぎ出す。
③2日間は餌を与えない
体調が回復する前の給餌は消化不良のもと。数週間食事をしなくても餓死することはない。与えるときは少量から。
何も難しいことはない。大切なことは、今以上の負荷を金魚にかけないことだ。
疲れている金魚を休ませられる環境を整えるだけで、金魚がこれからも家族の一員として暮らしていける確率は高まる。
金魚は命を知るきっかけをくれる存在
金魚すくいで見られる金魚は「和金」が多く、その中でも一番サイズが小さい「小赤」が一番馴染みのある種類だろう。和金の寿命は10年前後ともいわれるが、なかには20~30年生きた例もある。
小さな子供が社会人になり、家を出るまでずっと一緒にいられる動物はそんなに多くない。例え小さな金魚であっても、適切な環境を整えることでかけがえのない家族の一員になれるのである。
屋台の前で、「どうせすぐに死ぬからダメ」と言って、金魚すくいをせがむ子供をなだめる大人を目にする。
本当に「死ぬからダメ」なのだろうか。
弱い命だからこそ、子供ながらに一生懸命に世話をし、それでも力が及ばないという経験や罪悪感が、いずれその子の糧になるのではないか。
小さな金魚の真っ赤な色が、多くの人々の心に生命を想いやる暖かい炎を灯してくれたらと願う。