現存する魚の中で最大!ジンベエザメってどんな魚?大きさや特徴は?

by 佐藤華奈子 2023.07.10

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水族館の目玉ともいえるジンベエザメ。最大のサメですが、その姿は離れた目や大きな口、斑点模様がかわいい癒し系でもあります。それでいて生態についてはまだ解明されていないことが多く、とてもミステリアスな存在です。ここでは水族館で見るときに知っていると楽しくなるジンベエザメ情報を紹介します。

世界最大の魚

ジンベエザメの平均的な大きさは5.5〜12mほど。大きいものでは20m級の個体も確認されている世界最大の魚です。2番目に大きい魚はウバザメで、最大全長は10~12mほど。3位は諸説ありますが、最大全長6m前後になるイタチザメ、ホホジロザメ、メガマウスザメなどがあげられます。大型のサメの中でも、ジンベエザメは群を抜いて大きいことがわかります。体重は20トンほどと推測されていて、ゾウ3頭分の重さに相当します。

名前の由来は甚兵衛羽織

ジンベエザメは背中が青みがかった灰色~茶色で、お腹は白です。背中には独特の白い斑点と縞模様があります。この模様が甚兵衛羽織(じんべえばおり)の柄に似ていることから、ジンベエザメと呼ばれるようになりました。甚兵衛羽織は、下級武士が着ていた木綿わた入りの袖なしの羽織。これに簡易な袖がつき、ラフな和服の甚平へ変化していったといわれています。ジンベイザメと呼ばれることもありますが、標準和名はジンベエザメです。


ちなみに英名はwhale shark。クジラザメという意味で、大きさも生態もクジラに似ていることが表されています。フランス語、ドイツ語などでもクジラザメを意味する言葉で呼ばれています。鹿児島などの方言でも同様にクジラブカと呼ばれます。

暖かい海を旅するように暮らす

ジンベエザメが見られるのは熱帯から温帯にかけての暖かい海。外洋から沿岸まで、世界中の海を回遊しプランクトンや小魚を食べています。回遊ルートはかなりの長距離で、8000㎞くらいを数年かけて移動し、同じ季節に同じ場所へ戻ってくるといわれています。


日本近海には春から秋にやってきて、定置網に迷い込むことも。おもに沖縄や西日本の太平洋側・日本海側の両方で見られます。2011年以降、北海道でも目撃例があります。


体の大きさも移動距離も壮大なスケールですが、泳ぐスピードはゆっくり。性格もおだやかで、ダイバーが近づいてもまず襲われることはありません。横で一緒に泳ぐことができるので、世界中のダイバーのほとんどが、海の中で一度は会いたい魚にあげる人気のサメです。

体の骨は軟骨のみ

サメは魚の中では珍しい「軟骨魚類」の仲間で、骨格は軟骨のみで構成され、硬い骨がありません。サメの姿は数億年前からほとんど変わらないといわれるように、サメの化石は大半が歯のみで、骨格の化石が見つかることは稀です。ジンベエザメも例外ではなく、軟骨しかありません。あの大きな体が軟骨だけで支えられているのは驚きですね。

幅1.5m!大きなお口のヒミツ

ジンベエザメのお口の幅はおよそ1.5m。この巨大な口をあけて、大量の水とともに食事となるプランクトンや小魚を飲み込みます。水は大きなエラの間から排出され、プランクトンなどはエラの奥にあるクシ状の部分で濾し取られてお腹の中へ入ります。食べるときに頭を上にあげ、立ち泳ぎのような姿勢になることもあります。


口の中を見ても鋭いキバはありませんが、実は小さな歯がびっしりと並んでいます。1本1本の歯はマッチの先や鉛筆の芯くらいの大きさで、体は最大でも歯の大きさはサメの中で最小規模。この小さな歯が、なんと上下あわせておよそ8000~1万本も並んでいるのです。でもジンベエザメは食べるために歯を使うことはありません。では、こんなにたくさんの歯は何のためにあるのでしょうか?その理由はまだ明らかになっていません。

目が歯で覆われている!?

サメのウロコはほかの魚と異なり、歯と同じエナメル質・象牙質・髄(ずい)の3層構造でできています。その構造から「皮歯(ひし)」と呼ばれることもあり、皮膚の表面がとても小さな歯で覆われている状態になります。これによりサメ肌と呼ばれるザラザラした触感になっています。ここまでは普通のサメにも見られるものですが、ジンベエザメには同様の組織が目にもあることがわかりました。なんと白目の部分も小さな歯で覆われていて、その数はおよそ3000本になることが発見されたのです。目を守るためにこのようなつくりになったと考えられています。

卵胎生でお腹から赤ちゃんがでてくる

ジンベエザメの繁殖に関する生態は詳しいことがわかっていません。サメには卵を産む仲間と、卵胎生(らんたいせい)といって体の中で卵を孵してから産む仲間がいます。ジンベエザメがどちらなのか、長らくそれすら解明されていませんでした。1995年に台湾でメスのジンベエザメのお腹から約300匹の稚魚が見つかり、卵胎生であることが判明しました。このとき見つかった生まれる直前と思われる赤ちゃんの大きさはおよそ60㎝。とても大きな赤ちゃんですが、後に5~10mを超える大きさになることを考えると、これでも小さく生まれているのでしょう。

まとめ

世界中で人気があるのに、謎に包まれたジンベエザメ。海のスケールの大きさと、自然界にはまだまだわたしたちが知らないことがあるというのを、改めて考えさせられる存在でもあります。そんなジンベエザメはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。多くの人を魅了するジンベエザメを失うことがないように、わたしたちひとりひとりが海を守るためにできることを考えていきましょう。

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