2017.08.31
いまやワンちゃんも、朝起きたらまず歯みがき、おやつの後はマウスウォッシュ、寝る前はホワイトニング・・・とまでにはなっていませんが、実はワンちゃんに対してもそのくらいの心意気で歯の健康を考えてあげる必要があるのです!
歯石がつくと心臓病になる??
「風が吹けば、桶屋が儲かる」という例えがありますよね。ひとつのできごとが、一見全く関係がないようにみえることにまで影響を及ぼすということわざです。これと同じくらい関係がなさそうにみえる「歯石がつけば、心臓病になる」という驚くべき事実が、近年徐々に明らかになっています!一体どういうことでしょうか?
歯石とは歯の表面につく石のような塊のことで、歯周病のワンちゃんでよく見られます。歯周病とは歯垢中の細菌が歯の周辺組織に炎症を起こす感染症のこと。そう、歯周病は感染症なのです!
今回のお話は、歯周病になると悪い菌がまわりまわって心臓にまで悪さを及ぼしてしまうかも…というもの。にわかには信じがたいことですが、実際にこのような文献が多数報告されています。
歯周病菌が全身へ…
歯周病になるとお口周りがボロボロになってしまうだけでなく、口の中の細菌が歯肉から血液中に侵入し、全身に悪影響を与える可能性があると言われています。過去の研究では、歯周病のワンちゃんの歯周ポケットと血液から、同一の菌種が認められました(※1)。また、心臓病のワンちゃんに関する別の研究では、口の中と心臓で同一の菌種のDNAが確認されたのです(※2)。これは、歯周病菌が口の中から血液中に侵入し、心臓にまで達している可能性があることを示しています。血液中に侵入するということは、心臓の他にも腎臓や肝臓など全身のいろんなところに入り込んでしまうかもしれないということです。つまり、全身を細菌のやりたい放題にされてしまう可能性があるということなのです・・・。
ワンちゃんは人の6倍も歯周病になりやすい!?
ワンちゃんとヒトにおける口の中の環境に違いがあるため、ワンちゃんは特に歯周病に要注意です。ワンちゃんの口の中はアルカリ性で、唾液にはミネラルが豊富に含まれています。そのため石灰化して歯垢が歯石になりやすく(※3)、なんとわずか3~5日で歯石が形成されてしまいます。ヒトでは歯石形成に2~3週間かかると言われているので(※4)、比較するととても速いスピードだということがわかりますね。実は、ヒトよりもデンタルケアに気を付けるべきは、ワンちゃんのほうなのかもしれません。
じゃあどうすればいいの?
やはりワンちゃんも歯みがきをすることが大切です。一般的に歯石が付着してしまうと動物病院での処置が必要となり、自宅でのケアは難しくなってしまいます。なので歯垢の段階で歯みがきをすることが重要です。つまり、3日に1回は歯みがきをしてあげなければなりません。
いや、そんなの無理!と思った皆さん…そりゃそうですよね。ワンちゃんの歯みがきって、飼い主にとってもはや命がけ。すさまじい声でなき叫び、ものすごい剣幕で怒っちゃうワンちゃんもたくさんいます。
え、じゃあ歯周病になることは避けられないの・・・?涙
歯みがきかぁ…ん?おやつ?
そんな歯みがきが苦手なワンちゃんたちにいいお知らせです!なんと、何かをガジガジするだけで歯がピカピカになるかも?魔法の棒が存在します。
詳細は「【検証!】歯みがきせずに、犬の歯石は取れるのか?」を是非ご覧ください。あんなに歯みがきを嫌がって牙をむいていたワンちゃんがウソのよう。まるで天使が舞い降りたかのようです。
是非ともチェックいただいて、これを機におうちのワンちゃんのデンタルケアを見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献
※1 湯本哲夫ら.高齢犬の重度歯周病に対する治療ならびに歯周病関連細菌の分離.日本獣医師会雑誌.(2004)
※2 山代久美子ら.僧帽弁閉鎖不全症の心臓における口腔内細菌の検出.第96回日本獣医麻酔外科学会抄録.(2012)
※3 Lavy E. et al. Refu Vet.(2012)
※4 藤田桂一.小動物における口腔内診査と基本的歯科処置の実際(2).獣医畜産新報 54.文永堂出版 (2001)