2020.07.08
5月22日、愛知県豊橋市で人の狂犬病が発生したと発表されました。発症したのはフィリピンから来日した外国籍の男性で、2019年9月にフィリピンで犬に咬まれたことがあり、その際に狂犬病に感染したとみられています。男性は同市内の病院に入院し治療を続けていましたが6月13日に死亡しました。日本国内での発症は、2006年11月にフィリピンで感染した日本人2人の事例が最後で、その後の発生はありませんでした。
狂犬病ってどんな病気?
狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症で人獣共通感染症のひとつです。名前から、犬の病気と思われがちですが、犬や人も含め、ほとんどの哺乳類に感染する可能性があります。人への感染は、ウイルスを保有する動物に咬まれたり引っかかれたりすることで起こります。感染すると数ヶ月の潜伏期間ののち、発熱や頭痛、倦怠感といった風邪のような初期症状から始まり、次第に興奮や不安感、異常行動や、痙攣、麻痺といった神経症状がみられるようになります。発症するとほぼ100%死に至る恐ろしい感染症です。
日本では1959年を最後に国内での感染が発生しておらず、狂犬病の清浄国とされています。農林水産省の指定では、世界の清浄国・地域は、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムの6つの地域となっています。それ以外の地域では、依然として狂犬病が発生し続けており、狂犬病によって年間で6万人近くが亡くなっています。
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狂犬病について|みんなのどうぶつ病気大百科
狂犬病にかからないようにするには?
現在日本では狂犬病は撲滅されていますので、国内で感染することはほぼありません。
清浄地域以外の海外、特に東南アジアなどの流行地域へ行く場合は、ペットを含めた動物にむやみに近寄らないようにすることが大切です。動物に咬まれてしまった場合は、まず傷口を石鹸と水でしっかり洗ってください。動物が狂犬病に感染していた場合、傷口から入ってきたウイルスをできるだけ洗い流すためです。その上ですぐに医療機関を受診しましょう。感染した場合でも、迅速に適切な治療を行えば多くの場合で発症を防ぐことができます。
流行地域で動物との接触が避けられないなど、感染のリスクが高い場合は事前に狂犬病ワクチンを接種して免疫力を高めておくこともできます。
なお、今回の日本での発症例は海外で感染したものですので、日本国内は依然として
狂犬病のない安全な状況と考えられています。必要以上に恐れる必要はありませんので、冷静な対応を心がけましょう。
愛犬は大丈夫? 狂犬病には感染しない?
日本でワンちゃんを飼う場合、年に1回、狂犬病ワクチンを接種することが狂犬病予防法で定められています。このおかげもあり、日本は狂犬病清浄国を維持しています。
ですから、普段の生活でご自身や愛犬が狂犬病に感染するリスクというのは、現状はないと考えてよいでしょう。しかし、国際的な人と動物の移動が盛んになっている昨今では、いつ、今回のように海外から狂犬病が入ってきてもおかしくはありません。
今ある安心を守り続けるためには、飼い主一人ひとりが気をつけなくてはならないことがあるのです。
日本での狂犬病の発生を防ぐためにできること
近年、ワンちゃんの実質的な狂犬病ワクチン接種率は50%程度と言われており、狂犬病流行を防ぐためにWHO(世界保健機構)が推奨している70%を大きく下回っています。ワンちゃんのためにも、私たちのためにも定期的なワクチン接種を忘れないようにしましょう。4月から6月が狂犬病ワクチンの接種推進期間ですが、今年は多くの自治体が新型コロナウイルスの影響で集合注射を中止しています。動物病院で接種することができますので、今年はお近くの動物病院に行きましょう。
愛犬と私たちの健康を守りましょう
今回の事例は狂犬病という病気の恐ろしさを思い起こさせてくれるものでした。今ある安全は当たり前のものではなく、私たち一人ひとり心がけの上に成り立っているものだということを忘れてはなりません。狂犬病ワクチンを毎年のように接種するのは少々手間かもしれませんが、ワンちゃんと私たちの身を守るために必ず行うようにしたいですね。