by 編集部 2020.10.07
現在の日本の総人口は、1億2,590万人。そのうち65歳以上の高齢者はどれくらいいるのかご存知だろうか?
何年も前から言われているとおり、日本はまさに“高齢化”が進んでいて、2020年の65歳以上の人口は、3608万人だ。これは人口の28.6%にあたり、まさに10人に3人は高齢者。
ちなみに、2019年12月の高齢者人口が3592万4千人だったため、1年で高齢者の数はなんと31万人増加したことになる。高齢化が進む理由はさまざまだが、医療技術が進歩し、平均寿命が延びていること、また少子化などの影響もあると言われている。
(※参照:総務省統計局 人口推計 2020年5月時点)
年々増加傾向の高齢者が、今後の人生をより充実したものにするために“ペット”を迎えるという選択肢は、はたして正しいのだろうか?
今日は、高齢者はペットと暮らすべきなのかについて考えていく。
ペットと暮らす上での、影響について考える
高齢者がペットと一緒に暮らすと、どんなことが起こるのだろうか。今回は、メリットだけでなくデメリットも含めて一緒に考えていこう。
メリット
① ペットがいることで孤独から解放される
高齢になると、他者との繋がりが希薄になったり、外出の機会が少しずつ減ってしまったりなどして、孤独になってしまうことがある。そんな孤独を救うのがペットである。朝から夜までとなりにいてくれる存在は、他ではなかなか補うことができないだろう。
② 幸せホルモン“オキシトシン”が分泌される
動物とふれあうことで分泌される、オキシトシン(別名:幸せホルモン)が、人間の体にとっていい影響を与えることが知られている。
ペットと暮らすことで、幸せになれる。孤独を感じやすく、退屈な日常を過ごす高齢者にとってこれは最大のメリットであるといえる。
③ 生きる希望になる
若い頃は、仕事に子育てに趣味…と忙しい日々を送っていた人も、65歳あたりを越えると、これらの事柄に一度終止符が打たれる。
仕事は定年を迎え、子どもたちは家庭を持ち、手がかからなくなる。体のあちこちが衰えてくることで、思うように趣味を満喫できなくなることもあるだろう。
そうしてさまざまなことが生活から失われていくときに、ペットという存在は大きな希望を与える。「この子のために、健康でいよう。」「この子のために、お散歩をしよう。」間違いなく、すべての行動の原動力になるだろう。
驚きの研究結果も!
① ペットと暮らすと、運動量が増える?
アメリカの研究では、ペットを飼っている65歳以上の高齢者が、他に比べ1日あたり20分以上長く歩いていることが分かった。この研究は、犬との散歩を通して高齢者の健康に役立ったことを意味している。
※https://www.gcu.ac.uk/newsroom/news/article/index.php?id=236173
② ペットと暮らすと長生きする?
スウェーデンで40~80歳の国民を対象とした12年にわたる疫学研究によると、犬と暮らす人は死亡率が低く長生きするということがわかった。犬だけに限らず、ペットと暮らすということは、長寿につながるということが分かった。
※https://www.nature.com/articles/s41598-017-16118-6
③ ペットと暮らすと睡眠にいい影響を及ぼす?
チェコ共和国の研究では、平均年齢68歳の44名の高齢者を対象に睡眠に関する調査を実施。その結果、犬を飼っている高齢者の睡眠の質が良い傾向にあるということが分かった。
犬を飼うことで、お散歩にいったり、遊び相手になることで活発的になり、睡眠に良い影響を及ぼすのかもしれない。
※https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31514379/
【番外編】
上記で紹介した研究結果以外にも、犬と暮らすことで心臓病の1年後の生存率が伸びるなど、特定の病気に対して効果を発揮したという報告もある。
またこれは、高齢者の話とは少し外れるが、犬と暮らすことで子どもの運動不足解消による肥満予防に役立ったり、犬と勉強すると読書能力が向上するなどの結果もでている。
ペットがいれば、高齢者自身だけでなく、孫にもいい影響を与えてくれるかもしれない。
デメリット
① お世話やお散歩など、身体的な負担がある
ペットのお世話は、高齢者の体にとって負担になることは確かである。特に犬であれば、お散歩や遊び相手になるにも、体力が必要となる。丈夫な足腰なしでは、犬の散歩は難しいであろう。
犬は難しくても、猫であれば散歩が必要ないので、体への負担は少なく済むかもしれない。また、うさぎや鳥なども視野にいれ、自分のライフスタイルに合ったペットをお迎えするのもおすすめである。
ただ、どんな動物種を迎えるにしても、「ただ撫でて癒される」だけというわけにはいかない。必要な飼育用品を購入しに行くなど、自分自身が動ける体をキープし続けるのも、ペットと暮らす上での重要なことのひとつだ。
② 万が一体調を崩して入院などした場合、ペットが孤独死する可能性がある
高齢者が一人暮らしをしてペットを飼育し、ペットが家の中で置き去りになってしまうケースは少なくない。
名古屋市の『名古屋市人とペットの共生推進プラン(案)』「犬猫の引き取り理由」の調査によると、平成28~30年の犬猫の引き取り理由の多くは、計画外の繁殖以外に、“飼い主の病気・死亡など”によるということがわかる。
最近では、高齢者の介護施設などでもペット共生型の新たなサービスも出てきている。『どうしてもペットと暮らしたい、けど自分になにが起こるが分からないからどうしよう…。』という方は、そういったサービスがあるということも意識しておきたい。
犬猫の引取り理由
犬(頭) | 猫(頭) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 |
平成28年 | 平成29年 |
平成30年 | |
飼主が病気・死亡など | 15 | 27 | 21 | 34 | 22 | 60 |
引越し | 11 | 7 | 6 | 21 | 8 | 33 |
飼育管理することができない | 1 | 1 | 4 | 8 | 0 | 0 |
迷惑をかける | 2 | 0 | 1 | 7 | 9 | 0 |
家族が病気・アレルギー | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13 |
攻撃的な性格 | 3 | 2 | 2 | 2 | 0 | 0 |
飼育費用負担できない | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
計画外の繁殖 | 0 | 0 | 39 | 156 | 142 | 303 |
その他 | 1 | 0 | 1 | 18 | 18 | 25 |
合計 | 35 | 41 | 74 | 246 | 199 | 434 |
また、万が一、自分が病気やケガでペットのお世話ができなくなってしまったときに、身内か近所の人にお世話を頼めるようにしておく必要がある。
※『名古屋市人とペットの共生推進プラン(案)』「犬猫の引き取り理由」
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000125/125241/01hitotopetplanikennboshuu.pdf
③ 移動手段が少ないため、動物病院へ気軽に行くことができない
高齢者が一人でペットと暮らしている場合、気軽に動物病院へ行くハードルが高くなる。ペットをケージに入れて運ぶという作業は、動物種にもよるがそれなりに体力を使う。
ましてや、高齢になって足腰が弱くなってきた場合には、動物病院へ行くことすら億劫になってしまうかもしれない。だが、わが子にいつもと違う変化があったときには、すぐに動物病院へ連れていってほしい。
普段から、わが子になにかあったときに車を出すことをお願いできる人を探しておくか、どうしても難しい場合には、タクシーでの移動などに慣れておく必要がある。
高齢者が安心してペットと暮らすには?
高齢者が、ペットと一緒に暮らすには、次のようなことに気をつけてあげることが大切だ。
・お迎えする前に、本当にペットを飼えるかしっかりと考える。
・万が一のために、頼れる人を探しておく。
最低限この2つがしっかりと考えてられていれば、高齢者でもペットを飼育することができる。
「高齢者はペットと暮らすべきか。」のアンサーは…。
筆者なりの答えは、「暮らすべき。ただし、メリットもデメリットも理解した上で」という表現になる。
高齢者がペットと暮らす上では、大変なことがあるというのも事実。しかも、メリットよりもデメリットのほうに目が行きがちだ。
だが、ペットと暮らすことで高齢者は今以上に幸せを感じ、生きる希望が湧き、孤独が解消される。高齢者はペットから、この上ない幸せをもらうわけだから、高齢者がペットに与える愛情も計り知れないほど大きなものになる。
一緒に暮らすことで、お互いが幸せになれることは間違いないだろう。