2017.10.30
私たちの腸の中には多くの細菌が住んでいて、私たちの健康と関わっていること、うんちを使って簡単測定できることは以前のコラムでお話ししました。
うんちから簡単に測定できるとはいえ、数十億の細菌がいるのに、うんちの部位ごとに偏りはないのでしょうか? その疑問について、実際の測定結果を見ながら考えてみたいと思います。
腸内フローラの測定結果の見方
それぞれの細菌には名前がついていて、似ている細菌は仲間ごとに分類されています。もっとも大きい分類は「門」と呼ばれていて、数も少なく比較しやすいため今回は「門」で比べたいと思います。
グラフはあるアニコム社員の腸内フローラ測定の結果です。「門」で分類すると主要なものはアクチノバクテリア門、バクテロイデス門、ファーミキューテス門、プロテオバクテリア門、そして割合は少ないですがフゾバクテリア門、スピロヘータ門、それ以外の分類できないものの7つに分かれます。
部位によって腸内フローラの構成は少し違う
うんちが排泄された方向で前、中、後に3等分し(前が一番最初に排泄される部位)、それぞれの部位から検体を取り、腸内フローラの分析を行ってみました。グラフはそれぞれの部位における7日間分の平均になります。
腸内フローラの構成は、前から後に行くにつれて大きく変化するわけではありませんでしたが、青色のアクチノバクテリア門と緑のファーミキューテス門が増え、赤のバクテロイデス門と空色のプロテオバクテリア門が減っているのがわかります。
部位で違うのは何故なのか?
部位ごとに腸内フローラの構成が違うのはなぜなのでしょう?
アクチノバクテリア門とプロテオバクテリア門に着目すると次のように考えられます。アクチノバクテリア門の大部分は体に良い働きをすると知られているビフィズス菌でした(アクチノバクテリア門にはビフィズス菌等が含まれ、比較的体に良い働きをしています)。
一方、プロテオバクテリア門の細菌には病原性を示す細菌が多く含まれています。これらの結果から予想すると、体に良い菌を腸内に残し、悪い菌を排泄したいという生存のための戦略であるかもしれません。
しかし、前と後で増減しているバクテロイデス門やファーミキューテス門の細菌は一概に良い悪いを分類できないことや、細菌ごとの酸素に対する強さの違いなども影響すると考えられるため、部位ごとの違いについての明確な答えを出すのは難しそうです。
さいごに
「うんちの部位ごとに腸内フローラの偏りはないのか」という疑問の答えは、「大きくは変わらないが、前後で特徴がある」というものでした。
腸内フローラを検査する時には、採取する場所に神経質になる必要はありませんが、前から後ろまでまんべんなく採取した方がより正確な結果が得られるかもしれません。