by 編集部 2024.09.09
どうぶつさんと暮らしていく上で、避けては通れない“わが子とのお別れ”。最愛の家族との最後の時間を心穏やかに過ごせるように…。「エンジェルトリミング®」のサービスを提供する、株式会社 愛和のご担当者に、その想いを伺いました。
※本記事内では、エンジェルトリミングを行ったお子様(ご遺体)のお写真をご紹介しています。
「エンジェルトリミング®」とは?
「エンジェルトリミング®」は、亡くなったペットに「トリミング」と「衛生管理処置」を組み合わせたケアを行うサービスです。シャンプーやカット・ブローで生前のような可愛らしいお姿に整えるとともに、専門技術を持つスタッフが適切な衛生管理処置を施すことで、お身体の状態を3日間ほど保つことができます。「住み慣れたお家で最後の時間を過ごしてほしい」「お別れまでの時間をできるだけ長く一緒に過ごしたい」という飼い主様の心に寄り添い、旅立ちをサポートしています。
また、ネコちゃん、うさぎさんなどのトリミングを必要としないペットでも、衛生管理処置のみを施すプランをご利用いただけます。
「ありがとう」で見送るお手伝いを ~「エンジェルトリミング®」に込めた想い~
株式会社 愛和は、これまで高齢者の介護ケア、障害福祉事業、セレモニー事業等を専門としていた会社です。人を対象に高齢者やそのご家族のサポートに携わってきた同社が、ペットを対象とした「エンジェルトリミング®」のサービスを始めたきっかけや想いを、勘澤社長と、サービスの担当者・辰野さんに伺いました。
―「エンジェルトリミング®」を始めたきっかけはなんですか?
●勘澤社長:当社では、高齢者を対象に様々なサービスを展開してきましたが、中でも、ひとりでの入浴が難しい方への「訪問入浴サービス」や、故人様の体や髪をお湯で清める「湯灌(ゆかん)」のサービスのパイオニアとして、たくさんのお客様と接してきました。「亡くなる前に、もう一度お風呂に入れてあげたかった」「最期はきれいな顔で送ってあげたい」、そうおっしゃるご家族・ご遺族の気持ちに応えること、そして何よりその喜ぶ顔を見ることが、一番のやりがいでした。
そんな時、社員のひとりが「ペットを対象にしたらどうか」と提案してくれました。いまやペットも「家族」であることに変わりはなく、これこそが今必要とされるサービスだ、と思い「エンジェルトリミング®」の提供を決めました。ペットも人と同じように、最後の時間は少しでも長く、家族と一緒に過ごしてほしいと願っています。
―「エンジェルトリミング®」にはどのような想いが込められていますか?
●辰野さん:私は人のセレモニー事業にも携わっており、そこで故人様に「ごめんね」とおっしゃるご家族を多く見てきました。しかし、謝罪の気持ちでのお別れは、その先もご遺族の気持ちの整理がつかないことが多々あります。そのため納棺における一連の対応をとおして、これを「ありがとう」に変えられれば、ご家族の気持ちに寄り添い、死を受け入れるお手伝いができるのではと思っています。
エンジェルトリミングをしたお子様も、「ありがとう」の気持ちでお見送りいただき、しっかりとご家族とのお別れの時間を作っていただけるようにすることを意識しています。エンジェルトリミングをしたコーギーのるぱちゃんをお見送りした際、「手を握ってみてあげてください」といってお布団から手を出して触っていただいたところ、それまではどちらかというと暗い表情だったご家族のお顔が、「るぱだぁ」とふわっと笑顔になったんです。お気持ちに少し寄り添えた瞬間だったと思います。
また、エンジェルトリミングをすることで、通常であれば火葬までほとんど時間がないところ、ゆっくりとお別れをする時間をとることができます。このことで、ペットロスを和らげることができるのではと思うのです。
ご家族の「おかえり」が何よりの喜び ~トリマー 山田さん、栗原さん、中村さんの想い~
亡くなったペットに対するトリミングや衛生管理処置は、まだまだそのノウハウや設備が整っているとは言えません。そんな中、トリマーの山田さん、栗原さん、中村さんは、心を込めてペットとそのご家族に寄り添い、サービス品質の向上に努めていらっしゃいます。お三方に、実際に飼い主様と接したときのエピソードや、「エンジェルトリミング®」ならではの課題などを伺いました。
―お客様と接する中で、印象的なエピソードはありますか?
●山田さん:ミニチュア・ダックスフンドのまろ吉くんは、私の前職(トリミングサロン)からのお客様でした。老衰で亡くなったのですが、晩年はシャンプーもなかなかできず、寝たきりの時間も長かったため、寝だこが破裂している箇所もありました…。お風呂に入れ、寝だこもきれいにお手当をした姿でご家族にお返しした際、「エンジェルトリミングを頼んでよかった」と言っていただけたときには、心から「やってよかった」と思いました。
●栗原さん:私もまろ吉くんをご家族にお返しする際に立ち会わせていただきました。ご家族が「おかえり!きれいになったね」といってお迎えされた時には、胸が熱くなりました。中にはペットが亡くなったとき、とたんにその体に触れることができなくなってしまう方もいらっしゃいます。ですが「エンジェルトリミング®」で生前のような姿を少しでも長く維持することで、ペットとそのご家族がお別れをするお手伝いができるのではないかと思いますし、そうしたお別れの時間に携われること自体、私自身も感謝の気持ちでいっぱいになります。
●中村さん:コーギーのるぱちゃんの飼い主様は、車で2時間かけ、当社にエンジェルトリミングを依頼しに来てくださいました。翌日にるぱちゃんを送り届けると、ご家族が「眠っているみたいだね」と喜んでくださり、後日のお別れについてもご報告をくださったことが、今でも心に残っています。
▼エンジェルトリミング®後のまろ吉くん
▼エンジェルトリミング®後のるぱちゃん
―「エンジェルトリミング®」ならではの課題はありますか?
●栗原さん:施術方法が確立されておらず、専用の設備や器具が整っていない点は、これから改善していく余地があると思います。例えば、亡くなったペットは寝かせた状態でシャンプーやトリミングをしますが、体を支える専用器具がないため、既存のシャンプー台に底上げのための台をいれて工夫したりしています。また、亡くなった子の身体を温めすぎてしまうと状態が悪くなってしまいますので、お湯を使わずにぬるま湯で素早くシャンプーをしたり、ドライヤーの温度を上げすぎないようにしたり…。試行錯誤をしている部分があるのも現状です。トリマー一同、ペットのためにできることは何か、を日々考えています。
ご家族にもうひとつの選択肢を ~獣医師の心も救う「エンジェルトリミング®」~
衛生管理処置の方法、ご遺体の扱い方など、技術的な側面でこのサービスを支える西新井大師動物病院の藤野先生に、「エンジェルトリミング®」に向ける熱い想いを伺いました。
「エンジェルトリミング®」に関わったきっかけはなんですか?
●藤野先生:私は一次~二次診療や専門医療に携わっています。重い病気の患者様も数多く診療させていただいておりますが、中には懸命の治療の末に亡くなってしまう患者様もいます。治療を通してご家族と向き合う中で、わが子をいかに大事に思っているか、その想いに何度も触れてきました。そんな時、株式会社 愛和の皆さんが当院にお話に来てくださり、このサービスのコンセプトを伺いました。ご家族からの需要はとても高いものと確信しましたし、ご遺体の保存について、より安全でより長く一緒にいることができるよう、私の経験や知識の面からサポートしていきたいと思い、協力させていただきました。
獣医師から見て「エンジェルトリミング®」はどのようなサービスでしょうか?
●藤野先生:重い病気の患者様では特に、ご家族から「この子の最後はどのように迎えたらよいのか」と相談を受けることも多くあります。もちろん、ご家族のご意向やお気持ちが大切ではありますが、感染症のリスクなども踏まえ、これまでは「24時間以内の火葬」をご家族にご提案するのが基本でした。しかし、ご家族が必死で看病してきた様子を知っている獣医師からしても、これは非常に心が痛む瞬間です。「エンジェルトリミング®」があることで、獣医師がご提案できる選択肢が増えることは、ご家族だけでなく、獣医師にとっても心が救われるように思います。さらにサービスが広がってほしいと思っています。
お話を終えて
時には涙ぐみながら、熱い想いを語ってくださる皆様の姿が大変印象的で心に残っています。筆者も昨年愛犬を亡くしており、「お別れまで、わが子と少しでも長く一緒にいたい」と願う飼い主の一人でした。「エンジェルトリミング®」は、こうした飼い主様の心の拠り所のひとつになるように思います。これからも「エンジェルトリミング®」が、多くのご家族にとっての安らぎとなることを心から願っています。
【関連リンク】
ペット火葬の前に最後のトリミングを【公式】エンジェルトリミングsora (at-sora.jp)
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