2020.11.04
犬と暮らすお部屋の温度は何度にすればいい?
犬と暮らすお部屋の温度、みなさまはどうやって管理していますか?
わたしたち人間は、暑さ寒さに応じてエアコンをつけたり、服を着替えたり、最適な温度の飲み物や食べ物を口にすることができます。
ですが、犬はわたしたちが温度管理をしてあげなければ、適切な温度の中で暮らすことはできません。
犬にとって適切な温度管理をするために、意識したいのは「温度差」です。
冬場や、あるいは夏にエアコンをつけた時、「足元が冷える」と感じた経験があるかと思います。犬は、この「温度差」のある環境のうちの寒い方で1日を過ごしているわけですから、温度管理がいかに大切かは言うまでもありません。
寒いところでずっと過ごしていると、人間と同じでワンちゃんも具合が悪くなってしまいます。しかし、暑すぎても具合が悪くなってしまうのです。では、人間もワンちゃんも快適に過ごすにはどうしたらいいのでしょうか。
犬にとっての適温って何度?
適温の目安としては21~25℃がおすすめです(※1)。湿度は50%~60%に保てるとよいでしょう。ただし、同じ温度であっても、湿度によって体感温度は異なります。さらに、年齢(※2)や犬種などによっても適温は異なりますので、あくまでひとつの目安としてください。
例えば、特に温度に敏感な子犬期は25℃前後のあたたかめの室温をおすすめしています。しかし、成犬になると体格や毛量、年齢によっても25℃だと暑い、または21℃だと寒い場合もあります。様子をみながら調節してあげるとよいでしょう。
犬の特徴別に、室温は暖かくする方がいいのか、涼しくする方がいいのか分類してみましたので、ご参考にしてみてください。
暖かくする | 涼しくする | |
年齢 | 子犬 | 成犬(※2) |
体格 | 小型犬 | 大型犬 |
毛の長さ | 短毛 | 長毛 |
※1 エアコンの設定温度と実際の室温は異なるためご注意ください。
※2老犬の場合、温度変化を感じにくくなることがあります。また、筋肉量が落ちて寒さに敏感になってくる場合もあります。老犬については、暑さにも寒さにも注意が必要です。
実際に温度管理を体験していただきました!
では、実際に部屋の中にどれくらいの「温度差」があるのでしょうか?
約40世帯の飼い主さんのご協力のもと、3日間にわたって調べていただきました!
温度の測定方法は、「お部屋の温度が計れるカード型の温度計を『人の目線」と『犬の目線』に設置する」というもの。同じお部屋でも飼い主さんと犬の目線でどれくらい温度差があるのか調べていただきました。
気になる結果は…
1日目の測定結果では、同じお部屋でも2℃以上の温度差があったご家庭(青色)が33%でしたが、3日目は21%に減少しました。また、温度差が0℃および1℃あったご家庭(緑色とオレンジ)は、1日目は合わせて67%でしたが、3日目は80%まで増加しました。この結果から、温度差をなくすために、様々な工夫をしてくださったことがうかがえます。では、実際にどのような工夫をしたのか、2世帯の飼い主さんにお話を伺いました。
はるこちゃん(ミニチュア・シュナウザー/0歳)の場合
はるこちゃんのお家では1日目は2℃の温度差がありましたが、3日目には温度差がなくなっていました。日中お留守番することが多いはるこちゃんが快適に過ごせるよう、どんな工夫をしたかお話を伺いました。
飼い主さんの目線 | はるこちゃんの目線 | |
1日目 | 30℃ | 28℃ |
2日目 | 29℃ | 28℃ |
3日目 | 28℃ | 28℃ |
【工夫したこと】
エアコンと扇風機の両方をつけて空気を循環させた。
【変化】
部屋の中の温度差を意識するようになった。
【感想】
温度について普段気にしていませんでしたが、今回の取組みのように温度計で実際に温度の差を見ることで、飼い主自身の意識も変わってくると感じました。これからも注意してみていきたいと思います。
ロイちゃん(ペキニーズ/0歳)の場合
ロイちゃんのお家でも1日目は2℃の温度差がありましたが、2日目3日目では温度差を1℃に縮めることができていますね! どんな工夫をしたのか、ロイちゃんの飼い主さんにもお話を聞いてみました。
飼い主さんの目線 | ロイちゃんの目線 | |
1日目 | 27℃ | 25℃ |
2日目 | 27℃ | 26℃ |
3日目 | 27℃ | 26℃ |
【工夫したこと】
サーキュレーターを設置して空気を循環させた。
【変化】
過ごしやすいのか、よく眠るようになった。
【感想】
初日にお部屋の中に2℃の温度差があることに気が付きました。
犬の目線は温度が低いことが分かったので、お部屋の温度設定を26℃から27℃に変更しました。サーキュレーターを設置して空気を循環させていたので、暑いと感じることはありませんでした。
ほかの飼い主さんからの声
はるちゃんとロイちゃん以外にも、多くの飼い主さんからお部屋の温度の測定結果とともに、たくさんのコメントをいただきました。いくつかご紹介させていただきます♪
・「人の目線よりワンちゃんの目線の方が、温度が低かった。日中は熱中症対策のためクーラーをつけている。夜はタイマーにして管理している。」 エルモちゃん(イタリアン・グレーハウンド/0歳)
・「クーラーはリビングでついているので、扇風機で別の部屋にあるケージまで風を入れています。ベッドは冷感ベッドを置いたり、冷たんぽを与えたりしています。」 麦ちゃん(ヨークシャー・テリア/0歳)
・「エアコンを使用していましたが、ワンちゃんの目線の方が温度が低いので、同時に扇風機も使って平均的に風が行き渡るようにしました。」 サンちゃん(ポメラニアン/0歳)
・「人の目線とワンちゃんの目線で温度が違う時は、タオルを一枚増やしてみたり、寒くならないように工夫しました。」 マロンちゃん(チワワ/0歳)
みなさま、お部屋の温度差に注意して様々な工夫をしてくださいました。タイマーでの温度管理や、扇風機での空気の循環、様々なグッズを活用して犬種や体格に合った温度管理も実施してくださっていますね!
ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。
お部屋にはどれくらい温度差があるの?
環境にもよりますが、人間の目線と犬の目線の高さでは、平均して1℃~3℃の温度差があることがアニコムの調査でわかりました。お部屋の中の温度差が大きくなると、快適な温度の空気に触れている私たち「足元が寒い」と感じるころには、ワンちゃんが寒がっている可能性があることがわかりました。お部屋の温度を均一に保つことができれば、人間が暑い・寒いと感じるタイミングで、ワンちゃんの感じている温度もすぐに調整することができますので、温度を均一にできるよう心がけましょう。
温度管理をしないと、どうなる?
適切な温度管理ができていないと、暑すぎるまたは寒すぎることで、体調不良を引き起こしやすくなります。暑すぎる場合は、呼吸が速くなったり、ぐったりしたりします。また、寒すぎる場合はふるえたり、丸まってじっとしていたり、様々なサインで犬の体調の異変に気付くことができます。悪化すると以下のような病気につながってしまう恐れもあります。
暑さによりなりやすい病気
・熱中症:お部屋の温度が暑すぎることで、嘔吐や下痢などの症状が起きます。ハアハアしていたら暑いサインなので、涼しく過ごせるように工夫をしましょう。特に鼻が短い短頭種(フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアなど)や肥満気味の子は、熱中症にかかりやすいと言われているので注意しましょう。熱中症は突然起こり、重症化すると命にかかわる危険な病気です。夏は特に気を付けましょう。
・外耳炎:温度が高く、合わせて湿度も高くなることで、耳の中が蒸れたり細菌が増えたりして、外耳炎を起こしてしまうことがあります。
・心臓病:暑いと脈拍が速くなり、心臓に負担がかかってしまうことがあります。すでに心臓に病気がある場合は特に注意が必要です。
・気管虚脱:暑くてハアハアすると、気管に負担がかかります。すでに気管虚脱という病気の場合、症状を悪化させてしまうことがあります。変な咳をしていたら早めに動物病院の受診を検討してください。
寒さによりなりやすい病気
・風邪(ケンネルコフ):寒いと空気が乾燥しやすくなり、咳がでることがあります。子犬が風邪(ケンネルコフ)にかかると、咳がひどくなったり、風邪が治りにくくなる場合もあります。悪化すると、肺炎になってしまう場合もあります。咳の症状は気が付きやすいので、咳をしていたら注意しましょう。
・腹痛:人間と同じでお腹が冷えることで腹痛をおこすことがあります。悪化すると下痢や胃腸炎などになることがありますので、お腹が冷えないように注意しましょう。
暑くても寒くてもなりやすい病気
・元気喪失:暑さ・寒さによるストレスでぐったりしてしまうことがあります。食欲がなくなったり、様々な病気にかかりやすくなってしまうので、普段と様子が違う場合はよく観察し、元気が戻らない場合は病院を受診しましょう。
暑くても寒くても犬にストレスがかかります。ストレスを感じると免疫力が低下して、様々な症状がでてしまいます。毎日の体調変化を見逃さないようによく観察し、健康維持につなげていきましょう。
温度管理をするときのポイント
温度管理にあたっては、エアコンを使用している方も多いと思います。しかし、エアコンの設定温度と実際の室温は異なることがよくあります。このような場合は温度を均一にすることで、寒すぎ・暑すぎに気が付きやすくなります。そこで、お部屋の温度を均一にするためのポイントをお伝えします。
【夏】
①エアコンの冷気が足元に溜まりやすくなります。エアコンをつけていても扇風機やサーキュレーターをつけて、お部屋の空気を循環させましょう。
②エアコンが効きすぎで涼しくなりすぎたと感じたら、窓を開けて換気をしましょう。お部屋の対角にある窓や扉を開けると、より空気の通りがよくなり、効果的です。
【冬】
①暖房をつけていても暖かい空気は上に、冷たい空気は足元に溜まりつづけてしまうことも。床にホットカーペットや毛布、多めにタオルなどを敷くことで、ワンちゃんの体温が下がりすぎるのを防ぐことができます。
②シーリングファンをつけると、暖かい空気がお部屋に行きわたりやすくなり、お部屋の温度を均一に近づけることができます。
夏も冬も、「空気をかき混ぜる」ことがポイントです!お部屋の温度を均一に保ち、温度変化に気づける環境を目指しましょう。
私たち人間と犬が快適に過ごせる温度は、必ずしも同じとは限りません。人も犬もお互いが快適に過ごせるように、犬が寒そうにしている場合はお洋服を着せてあげたり、毛布やタオルを敷いてあげたりすると暖かく過ごせるかと思います。逆に、暑そうにしている場合は市販のひんやりグッズを購入したり、扇風機やサーキュレーターを犬の過ごしている方向に向けてあげたりするといいかもしれません。
愛犬の健康を守るために
真夏や真冬だけでなく、寒暖差が大きくなる春や秋も注意が必要ですので、温度管理は年間を通して常に意識してあげましょう。
日々の意識の変化が健康の維持につながり、体調不良を起こしにくくなります。ぜひ今日からお部屋の温度に意識を向けてみてください。そして、わが子にぴったりの温度管理の方法を探してみてください!