2019.11.01
山中さんご夫妻が譲渡会で出会った保護犬のトイプードル君。今回は、トライアル期間中の出来事や山中さんご夫妻の心の葛藤などをお伺いしました。
お見合い「ワンちゃんとの相性確認」
私たちが、トイプードル君を気にいっても、片思いではだめですよね(笑)
この子が私たちを気に入ってくれるかしら?不安というか、ドキドキしながら、心のどこかで「仲良くなれるといいな…」そんな気持ちでした。
<「お見合い」では、迎える側と引渡す側、新しい家族として双方が幸せに生活できるように双方の希望や条件をじっくり話し合い、確認します。>
動物愛護センター、保護主さん、トレーナーさんという方々と初めてお会いしたので、知らないことばかり。逆に私たちのことも知って欲しかったんです。
愛犬に旅立たれた悲しかった出来事から、現在の犬への思い。これから新しい家族を迎えるにあたっての気持ち。
私たち夫婦でも飼えるかな?保護犬のお世話って難しくないかな?そんな不安を全部受け止めてくれて、とても親切に対応してくださいました。
<思いを少しずつ話していく中で自分の心の整理をしながら、どうして保護犬を次の犬として選んだかを改めて考えることができたという山中さん。
その頃、トイプードル君は…。>
保護主さんの足元でまるくなって、ピタッとくっついてました。おとなしく座っていたかと思うと、急に立ち上がり、保護主さんに抱っこをせがんでいましたが、お話中なので誰もかまってくれません。すると…
山中さんのご主人の足元に来て、ちょこんと座ってピタッとくっついたのです。
保護主さんも、トレーナーさんもトイプードル君のとった行動に驚いていました。軽い分離不安症と診断され、ひとりぼっちになることに凄く恐怖を感じている子とのこと。でも、とても人懐っこい性格のようで、今のところ心を許した相手にしか懐かないかな?と思っていたそうです。
他人の庭に捨てられ、保護され、譲渡まで約1ヶ月。分離不安症も大丈夫!これなら譲渡犬として渡すことができると思っていたけど、実際は新しい里親さんを受け入れることができるのか?トイプードル君のこの行動は、判断ポイントの一つだったようです。
「ワンちゃんの幸せを一番に願っています。そのために新しい里親さんには、万全のフォローをしていきます。それは、保護犬を迎えてくれた後も変わりません!じっくり考えて決めてくださいね。」
保護主さんのこの言葉に、胸が熱くなりました。
私たちが里親として歩めるように、ゆっくりサポートしてくださる。
ここから次の犬を迎えたい。その思いからトイプードル君のトライアルを申し込みました。
生活環境の準備
先代犬が亡くなった時、愛用していたものはすべて処分してしまいました。
いなくなった後に見るのが辛かったので、サークル、ベッド、フード入れ、水飲み、首輪やリード、何一つ残していませんでした。
近所の知り合いや娘から譲ってもらったり、新しく調達したり。
トライアルなので、この先、無事に迎え入れることができるかわからなかったので、まずは最小限の準備をしました。
トライアル開始
<トライアルを始めたといっても、必ず譲渡(里親になる)とは限りません。トライアル=お試しなので、そのお宅に馴染むことができるかを確認します。保護主さんがこのお宅は譲渡に向かないと判断することもあります。譲渡犬が幸せに暮らしていけるかを双方が確認する時間なのです。>
トイプードル君は、保護センターからではなく、保護主さんの自宅から直接わが家にやってきました。
初めは保護主さんにくっついたまま、顔だけ動かして周りをキョロキョロ。すぐに私たちの方に興味を持ってくれて、あちこち匂いを嗅ぎだしました。
やっぱり(推定)生後7ヶ月ですね。しぐさが幼くて可愛いかったです。
先代犬の面影が・・行ったり、来たり
<先代犬を亡くされてから、まだ半年。喪失感は、ぬぐえないですよね。>
覚悟はしていました。
でも、どうしてもこの家でワンちゃんを見ると、随所にカンタの面影が出てきてしまって…。10歳で天国へ行ったカンタは、しつけもほぼできていて、落ち着いた犬に成長していました。10年も一緒に暮らしてきたんですから、当然かもしれません。
若いこのトイプードル君を迎えることは、もう一度初めからしつけをしたり、時間をかけてこの子が安心して私たちに馴染んでくれるように生活していくしかありません。先代犬の代わりとして迎えようと思ったんじゃない。と思っても、どうしても出てくるんですよ…カンタが。
でも目の前にいるこのトイプードル君のまん丸で真っすぐ私を見てくる目が、本当に愛おしく思えるんです。
なんでだろう…と真剣に深く悩まれたそうです。
トイプードル君、キミって…
<どのようなことがあったのですか。>
トイプードル君は、人間との関わりは好きなんだけど、どう接していいかわからないような噛み癖や飛びつき。あまり体に触られたことがないのか、触った瞬間にビクついたり、触ろうとすると(嬉しくて?)飛びついたり。
そして、首輪を付けるのが大変でした。
お散歩に行くのに首輪を付けようとすると暴れて嫌がります。
何度かやっていると少しわかってきました。合図をすると、わちゃわちゃ騒いでから、クルンと背中を向けてピタっと止まります。それがこの子の「抱っこしてもいいですよ、触ってもいいですよ」の合図みたいです。それでも2人がかりで首輪をつけ、家の前は段差があるので抱っこから地面へおろし、リードを持ってさあ出発!
と思ったら、今度はまったく動きません。姿勢を低くして伏せの状態から動かない。草や土やいろんな匂い、アスファルト、砂利、土の感触。すべてが恐怖なのか、小刻みに震えて動くことができない、怯えている様子がわかりました。
生まれてから約半年。散歩もしたことがないのかな?今までどのような生活をしてきたんだろう。これからどうしてあげたらいいんだろう、一緒に暮らしていくのがこの子にとって幸せなのだろうかという不安が芽生えてきたんです。
<さまざまな状況で保護された子は、目に見えない闇の部分を持っているのかもしれません。山中さんの見た光景は、このトイプードル君がどうやって今まで生きてきて来たのか考えさせられるものでした。そしてこれからの運命は山中さんの決断で変わっていくのです。>
私たちだけで悩んでいても解決できそうになかったので、保護主さんへすべての思いを伝えました。この子のすべてを受け入れ、終生飼育をするにあたり、不安に思っていること。
どうしても先代犬との生活と比べてしまう…いえ、比べてしまうということではなく、この子を本当に可愛いって、間違いなく寄り添ってあげたい気持ちもあるんです!先代犬を思い出して悲しみが襲ってくるのが怖かった…というんでしょうか。
言葉にするのが難しい感情ですよね…。
保護主さんは、焦らなくてもいいですよ。
先代犬を亡くされてまだ日が浅いので、犬を見たら悲しみが蘇ってきてしまうことはよくある感情です。もし、迷ってらっしゃるのでしたらトライアルを延期しても大丈夫です。と言ってくださいました。
トライアルを延期します
一度だけ、里親になることを断ろうかと思いました。
カンタのことがどうしても頭から離れなかったんです。こんな気持ちではトイプードル君に申し訳ないし、ほんとにこの子でいいのかな?たくさん悩みました。
このトイプードル君をわが家の新しい家族として迎え入れることをカンタはどう思っているかな?カンタが天国へ旅立って約半年。早いかな?でも、カンタへの思いがいっぱいで辛かった時、夢で見た光景と似た出会いをしたこと。もしかしたらカンタがめぐり合わせてくれたのかもしれない。
「ぼくのつぎは このこを よろしく」そう言っているのかな?
元気が良くて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、真っすぐな目で見てくれるトイプードル君。私たちに何かを言いたいような…「あのね!あのね!」と言っているようにも感じました。
あまり元気が良すぎても…。
私たちも若くはありません。今はまだ元気なので一緒に遊んだりもできますが、まだ1歳前です。先が長いことも不安でした。
心強いバックアップ、そして正式契約
譲渡説明会でも話がありました。
「何かあった時、誰か面倒を見てくれる人がいますか?」
近くはないですが、同じ県内に娘家族が住んでいます。保護犬を迎えるということ。迎えることに不安があること。今の気持ちを全部話して相談しました。
保護犬を迎えるって思い切ったね!大賛成だよ。
カンタが亡くなって元気のないお母さんを見てるより、バタバタお世話してる方がお母さんらしいし(笑)、若い子を迎えるんだから、2人も長生きしないとね!お母さんたちに何かあったら私が引き取ってあげるから大丈夫だよ!
散歩ができるようになったら、一緒に公園とかドックランとか連れていってあげるよ!旅行に行く時は、預かってあげる!
夫婦二人の生活なので、何かあったら…と心配をしていましたが、娘の協力が得られそうなので、本当に心強かったです。もしもの時に協力者がいる安心感もあり、トイプードル君を迎えたい!と保護主さんに連絡をし、正式に譲渡契約を結びました。
<正式に保護犬を家族の一員に迎えることになった山中さん。トイプードル君は「まる」と名付けられました。>
まる君が過去にどんな光景を見てきたのかはわかりません。でも、今のまる君はとても人間が好きなんだと思います。ちゃんとしつけがされていたら、きっと賢い子なんじゃないか、私の前でぴょんぴょん飛んで遊びに誘ってきたり、ボール投げを1時間以上するときもあります。すごく活発なのに外に行くと竦んでしまって、散歩を知らないようでした。
可哀想って思ってしまうけど、今までは今まで!これからは私たちと一緒に一つずつできるようになっていこう。大変なこともあると思うけど、ゆっくりと付き合っていくつもりで、無理強いせずこの子に合わせてやっていきますよ。と山中さんの愛情が溢れていました。
まる君、きっと幸せになれるね!