犬に本を読むと、いいことが起きる?~動物介在読書プログラムの効果とは~

by anicom you編集部 2018.04.23

かわいらしい姿やもふもふの感触、心温まるふれあい…どうぶつの存在は私たちにたくさんの癒しを与えてくれる。どうぶつ好きのみなさんなら、よくおわかりのはず。


どうぶつたちの持つそんな不思議な力について興味深い調査結果があることをご存じですか?


今回は、ある問題を抱えた子どもたちに、犬がもたらす効果について書かれた論文をご紹介します。


世界に広がる「動物介在読書プログラム」とは

2014年に、南アフリカ共和国ステレンボッシュ大学のMarieanna C. leRoux教授らのチームによって、「動物介在読書プログラム」の効果について論文が公表されました。


この論文では、読書能力に問題を抱える子どもたちを対象に実施した「動物介在読書プログラム」の効果を調査し、分析した結果がまとめられています。


「動物介在読書プログラム」は、犬に本を読み聞かせをすることで自身の読書能力を向上させることを目的としたもので、実にユニークな取り組みですね。このプログラムは、1999年にアメリカのNPO法人「インターマウンテン・セラピー・アニマルズ」が「R.E.A.D.(The Reading Education Assistance Dogs)」プログラムとしてスタートさせたといわれています。


誕生からおよそ20年経った今では、「R.E.A.D.」以外にも数多くのメソッドが生まれ、アメリカのみならず、カナダ、フランス、イギリス、スペインなど、世界各国で実施されています。


この「犬に読み聞かせる」という行為が子どもたちにもたらす効果について、「R.E.A.D.」の手法を用いて調査・分析を行ったのが、leRoux教授らのチームでした。


犬に読み聞かせをした児童の読書能力がもっとも向上する結果に

論文によれば、対象となったのは、南アで実施されている「ESSI読書・筆記試験」で得点が低かった、南ア西ケープ州の小学校に通う7歳から13歳の児童102名。彼らは、以下の4つのグループに分けられました。


  • 第一群:セラピー犬に読み聞かせをする「犬グループ」
  • 第二群:大人に読み聞かせをする「大人グループ」
  • 第三群:クマのぬいぐるみに読み聞かせをする「テディベアグループ」
  • 第四群:何の指導も行わない「コントロールグループ」

第一群から第三群までの3グル―プには、各々の対象に向けて読み聞かせを行う、10週間の読書プログラムに取り組んでもらいました。


評価指標は、「読書速度」「正確性」「理解力」。この3項目に関し、「読書プログラム開始前」「10週間の読書プログラム終了直後」「読書プログラム終了から8週後」の3つのタイミングでデータが収集されました。


その結果、プログラム開始前は、いずれのグループ間でも能力に大差がなかったのに対し、プログラム終了直後、終了8週後の調査時はいずれも、他のグループに比べ「犬グループ」のスコアが、すべての項目において有意に高いことがわかりました。


子どもたちを変えた理由は、犬がただ聞いてくれたから

いったいなぜ、犬に読み聞かせをするだけで、子どもたちの読書能力が向上したのでしょう?


論文では、そもそも読書に問題を抱えている子どもについて、「読むことが苦手な生徒は失敗をする不安から、ますますミスを重ねてしまう。その結果、他の生徒からからかわれることもある」と記しています。


その影響は読書だけにとどまらず、他の生徒に比べて欠席率が高かったり、課題を終えるのが遅いといった傾向にもつながっていると指摘しています。うまく読めないことが、当人の心にかける負担が想像以上に大きいことがわかります。


そのような子どもにとって、読み聞かせの相手となった犬たちは、ただ黙って聞き、間違えても決して笑ったり責めたりせず、失敗をすることを許してくれる存在。


この「どのような状態でも無条件に受け入れてもらえる」という感覚が、不安やストレスを和らげ、やる気を生み出す原動力となり、他のグループに比べて高い効果をあげた要因になったのではないかと分析しています。




今回は読書能力にフォーカスをあてた結果となっていますが、前述のような、犬とのふれあいを通じて得られる無償の安心感は、子どもたち(大人も?)の自己肯定感を育てるための種として、いろいろと応用していける可能性を秘めています。


ただかわいがるだけの存在から、お互いが高め合うパートナーのような、対等な関係へ。このような調査や研究が、どうぶつとのかかわり方の新しいかたちを生み出すきっかけになるといいな、と思います。


日本でもここ数年、数こそまだ少ないものの、犬への読み聞かせを試験的に実施する図書館などが出てきているようですよ。


近い将来、図書館や学校に当たり前のように常勤の犬がいたり、犬に読み聞かせるのにオススメな本のコーナーが本屋さんに常設されている、というような時代がきたら、ステキですね。


【参考文献】
The Effect of an Animal-Assisted Reading Program on the Reading Rate, Accuracy and Comprehension of Grade 3 Students: A Randomized Control Study
Marieanna C. le Roux • Leslie Swartz • Estelle Swart
Published online: 30 May 2014
©Springer Science+Business Media New York 2014


【関連リンク】
インターマウンテン・セラピー・アニマルズ R.E.A.D.プログラム公式サイト


コメント0

ADVERTISEMENT