ドイツ&オランダ動物保護事情③ ~ドイツ人の動物との接し方~

by 兵藤未來(獣医師) 2019.08.08

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ドイツ&オランダどうぶつ保護事情、第3回は、ドイツの人々の動物との接し方です。「動物愛護先進国のドイツではこうだ」と日本で言われることがよくありますが、実際見てみると「やっぱりね」と納得するようなイメージ通りの部分もあれば、「意外!」と思うような一面も。海外のペット事情の一例として、5つのポイントをご紹介していきます。



【目次】

・【その①】ドイツ人はどこからペットを迎えるの?

・【その②】ドイツにも犬を販売するペットショップがある

・【その③】ペット可?不可?ドイツの住宅事情

・【その④】ペット保険といえば、健康保険ではなく○○保険

・【その⑤】リードあり?ノーリード?ドイツのお散歩事情

・【最後に】ドイツの真似ではない、「ちょうどいい」道を

【その①】ドイツ人はどこからペットを迎えるの?

まずはドイツでのペットのお迎えの仕方です。ドイツでは、犬猫を飼うならブリーダーから直接購入するという文化があります。そのため、ブリーダーがペットショップに貼り、それを出産情報等のチラシを頼りに購入するというケースが主になります。


法律上ペットショップでの展示販売がNGというわけではありません。スペース確保等の規制が細かくて厳しく、また上記の文化的理由から、わざわざ販売するところがほとんどないというのが実情のようです。ウサギやハムスターなどの小動物は、ペットショップで購入しお迎えされています。

【その②】ドイツにも犬を販売するペットショップがある

ドイツのデュイスブルクにある世界最大規模のペットショップ、『ツォー・ツァヤック(Zoo Zajac) 』。犬猫、鳥類、爬虫類、両生類、魚類など、日本でもペットとしてイメージできる動物だけでなく、動物園・水族館動物(コモンマーモセットやナマケモノ、大型のナマズやチョウザメ等)といった珍しい動物まで3,000種の動物を展示販売しています。


ここでの犬の展示方法がまた衝撃的なのです。それが、こちら。

広い展示部屋に、スタッフになでられてご満悦のチワワ

▲広い展示部屋に、スタッフになでられてご満悦のチワワ(899ユーロ、日本円で11万円くらい)

広い!スタッフが入って遊んであげている!(あの仕事したい!)


身を乗り出して犬を眺めるお客さんたち。

▲身を乗り出して犬を眺めるお客さんたち。直接展示ケースには届かないようになっている


こうした展示部屋が複数並んでいて、それぞれ数頭ずつ犬が入っていました。法律を遵守した35㎡のスペースに、最大でも7頭までだそう。


ツォー・ツァヤックでは、犬猫の展示販売を2012年に開始しました。当初は非難が殺到して、お店の前ではデモまで起きました。でも、実際の状況を見せると皆「これなら」と安心して帰っていったそうです。


犬の販売に際してはスタッフから飼い主となる家族全員に説明を行い、飼育環境の写真を見せてもらいます。初めて犬を飼う顧客に対しては、この説明に4~5時間かけることも。スタッフは販売を断る権利があって、なんと2人に1人は断っているそうです。購入者は、犬を販売してもらうために努力して勉強してくるとのこと。


スタッフもお客さんもヘトヘトになりそうですが、「健康で元気な生体を、知識のあるスタッフが届け、動物を飼育する効用を広めたい」という経営者の信念のもと、このようにしているそうです。


経営者のZajac氏

▲経営者のZajac氏(大きい!)

【その③】ペット可?不可?ドイツの住宅事情

せっかくペットを迎えても、家がペット不可では話になりません。ドイツも日本と同じく、集合住宅では家主の許可がなければ飼育することはできません。また、闘犬などの危険犬種が指定されている州では、住宅の住民全員の承諾が必要という場合があるそうです。その承諾がどうしても得られず、泣く泣くティアハイムに…という事例もあるとのこと。


ドイツでのペットの世帯飼育率は、犬が13%、猫が16%ほどといわれています。日本もだいたい同じかこれよりもやや高いくらいなので、ペット飼育者が世間全体からみてマイナーであることはかわりません。


社会の中で生きていく以上、「自分が好きだから」というだけではペットは飼えず、周りへの配慮が必要だという点は、ドイツでも日本でも同じなのです。

【その④】ペット保険といえば、健康保険ではなく○○保険

ペット保険のパンフレット

▲ペット保険のパンフレット


周りへの配慮という点で、保険事情に関してドイツが日本と大きく異なることがあります。


日本で「ペット保険」といえば、ケガや病気のときの医療費を補償するタイプが一般的ですが、ドイツではそのタイプはあまり普及していません(普及率は日本では8%、ドイツでは1%といわれています)。そのかわりにドイツで「ペット保険」といえば、賠償責任保険が一般的です。


賠償責任保険とは、ペットが他人やそのペットにケガをさせたり、物を壊したりしてしまった時にその補償をするための保険です。日本のペット保険では特約として付けられることが多いですが、ドイツでは賠償責任保険単体で販売されていて、ベルリン州やハンブルク州など一部では義務化されている州もあるほどです。


日本もドイツも保険大国といわれるくらい、どちらも保険大好きなお国柄ですが、どうしてこうも違いがあるのでしょうか。


ひとつは、動物の死生観についての考え方があると考えられます。第1回で殺処分・安楽死について触れましたが、ドイツでは高齢や病気の動物は、長期的に治療を継続するよりも、早く苦痛から解放させることが優先されます。そのため、日本のように長期的に医療費をかけるということが少ないのです。結果、そこまでニーズがないのでしょう。


保護犬の情報一覧。ティアハイム ベルリンにて

▲保護犬の情報一覧。ティアハイム ベルリンにて


もうひとつは、犬種の違いです。日本ではトイ・プードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンドが三大人気犬種。住宅事情もあいまって、小型犬が圧倒的に多いです。


ドイツでも小型犬はいましたが、ティアハイムをまわってもシェパードやピット・ブルのような大型犬が多く、トイ・プードルは一度も見かけませんでした。


万が一こうした大型犬が暴れてしまったら、多くの場合その損害額は小型犬の比ではなくなります。こうした飼育犬種の違いもあって、賠償責任保険が普及し、一部では義務化までされているのかもしれません。


ティアハイム ベルリンの超巨大クレート。写っているのは私(154cm)。入れそう

▲ティアハイム ベルリンの超巨大クレート。写っているのは私(154cm)。入れそう


【その⑤】リードあり?ノーリード?ドイツのお散歩事情

実際にドイツで犬をつれている人たちのことも見ていきましょう。

ノーリードでお散歩するウェスティ

▲ノーリードでお散歩するウェスティ。当然だがちゃんと飼い主に着いていく


ドイツではみんなノーリードでお散歩している、と聞いたことがあるかもしれません。確かにノーリードの子もたくさんいました。車の多い大通り沿いでも、ちゃんと飼い主についていく。たまにくんくんにおいを嗅いで寄り道しても、離れると小走りで追いついていく…。しつけが行き届いている証拠のようで、正直うらやましく感じたのは事実です。


一方で、リードをつけて散歩をする方もたくさんみられました(せっかくなのでワンちゃんの名前も聞いてみました!)。

フレンチ・ブルドッグのアディーレ

▲フレンチ・ブルドッグのアディーレ


マルチーズのロミオ

▲マルチーズのロミオ


イタリアン・グレーハウンドのペティ

▲イタリアン・グレーハウンドのペティ。お洋服も着てる!


ドイツではノーリードが推奨されているのでしょうか。それともリードは必要なのでしょうか。


例えば一部の市の規則では、公共施設と市街ではリードの装着が必須とされています(ただし申請が許可されると免除)。さらにバスなどの公共交通機関では、口輪が必要というルールがあったりもします。


でも、これらは意外と守られていないそうです。暗黙の了解のようなものがあって、実施する人が少ないのも事実だそうです。


ルールが整備されているのは素晴らしいことですが、それを守る・活用していくという点ではドイツも課題があるようです。

【最後に】ドイツの真似ではない、「ちょうどいい」道を

ドイツは、日本に比べて動物愛護・動物保護の先進国なのでしょうか。

答えは、イエスでしょう。法律の整備状況、動物の待遇、ティアハイムのような受け入れ態勢、さまざまな点をとっても進んでいると言えます。


それなら日本はドイツをそっくり真似すればいいのかというと、それはまた違うと思います。


文化も、宗教も、歴史も、言葉も、食べ物も、人口も土地の広さも何なら国の在り方も、何もかもが違います。ドイツはこうした背景の中で、ちょうどいい道を日本よりも早く探し当てたまでです。


ただし日本人の私たちからすると、ドイツ人にとっての「ちょうどいい」も、行き過ぎのように感じてしまうかもしれません。ドイツでは、各種規制の影響もあって犬猫の飼育頭数が大きく減っています。規制には有効な側面があるとしても、それで動物と暮らす幸せを逃す人が増えるのは、残念なことだと私は思います。


だから私たちは、日本という国の特徴をふまえて、一番いい道を探す必要があります。それも、「ちょうどいい」道です。日本でも人口減・少子高齢化の影響もあってか、犬猫の飼育頭数は減少傾向にあります。


確かにペットを飼わなくても生きていけるし、単なる趣味だと考えることもできるかもしれません。


でも、動物との暮らしがもたらしてくれる幸せは、楽しさは、喜びは、悲しみは、何にも代えがたいものです。私たちは、それを知っている。だから、動物を幸せにしながら、人々も幸せになる、そんな「ちょうどいい」道を探す必要が、あると思います。


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