2017.11.22
皆さん、こんにちは! 前回、Dr.立川に教えてもらった腸内細菌の話。赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでに大きく変化して、3歳くらいまでには大人と同じようなバランスの細菌叢が成立すると考えられているようです(※1)。
【関連記事】けんちゃんとお腹の中のお友達~腸内細菌はいつから?~
無菌状態とされる羊水に守られ、生まれてきた主人公のけんちゃん。生後1日目から、10種以上の細菌がうんちから検出されましたが、果たしてそれはどのような菌なのでしょうか。実際にけんちゃんのお腹の中にいる菌を見てみましょう。
Dr.立川による解説!~どうぶつとヒトの腸内フローラ~
アニコム損保のご契約者等にご協力いただいた糞便サンプル中の細菌について分析し、どうぶつ種ごとに平均の腸内フローラの構成を比較しました。
※どうぶつ種はアニコム損保の保険商品上の分類です。
※どうぶつさんのデータは2017/3/17時点、ヒトのデータは2016/9/1時点のものです。
<サンプル数>
犬:3,140頭、猫:800頭、鳥:220羽、うさぎ:186頭、フェレット:57頭、モモンガ:17頭、リス:7頭、ハムスター:25頭、ネズミ:20頭、モルモット:15頭、ハリネズミ:45頭、カメ:10匹、トカゲ:15匹、ヒト:1,028人
細菌には名前が付いていて、似ている細菌は仲間ごとに分類されています。腸内細菌の種類と数は、どうぶつ種・消化管構造・年齢・食事内容・体調(疾患)によって違いがあると言われています。
まずはこちらをご覧ください。どうぶつ種によって細菌の一番大きな分類である「門」の比率が異なるのがわかります。人の腸内フローラではバクテロイデス門(オレンジ)、ファーミキューテス門(黄)の割合が高くなっています。
生後8日目までの腸内フローラを「門」でチェック!
一方、生後8日目までのけんちゃんのおなかの中は、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、ファーミキューテス門、プロテオバクテリア門の4門で構成されています。この4門は大人の腸内フローラでも主要な構成菌ですが、大人の腸内フローラの場合はバクテロイデス門(オレンジ)、ファーミキューテス門(黄)が多くを占めており、アクチノバクテリア門(水色)、プロテオバクテリア門(黄緑)の割合は低い傾向にありました。
生後8日間のけんちゃんの細菌叢の変化を見てみると、生後1日目はプロテオバクテリア門とごくわずかなバクテロイデス門の2門、2日目からはバクテロイデス門がいなくなりファーミキューテス門とプロテオバクテリア門の2門、8日目にアクチノバクテリア門が登場して3門という腸内フローラの構成になっています。
大人と生後すぐの赤ちゃんでは、腸内フローラの構成比が異なるようです。もう少し詳しく見てみましょう。
生後8日目までの腸内フローラをさらに詳しく
次に、もう少し詳しい「属(門より4段階細かい分類で、細菌の名字のようなものです)」でみたグラフがこちらです。
けんちゃんの生まれた日(1日)には、「エシュリシア属」(黄緑)という菌がおよそ80%と一番多く見られます。この「エシュリシア属」には「Escherichia coli(いわゆる大腸菌)」や「Escherichia albertii」といった、過去に食中毒の報告のあった菌が含まれるため怖いイメージを持たれるかもしれませんが、通常は病原性はなく、腸内では普通に見かける菌です。エシュリシア属の中でも「Escherichia albertii」という菌種が、この日のうんちの中で最大派閥を占めていました(全体の55%)。
2日目からは一変。「クロストリジウム属」(黄)が増えています。この菌は、「偏性嫌気性菌」と呼ばれる酸素が嫌いな菌で、酸素濃度の低い土の中や動物の腸の中に存在します。クロストリジウム属には数多くの菌種が含まれますが、けんちゃんのおなかの中にたくさんいたのは「Clostridium butyricum」。
この菌は、代表的な酪酸産生菌として知られており、医薬品にも使用されています。酪酸は大腸粘膜の主なエネルギー源になる、バリア機能を高めて感染症を防ぐ、アレルギーの改善、腸の動きを高めて排便を促進など健康に良いと言われる作用を持つと言われています。この菌が、生まれて2日目で42%と急に増えたのは、おもしろいですね!
ちなみに、前回お伝えした夜泣きに効果がありそうな菌(Lactobacillus reuteri)は、この時期のけんちゃんのお腹の中にはいませんでした。
腸内フローラが生後こんなに変わるのはどうして?
はっきりとした答えは分かっていないのですが、理由のひとつは、最初のうんち(胎便)をする前、けんちゃんのおなかの中は、生まれる前に飲み込んだ羊水の成分や消化液でほとんどでした。そこにミルクや母乳が入ってきたため、それを栄養にできる細菌たちが急激に増えたからではないかと考えます。
そして、お母さんの体内では無菌だと言われているのに、そもそも細菌はどこから来たのか?という疑問もありますが、それはまた後日のお楽しみに取っておきましょう♪
記事:豊田真紀(アニコムママ社員)、宮本亮太朗(けんちゃんパパ)、立川亜理沙(医師)
監修:医師・医学博士 星旦二