by 編集部 2022.08.19
最近、爬虫類をペットとしてお迎えする方が増えています。中でもクリクリとした目が魅力的なヒョウモントカゲモドキは、いろいろな表情を見せてくれると人気の品種。ここでは、ヒョウモントカゲモドキを飼う上で、日頃気をつけたいポイントや病気について解説します。
日頃から気をつけてあげるべきことは?
日頃から健康チェックを行うことで病気の予防や早期発見につながります。次のポイントを参考にしてみてください。いつもと違う様子がみられた場合は動物病院を受診しましょう。
元気、食欲
排便、排尿
目、鼻、口、耳
皮膚、爪
総排泄孔
尾
体重
元気、食欲
ヒョウモントカゲモドキは夜行性なので日中はあまり動きません。消灯後の様子を観察してみましょう。お腹が空いていると消灯前にシェルターから出てきて活発に動き回る姿がみられることもあります。歩き方に異常がないか確認しましょう。消灯時間になってもシェルターから出てこないような場合は体調不良の可能性があります。
餌を与える時には食いつき具合や食べる量を確認しましょう。餌入れで与えている場合は食べるまでの時間をみることも大切です。また、嗜好性の高い餌だけ食べて、いつもの餌を食べなくなった場合も食欲の低下が疑われます。
排便、排尿
ヒョウモントカゲモドキの便は俵型の固形でコロコロしていて、通常は白色の尿酸とともに排泄されます。便の排泄頻度、硬さ、未消化物や異物が混入していないか、血液や寄生虫が含まれていないか、異常な臭いがしないかを確認しましょう。
あまり噛まずに飲み込んだ場合、昆虫の外骨格やハニーワームの皮が便に混じることもありますが、食べたものがそのまま出てくる場合は明らかに消化不良を起こしています。
尿は便とともに白~やや黄色の尿酸の塊として排泄されます。血液が混入する場合には総排泄腔や泌尿器、生殖器の異常が疑われます。緑色の場合は肝臓疾患や溶血性疾患の可能性があります。
目、鼻、口、耳
目:脱皮直後に瞼や頭部に脱皮片が残っている場合は、頻繁に目を舐めたり、頭部をあちこちに擦りつける動作がみられますが、この時に眼球や結膜を傷つけることもあります。ちゃんと目を開いているか、目やにがついていたり涙があふれていないか、目が濁っていたり赤くなっていないか、左右の目に違いがないかなどを確認しましょう。
鼻:鼻の穴に脱皮片や床材が詰まっていないか、腫れや出血などがないかを確認しましょう。両方の鼻の穴が塞がってしまうと、口を開けて呼吸をします。
口:唇が腫れていないか、カサブタなどの傷がないかを確認するだけでなく、口腔内もチェックしましょう。口内炎がないか、口腔内に腫れや赤みがないか、また、舌の色が白っぽくなっていないかも大切です。
耳:耳の穴(外耳道)に脱皮片が残っていないか、鼓膜が赤くなっていないか、傷がないかなどを確認しましょう。
皮膚、爪
皮膚に炎症や腫れ、湿疹や変色、傷がないかを確認しましょう。脱皮不全は特に手足の先、お腹の内側などに残りやすく、手のひらや足の裏、尾の下側は低温火傷を起こしやすいので注意が必要です。
爪は通常、床材を掘ったり、流木や硬いレイアウトグッズを昇り降りしているうちに削れるため、伸びすぎることはありませんが、内臓疾患によって異常に伸びることがあります。また爪に脱皮片が絡まっていないか、爪が抜けていないかも確認しましょう。
総排泄孔
総排泄孔が排泄物や床材で汚れたり塞がったりしていないか、腫れや変色がないか、臓器の脱出がみられないかを確認しましょう。オスの場合はクロアカルサックが腫れていないかもチェックしましょう。
尾
体調が悪い時は細くなり、逆に肥満気味だと太くなりすぎるので、太さを確認しましょう。また、低温やけどを起こしていないか、自分で噛んで傷つけていないかなどもチェックしましょう。
ヒョウモントカゲモドキは、恐怖を感じた時など身を守るために尾を自切することがあります。また、脱皮不全や低温やけどなどから尾の壊死を起こし、痛みから自切することもあります。自切した場合は特に治療は必要ありません。時間の経過とともに少し太くて短い尾が再生してくるので、しっかり栄養を補給することが大切です。
まれに感染を起こすこともあるで、自切した部分がじゅくじゅくと膿んでいる、嫌なにおいがする、出血が多いなどがあれば動物病院に相談しましょう。
体重
お迎えしたばかりの頃や幼体の頃は週に1回程度、体重を測りましょう。成体の場合は月に1回測定するとよいでしょう。食欲がないのに体重が増えていく場合は、便秘、腹水や浮腫みなどの可能性があります。体重だけでなく、元気や食欲、排泄の状況なども踏まえて判断することが大切です。
気をつけたい病気は?
ヒョウモントカゲモドキによく見られる疾患をいくつか挙げますので、参考になさってください。
脱皮不全
代謝性骨疾患(くる病)
異物摂取(腸閉塞)
脱腸(脱肛)
クリプトスポリジウム
卵詰まり
ヘミペニス脱
マウスロット(口内炎)
高尿酸血症(痛風)
ビタミンA欠乏症
脱皮不全
ヒョウモントカゲモドキは月に1~2回程度脱皮をして、成長や新陳代謝を行っています。脱皮が始まると全身が白っぽくなり、通常は2~3日で脱皮が終了します。4日以上経過しても脱皮片が残っている場合は脱皮不全の可能性があります。
脱皮不全の原因は、極度の乾燥だけでなく、湿度が高すぎる時にも起こり得ます。また、ケージ内の温度が低すぎると活動性が低下して脱皮不全を起こすことがあるので、湿度や温度は常に最適にすることが大切です。
脱皮不全は局所的な場合と全身的に起こる場合があります。局所的な脱皮不全は低温火傷や外傷が原因となり、手のひらや足裏、指先、尾の腹側、または外傷部位などに起こることもあります。
指先や尾の先などの細い部分で脱皮不全が起こると、脱皮片がその部分の血流を妨げ、虚血性の壊死を起こす危険性があります。また、瞼に脱皮不全を起こすと顔を擦りつけて目を傷つける危険性があるため、残っている脱皮片は速やかに取り除く必要があります。ヒョウモントカゲモドキを30~35℃のぬるま湯につけて、脱皮片がふやけて柔らかくなったらピンセットや綿棒などで優しく取り除きます。自宅での除去が困難な場合は、動物病院で処置してもらいましょう。
全身的な脱皮不全は体調不良や衰弱、強いストレスなどにより自身で脱皮片を取り除こうとしないことで起こります。さらに内分泌疾患や代謝障害が原因となって脱皮のサイクルが乱れることでも起こるため、原因治療のために動物病院に相談しましょう。
代謝性骨疾患(くる病)
代謝性骨疾患は体内のカルシウムが不足することによって起こります。骨が軟らかくなるため、手足や肋骨、背骨の変形や湾曲、骨折などが起こりやすく、進行すると手足で体を支えられなくなってしまう、ほふく前進のような歩き方になります。
背骨に問題が起こると下半身麻痺となり、自力で排泄ができなくなることがあります。あごの骨が軟化すると口が閉じられなくなったり、餌を食べられなくなることもあります。低カルシウム血症になると手足の小刻みな震え、全身性の痙攣、食欲不振や便秘などの症状がみられるようになり、死に至ることもあります。
原因は、主に食事からのカルシウム不足やビタミンD3不足です。成長期や産卵をくり返しているメスは、特にカルシウムをたくさん消費するため注意が必要です。また、下痢や消化器の疾患があるために腸からのカルシウムの吸収がうまくいかない場合や、肝臓や腎臓の疾患のためにビタミンD3の活性化がうまく行えない場合にも起こります。
特に成長期に起こりやすいため、餌にカルシウムやビタミンD3を添加することで予防します。自らビタミンD3を合成できるように紫外線ライトを設置することも効果的でしょう。日々の管理に気をつけながら、代謝性骨疾患が疑われる場合には早期に動物病院に相談してください。
異物摂取(腸閉塞)
ヒョウモントカゲモドキは餌の匂いや自分の排泄物のにおいがついている床材を、空腹時に意図的に食べてしまうことがあります。少量で小さなものであれば消化管を通過して便とともに排泄されますが、大量に飲み込んだり、大きなものを食べた場合は腸に詰まる危険性があります。
腸閉塞を起こすと食欲不振となり、排泄がみられなくなります。また、尾が痩せていくにもかかわらず、腹部は膨らんで見えるため、抱卵と間違えてしまい、対応が遅れる可能性があります。自力で排泄できない場合は、開腹手術が必要になることもあるため、日ごろから定期的に排泄物のチェックをしましょう。ヒョウモントカゲモドキが食べられないサイズの床材やキッチンペーパーなどに変更すると予防できる可能性もあります。
脱腸(脱肛)
下痢や異物摂取による激しいいきみによって、総排泄孔から脱腸を起こすことがあります。腸は出たままにしておくと浮腫を起こし、出血することがあります。さらに粘膜が乾燥して壊死する危険性があるため、可能な限り早急に戻してあげることが大切です。
脱腸のように総排泄孔から赤い臓器が脱出する病気は他に、総排泄腔脱、ヘミペニス脱、卵管脱などがあります。いずれの場合も早急な対応が必要なので、乾燥しないように保護をして、すぐに動物病院へ向かいましょう。
クリプトスポリジウム
ヒョウモントカゲモドキが下痢や消化不良、嘔吐を起こした場合に最も注意が必要なのがクリプトスポリジウムという寄生虫です。この寄生虫は慢性の下痢を引き起こすため、食べていても全身が痩せていき、尾が棒のように細くなってしまうのが特徴です。体力や免疫力があるヒョウモントカゲモドキはまったく症状を示さないこともありますが、ストレスや病気などで体調を崩したことが引き金となって症状が表れます。
感染しているヒョウモントカゲモドキの便にはオーシストと呼ばれる卵が排泄されるため、このオーシストを直接、あるいは水やケージなどを介して間接的に経口摂取することで感染します。クリプトスポリジウムを完全に駆除する治療薬はなく、完治が難しいため、複数飼育をしている場合には個別管理を徹底します。ケージや皿の使いまわしはせず、必ず熱湯消毒をして、しっかり乾燥するようにしましょう。
卵詰まり
ヒョウモントカゲモドキのメスは、交尾後10日ほどで抱卵し始めます。産卵までの期間は2週間~1ヶ月で個体差がありますが、1ヶ月以上経過しても産卵が認められず、元気や食欲がなくなり、尾が細くなってくると卵詰まりが疑われます。放置をすると命に関わるため、早急に受診が必要です。
卵詰まりは、適切な産卵場所がない、低カルシウム血症、卵管の感染症、肥満、不適切な温度管理など、さまざまな原因で起こり得ます。環境や母体の状態が良くても、初産の場合はうまく産めないこともあるので、抱卵中はいつも以上に注意する必要があります。また、メスだけを飼育していても、まれに無精卵を抱卵することがあるので油断は禁物です。
ヘミペニス脱
ヒョウモントカゲモドキのオスには、尾のつけ根に一対のヘミペニスがあります。普段はクロアカルサックという袋の中におさまっていますが、ヘミペニスを引っ込める筋肉を傷めたり、ヘミペニスに感染や炎症を起こしたりすると脱出したままになることがあります。長時間放置すると自分で噛んだり、シェルターや床材などで傷つけて壊死することもあります。
初期で外傷や浮腫みが軽度であれば元に戻す事もできますが、悪化すると切除する必要があるため、早めに動物病院を受診しましょう。
マウスロット(口内炎)
ヒョウモントカゲモドキは勢いよく餌に飛びついてくるため、昆虫の尖った部分やピンセットで口腔内を傷つける事があります。傷から細菌感染を起こすと、口腔内の一部が赤くなったり、白い膿の塊が溜まってしまうことがあります。軽度であれば食欲に影響はしませんが、悪化すると食欲の低下や唾液分泌の増加がみられます。
さらに進行すると膿瘍が形成され、口が閉じられなくなることもあります。上顎に膿瘍ができると、鼻の穴が塞がったり、目が飛び出てしまうこともあるため、軽度のうちに動物病院へ相談しましょう。
高尿酸血症(痛風)
ヒョウモントカゲモドキはタンパク質の分解産物を尿酸として排泄しますが、脱水症状や腎臓に問題があると尿酸の排泄ができずに高尿酸血症(痛風)を引き起こします。尿酸は内臓や皮下組織、関節などに沈着して、痛風を引き起こします。手足や指の関節に尿酸が沈着すると痛風結節と呼ばれる白い塊を形成し、表皮から透けて見えることがあります。
口腔内の粘膜に沈着すると白斑がみられることがあります。痛風結節ができると痛みからあまり動かなくなったり、食欲不振といった症状がみられ、痛みから体を擦りつけたり噛んだりして傷つけることもあります。
関節以外の部分に白い結節がみられる場合は、細菌感染や皮下膿瘍の可能性があります。また、レモンフロストというモルフには、皮膚に白いコブ状のしこりができる虹色素細胞腫という悪性腫瘍があるので、動物病院での鑑別が必要です。
ビタミンA欠乏症
ビタミンAは皮膚や粘膜の機能維持に重要な役割を持っています。餌に含まれるビタミンAの不足や餌の劣化や酸化によって欠乏症が引き起こされる可能性があります。
ビタミンAが不足すると眼瞼炎や結膜炎が引き起こされ、瞼が腫れたり、眼球が乾いたりします。そのため目を気にして頻繁に舐めたり擦ったりすることで二次感染が起こり、チーズ状の目脂が溜まったり、瞼の開閉ができなくなることもあります。
ビタミンA欠乏症が重症化すると全身の浮腫や腋下の浮腫、食欲不振などがみられます。目のトラブルは脱皮不全や外傷、異物の混入などでも引き起こされますが、いずれの場合も動物病院で適切な処置や治療を受けるようにしましょう。
ヒョウモントカゲモドキを診てもらえる病院はどこ?
爬虫類を飼育される方は増えてきていますが、診察してもらえる病院は限られます。家の近くに診てくれる病院があるのか、事前にチェックしておくと安心です。
病院へ連れて行く日は移動のストレスによって嘔吐をする可能性があるので、絶食しておくと良いでしょう。普段の飼育ケージごと連れて行くと飼育環境も確認してもらうことができます。移動の際には、水入れの水は捨てて、倒れやすいレイアウトグッズなどは出しておきましょう。
また、虫かごなど別の容器で連れて行く場合は、温度計を設置して適切な温度が保たれているか確認しましょう。移動の際は蒸れたり、体が冷えるのを防ぐために霧吹きをする必要はありません。
夏場の移動は熱中症を引き起こす危険性があるため、通気性の良い容器で移動しましょう。冷房の効いた場所で冷えすぎないように、状況に応じてタオルなどをかけて冷気が入らないようにしてあげてください。
冬場の移動は保温が重要です。市販のカイロを容器の下や横に外側から貼るようにしましょう。熱くなりすぎても逃げることができるように、カイロは容器の床面の半分程度に貼ることが大切です。冷気が入らないように容器をタオルで包んだり、容器を手提げ袋などに入れて移動しましょう。
ヒョウモントカゲモドキを診てくれる動物病院は、アニコム【どうぶつ病院検索】でも調べてみてくださいね。
https://cs.anicom-sompo.co.jp/hospital/
まとめ
いかがだったでしょうか?
気をつけないといけないことがたくさんあって驚かれた方もいらっしゃるでしょう。ヒョウモントカゲモドキのことを正しく理解して、最後まで大切に飼育してあげてください。
別の記事ではヒョウモントカゲモドキをお迎えするときの準備や、ごはんについてまとめているので、ぜひそちらもご覧ください。
レオパ飼いたい♡「初心者🔰」さん
病気が思ったより多くてびっくりした
しかも結構恐ろしい、、、
頼りになりました‼︎