5年成長率は驚異の223%。安定成長の注目市場とは?

2020.10.05

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景気に大きな影響を受けず、安定的に成長している市場があります。市場規模は、毎年15~20%拡大していて、それでいて市場拡大の余地はまだなお大きい。そんな市場である「ペット保険」をご存知でしょうか?


目次

注目される「ペット保険」市場のポテンシャル

-毎年2ケタ台で成長し続けるペット保険市場

-未だ普及率は9%。高い成長可能性

なぜ、ペット保険は急成長しはじめたのか

-時代とともに変わってきたペットとの関係性

-医療の発展とともに登場したのが「ペット保険」

-ペット保険が根付いたきっかけ

ペット保険会社を販売する企業は15社に。上場企業も。

-犬の飼育費用(イニシャルコスト)

海外のペット保険事情の盛り上がりとは

各国で高まるペット保険市場への期待


注目される「ペット保険」市場のポテンシャル

ペット産業全体の市場規模は約1.5兆円と推定されており、ペットの総数が漸減する中においても、なお伸び続けています(※1)。この原動力と目されているのが、「保険」。

ペット保険は、主に犬・猫を対象とするペット向けの医療保険(損害保険)です。動物病院でかかった医療費を補償するもので、日本では2000年代後半から本格的に拡大してきました。

毎年2ケタ台で成長し続けるペット保険市場

2013年には298億円だったペット保険市場は、2018年に667億円まで拡大しています(※2)。5年成長率は、223%。しかも、毎年15~20%ずつ安定的に成長している点も特徴的です。新種目として注目を集めたペット保険ですが、いまや金融商品として安定した地位を築き始めていると言えるでしょう。

中でも注目したいのは、そのポテンシャルです。

未だ普及率は9%。高い成長可能性

2018年のペット保険普及率は、9.1%程度(※2)と見積もられています。つまり、まだ10頭に1頭しか加入しておらず、今後の成長余地が十分に大きいことが分かります。


現在、英国では約30%程度の普及率があると言われています。英国は、日本と生活水準が近しく、保険に対する親近感も似ている部分があります。日本より数十年早くペット保険が始まった国であることを考えれば、日本のメルクマークと考えて良いでしょう。


仮に普及率が英国水準の30%ほどになれば、市場規模はいまの3倍ほどになります。問題は、その成長スピードですが、昨今ではペット保険をとりまく企業間の競争も激しくなってきていることから、成長スピードはいままで以上に加速していくと考えられます。


(※1)出典 株式会社矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2019年版」

(※2)出典 株式会社富士経済「2019年ペット関連市場マーケティング総覧」


なぜ、ペット保険は急成長しはじめたのか

時代とともに変わってきたペットとの関係性

笑顔の少年と手を合わせる犬

先史時代から、人間はオオカミをイヌとして馴化し、移動・狩猟など様々な場面でパートナーとして暮らしてきました。近代に入って工業化が進むと、イヌは徐々に役割を失い、愛玩化が進みはじめたのがペットの始まりです。


日本でも、昭和後期~平成初期頃には、番犬から愛玩動物へと役割がシフトしてきています。特に、居住環境が、庭付き一軒家から集合住宅へと変遷するにつれ、ペットが家の中で生活するようになりはじめたことは決定的でした。ペットとの関係は、もはや「家族の一員」と呼べる関係性にまで高まっています。


「エサ」と呼ぶ飼い主は少数派となったように、家族化したからには色々な変化が起こります。犬猫も服を着るようになったし、ベビーカーのようなカートで散歩する光景も見慣れたものとなりました。そして、医療も大きく発展しました。


医療の発展とともに登場したのが「ペット保険」

予防医療やフードが発展したおかげで、犬猫の平均寿命は10歳を超え始め、高齢特有の難病も増加しはじめました。これに伴い、血液検査やレントゲン、エコーはもちろん、CTやMRIといった高度診断機器が登場し、放射線治療や再生医療まで行なわれるようになりました。家族が病気になれば、できる限りの治療を施してあげたい気持ちはだれにでもあるでしょう。それでも、数十万~百万円を超す医療費はそう簡単に出せるものではありません。


そこで注目されたのが「ペット保険」です。人のように公的な健康保険制度がないため、ペットの診療は全て自費診療です。また、獣医療はすべて自由診療です。高度化するにつれ高額化していく医療費に悩む飼い主が増え始めたところに、ペット保険が登場しました。


ペット保険が根付いたきっかけ

もっとも早く日本にペット保険を根付かせたのは、アニコム損害保険株式会社(親会社はアニコム ホールディングス株式会社 東証<8715>)でしょう。アニコム損保の登場以前にもペット保険という考え方はあったものの、いずれも普及するには至りませんでした。まだ「ペットに保険」という概念が当時の日本には早かったという理由もありますが、直接的なものとしては、顧客側の「使いにくさ」と、企業側の「運用コスト」であったと思われます。


これに対して、アニコムは「窓口精算」という仕組みを取り入れました。これが、消費者のニーズにカチッと合ったことでペット保険は一気に拡大します。窓口精算とは、人と同じように、動物病院の窓口で保険証を提示すると、その場で保険金相当分を差し引いた診療費(自己負担分)を支払うだけとなる仕組みです。一旦、診療費を全額支払った後で、保険金を請求するという面倒な手続きが要らず、非常に簡単に保険が利用できるようになりました。


ペット保険の利用は、少額高頻度です。従って、保険金請求の件数は、他の保険に比べてはるかに多いことが最大の特徴です。企業側は、この支払の運用コストが高くつき、撤退が相次ぎました。一方、窓口精算は、動物病院で一度まとめてから請求されるため、年間数十万~数百万件にも上る保険金請求をローコストで行うことができました。アニコムは、全国の動物病院との提携を強化し、現在では約6,500病院でこの仕組みを使えるようになっています。(全国の動物病院は8,000~10,000程度と推定されています。)


こうした結果、アニコムのペット保険契約件数は80万件を超え、2021年期末での売上は500億円水準となる見込みです。日本のペット保険の開拓者として、いまもなおトップシェアを走り続けています。


ペット保険会社を販売する企業は15社に。上場企業も。

アニコムが、「ペット保険」で、顧客の利便性を高めると同時に、安定した収益を生み出せることに成功した結果、ペット保険の普及は加速していきました。他社によるペット保険事業への参入も相次ぎ、統廃合されながらも、現在では15社が参入しています。メインプレーヤーは、市場の過半を占めるアニコム損害保険株式会社と、2割程度を占めるアイペット損害保険株式会社と言えるでしょう。この2社は、窓口精算システムを導入することで成功をおさめ、共に上場に至っています。アニコムは2010年に東証マザーズへ上場、2014年から東証1部に市場を置いています。


ほかにも、au、アクサダイレクトなどの大手企業も参画しており、最近では楽天がペット保険(少額短期保険)を手掛ける企業を完全子会社化したことでも話題となりました。それぞれが、母体特性を活かした商品展開や販売戦略をとっており、円グラフのシェア競争は激しくなっています。


しかし、顧客の奪い合いというよりも、まだ普及率の低い日本では未加入者への加入促進に向けたマーケティング活動が命題で、いわば円グラフの大きさ自体を大きくする競争(市場拡大)というのが正しい表現かもしれません。


海外のペット保険事情の盛り上がりとは

日本では普及率は9%程度と紹介しましたが、海外ではどうでしょうか?


国名普及率(推定)主要な保険会社
米国2%未満 Trupanion社、Nationwide社
英国25~30%Petplan社、Animal friends社、RSA社、Directline社
スウェーデン50%以上(犬では90%) Agria社
中国0.2~0.5%(推計) 平安保険、人民財産保険
日本9.1% アニコム損害保険株式会社、アイペット損害保険株式会社など

意外にも、米国の保険普及は遅れている印象ですが、これは米国民の保険に対するイメージが日本や英国と異なり、これまであまり進んでいなかったという理由も背景にあるようです。近年では米国・カナダ・プエルトリコなどでペット保険を展開するTrupanion社(トルパニオン NASDAQ)に注目が集まっており、今後の成長性の高さから期待も高まり、売上高や契約件数はアニコムに及ばないものの、時価総額は10億ドルを超えています。


スウェーデンは、実はペット保険が最も浸透している国で、犬での普及率はなんと90%を超えるとまで言われています。一方、中国をはじめとするアジア諸国ではほとんどペット保険は浸透していません。しかし、今後アジアでもペットの家族化が進むことで、日本同様ペット保険のニーズも高まっていくと考えられます。


各国で高まるペット保険市場への期待

保険はデータの集合体で成り立っており、これまで、統計的な大規模データが無かった愛玩動物にかかる獣医療領域において、今後ペットの健康増進に寄与できる可能性があります。ライフサイクルが人間より早い分、動物でのデータが人医療へ貢献する日が来るかもしれません。アニコムでは、保険だけではなく、このデータ分野について独自の研究所を保有し、遺伝子や腸内細菌に関する研究もあわせて進め、保険の診療データを融合することで、次世代の予防法の確立や保険商品の開発に取組んでいます。


人と動物との関係がさらに家族化してきている今、世界的に注目が集まりつつあるペット保険市場の今後の成長に期待したいところです。


本記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、各社の有価証券への投資の勧誘・募集を目的としたものではなく、投資アドバイスでもありません。記事内容は将来の業績を補償するものではなく、一定のリスクや不確実性を内包しています。

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