オオカミ ~かつて彼らは、日本の森の王者だった~

2017.04.01

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消えゆくオオカミたち

日本には、かつてニホンオオカミやエゾオオカミが生息していました。しかしどちらも幕末から明治時代にかけて個体数が激減し、絶滅に至っています。この時期に流行した狂犬病・ジステンパーウイルス感染症の影響や、人間による駆除・補殺などが要因と考えられています。一方で、近年では全国的にシカやイノシシなどによる農作物の食害といった獣害の増加が問題となっています。農林業被害だけで年間二百億円を超え、毎年十億円以上の割合で増加し続けています。日本の生態系の頂点に君臨していたオオカミがいなくなり、草食獣の増加に歯止めがかからなくなったことも要因のひとつといわれています。


こうした国や地域は日本だけにとどまらず、世界中で同じような問題が起きています。王者を失った森を元に戻す解決策は、まだ見つかってはいません。


オオカミとイヌと人間

人間が絶滅させてしまったとも言えるオオカミですが、人間が昔からオオカミを忌み嫌っていたわけではありません。私たちの祖先はオオカミを飼い慣らし、私たちの好む性質を持つ個体を選択することで、イヌという動物を生み出しました。


例外もありますが、立耳の犬種はオオカミに近く、性格が気難しい可能性があります。一方で垂耳の犬種は愛玩犬として改良を重ねられていることが多く、より人に慣れやすいと言われています。


普段の可愛らしいイヌの姿の中に、ふと野性を思わせるようなしぐさが見え隠れする――もしかしたらそれは、彼らの奥底にあるオオカミの血が騒いでいるのかもしれません。


【オオカミ】
Canis Lupus ネコ目(食肉目)イヌ科 イヌ属
別名ハイイロオオカミ。北半球に広く分布し、さまざまな亜種に分かれる。
絶滅したニホンオオカミとエゾオオカミは、その亜種の1つとされている。


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