2018.02.22
前々回のコラムで、乳児27名の腸内フローラを調べた研究で、生後1ヶ月目の腸内フローラは、アクチノバクテリア門が優勢のグループとプロテオバクテリア門が優勢のふたつのグループに分類できるという論文があることを紹介しました。
今回は当社の社員の子どもたちでも同様の結果が出るのかを確認してみました。
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生後1ヶ月の腸内フローラは、どうなっている?
今回登場してくれるのは、けんちゃん始め生後1ヶ月までの赤ちゃん7人です。全員2016年10月から2017年9月の間に生まれました。住んでいる地域も性別もバラバラです。
そんな中、けんちゃんとけんくんのAグループ、りょうくんとこころくん、あいちゃん、はやとくん、けいくんのBグル―プでは腸内細菌叢の特徴が違って見えます。
緑色のファーミキューテス門はどちらも共通ですが、けんちゃんたちのAグループは黄色のプロテオバクテリア門が目立つのに対し、りょうくんたちBグリープは青色のアクチノバクテリア門が目立ちます。
では、プロテオバクテリア門やアクチノバクテリア門には、どんな菌がいるのでしょうか? 教えて!立川先生!!
Dr.立川による解説!プロテオバクテリア門の紹介
細菌には名前が付いていて、似ている細菌は仲間ごとに分類され、「門」というのは一番大きな分類であることは以前のコラムでもお話しました。
プロテオバクテリア門にはとても多くの細菌種が分類されます。
よく知られている菌としては、大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌、緑膿菌、レジオネラ菌などが挙げられます。 こう書いてしまうと、病原菌ばかりが含まれるイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえば酢酸菌。酢酸菌は、常在菌として広く自然界に存在している菌です。名前の通り、米酢やワインビネガーなど食卓に欠かせない酢をつくる時や(アセトバクター・アセチ)、ナタデココを作る時(アセトバクター・キシリナム)などに活躍してくれています。
アクチノバクテリア門の紹介
アクチノバクテリア門に分類される中で、おそらくもっとも有名な菌はビフィズス菌ではないでしょうか。お腹の調子を整える、免疫力を上げる、内臓脂肪を減らすなど、様々な健康効果をうたったビフィズス菌食品がお店に並んでいます。
健康に良いとされる菌には、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒという、舌をかみそうな名前の菌も挙げられます。
この菌は、スイスのエメンタールチーズ(穴あきチーズ)を作る時に使われるのですが、ビフィズス菌を選択的に増やす効果や、プロピオン酸を産生して免疫機能を改善したり、腸の栄養源となって腸の動きを良くする効果があると言われています。
しかし、アクチノバクテリア門に属するのは体に良い菌だけではありません。たとえば結核症を引き起こす結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス)、ニキビの原因となるアクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス)もこの門の仲間です。
まだまだ未知数の腸内細菌叢
立川先生、ありがとうございました! 論文の内容と同じ結果が、アニコム社員の子どもたちでも見られたときはとっても嬉しかったです!!
ひと言で○○門が多い、といってもいい菌も悪い菌もいろいろあるんですね。とはいえ、一方でそれだけ分類上大きな違いがある細菌の、腸内フローラに占める割合が生後1ヶ月の赤ちゃんのお腹でも異なるのは、興味深いです。
次回は、3/22(木)です。7人の子どもたちの共有点を探ってみたいと思います! お楽しみに!
記事:豊田真紀(アニコムママ社員)、佐藤詩織(アニコムママ社員)、宮本亮太朗(けんちゃんパパ、アニコムパパ社員)、立川亜理沙(医師)
監修:医師・医学博士 星旦二
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