2017.09.12
テレビCMなどでもよく流れている「乳酸菌」。いまや細菌界ではいちばんの有名人、もとい有名菌と言っても過言ではありません。そんな有名菌である乳酸菌はヨーグルトなどに入っているイメージが強いかもしれませんが、じつはもともと腸のなかにもいて、いろいろと「体にイイ」働きをしてくれているんです。
でも、何がイイのかご存知でしょうか。「体にイイ」ワケや期待される効果、さらにはもしかしたら「体だけでなく心にもイイのかも」という、驚きの最新研究までご紹介します。
なんで乳酸菌は体にイイの?
「乳酸菌は体にイイ」ワケ。主な理由はふたつあります。
ひとつ目は、乳酸菌が悪玉菌を抑えてくれる効果があるからです。乳酸菌は、糖質を発酵させて、乳酸をつくります。この乳酸が腸内を酸性にすることで、体にとって有害な物質をつくり出す悪玉菌の増殖を抑えてくれるのです。有害な物質とは、二次胆汁酸やニトロソアミンといった発がん性のある物質や、アンモニアなど。これらをつくる悪玉菌は、乳酸などの有機酸が多い環境では育ちにくいものが多いのです。
ふたつ目は、乳酸菌が免疫機能をアップさせる効果があるからです。乳酸菌の仲間には、生体を防御する成分である「免疫グロブリンA」を増加させ、粘膜のバリア機能を高める菌がいます。その結果、病原体の侵入が阻止され、疾患の予防につながるのです。
花粉症に風邪予防…いろんな分野で期待されている乳酸菌!
「乳酸菌は体にイイ」理由はわかりましたが、具体的にはどのような効果があるのでしょうか? 乳酸菌の効果が報告されている身近な疾患としては、風邪、インフルエンザ、花粉症、アトピー性皮膚炎などが代表的で、これらの症状の緩和や改善に一役買っているようです。
さらには、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病への改善効果も期待されています。こうして、乳酸菌が体にイイことが、どんどん明らかになってきているのです。
乳酸菌は体だけでなく心にもイイ!?
さらに、乳酸菌が体だけでなく心にもイイかもしれない、という驚きの研究結果をご紹介しましょう。
注意欠陥・多動性障害とアスペルガー症候群、この2つの疾患を聞いたことはありますか? どちらもヒトでみられる発達障害のひとつです(【参考】厚生労働省 発達障害)。どちらも今のところはっきりとした原因はわかっておらず、明確な予防法もないとされていたのですが、なんとここで、乳酸菌の登場です!
2015年のフィンランドの研究によると、乳酸菌の1種であるラクトバチルス・ラムサスの摂取によって、注意欠陥・多動性障害やアスペルガー症候群の発症を減らせる可能性があることがわかりました。
この研究では乳児75人を対象に、生後6ヶ月の間ラクトバチルス・ラムサスを与える群と与えない群に分け、13年間後追い調査をしました。 その結果、13歳の時点での注意欠陥・多動性障害やアスペルガー症候群の発症は、ラクトバチルス・ラムサスを与えなかった群では35人中6人(17%)だったのに対して、与えた群では40人中0人(0%)だったのです。
つまり乳酸菌を摂取することによって、発達障害の発生をおさえられる可能性があるとわかったのです。明確な予防法が確立されていないだけに、今後のさらなる調査に期待がふくらみますね。
乳酸菌、今後の研究にも期待大!
まだまだわかっていないことも多い乳酸菌ですが、このように世界中でさまざまな研究が日々行われ、新しいこともどんどんわかってきています。疾患予防に乳酸菌が使われるのが当たり前という時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。