子どもに「動物と関わる仕事がしたい」と言われたら…

2020.10.06

ADVERTISEMENT

「私(僕)、将来〇〇になりたいんだ。」


初めて子どもから、将来の夢を告げられたら、親であれば誰もが喜びを感じることであろう。そして、どの程度現実味を帯びた夢なのか、はたまた夢物語のようなものなのかはさておき、親であれば応援してやりたいと思うのも人の常だろう。 一方で、その夢を本気で親として応援するとなると、その後の進路や教育方針にも、大きく影響を与えることとなる。最終的には子どもの意思に任せたいとはいえ、応援するにしろ勧めないにしろ、その仕事のことをよく知っておく必要があるだろう。 今回は、子どもが動物関連の仕事に就きたいと本気で思ったなら、親はどんなことを知っておけば良いのか、そして、どんな言葉を伝えたら良いのかについて考えてみたい。

過去5年の“子どもがなりたい職業ランキング”を紐解く

2020年の株式会社クラレの『女の子が「将来就きたい職業」』を見てみると、第14位にペットショップ・トリマーがランクインしている。過去3年のランキングにも、トップ20位以内にペット関連の仕事がランクインしている。 ケーキ屋やパン屋、芸能人やモデルなどの人気の職業には敵わないが、少なくとも動物関連の仕事に就きたいと夢見ている子どもは少なくない。

代表的な動物に関わる仕事について知る

動物関連の仕事というと、一体どんなものがあげられるのだろうか? 今回は6つの職業に絞ってその職業のやりがい、懸念点、必要な資格や、なるまでの方法について知っておこう。

獣医師

■やりがい

獣医師の醍醐味といえば、やはり“苦しんでいた動物が、治療をしたことによって元気を取り戻す姿を見ること”だ。動物は、人間のように痛いときや苦しいときに言葉を発してこない。その分、獣医師が動物たちのSOSに気づいて体の中で起きていることを理解し、解決に向けて全力を注ぐ。また、働く場所に関しては、町の動物病院勤務以外に農林水産省などの国家公務員、各自治体に勤務する地方公務員、動物園や水族館、競馬の専門獣医師として働くなど、幅広い選択ができることもメリットである。


■懸念点

動物病院で働くうえで避けることができないのは“動物の死”だ。命ある動物を扱う獣医師は、生涯で何頭もの命が目の前で消える瞬間を見届けることとなる。獣医師を目指す以上は動物が好きなことがほとんどだろう。つまり、動物を救いたい想いが人一倍強い。だからこそ、動物の死はつらいのだ。また、動物病院では長時間勤務、不規則な生活、休日や仕事終わりの勉強会への参加なども日常。救急時に呼びだされ、夜中に動物病院へ駆けつけることもしばしばだ。


■獣医師になるには?

獣医師になるには、獣医学科のある大学で6年間の学びが必要となる。また、大学を卒業後に獣医師国家試験に合格し、獣医師免許を取得する必要がある。学費の面だけでいうと、通常4年の大学生活に+2年という経済的にも大きな負担となることは理解しておきたい。さらにこの大学生活の中で、大好きな動物を実験・研究対象としなくてはならないこともある。


動物看護師

■やりがい

動物に直接的な治療行為はできないが、診療中の動物の保定、薬の準備、シャンプーや治療前後のケアなどを全般的に行うため、動物病院にとってなくてはならない存在である。また、動物へのケアだけでなく飼い主とのコミュニケーション能力も非常に問われる仕事である。「先生には言いづらくて…」と飼い主が本音を吐露する先として動物看護師に頼るというケースも非常に多い。不安を抱える飼い主の大事なサポート役なのである。


■懸念点

動物の保定時にケガをするリスクが非常に高く、常に生傷が絶えない。動物看護師は、動物の診療時以外にも受付の事務や、会計作業、電話対応、飼い主とペット情報の整理、備品の補充、入院中の動物の世話、掃除、などの幅広い業務に対応しなければならない。


■動物看護師になるには?

現在、獣医師のように国家資格や公的な資格は必要としないが、一般財団法人動物看護師統一認定機構が定める特定の大学や専門学校での勉強が必要となる。また、認定動物看護師や、小動物看護師・動物衛生看護師資格をもっていると就職時に有利となる。 ただし、2019年に「愛玩動物看護師法」が制定され、遅くとも2022年の6月27日までには本法律が施行されるため、動物看護師が国家資格として定められることとなる。国家資格が必要となることで、よりペット業界の中でも注目される職業となるであろう。


ペットショップの店員

■やりがい

犬・猫だけに限らず小動物・爬虫類などさまざまな店舗があることが特徴のペットショップ。朝から夜まで動物がいる空間で働くことができ、特に幼少期の愛くるしい動物たちの世話をすることも多い。また、生体の販売だけでなくペットグッズやペット保険の販売等も行っているため、お客さんが求める動物との暮らしをトータルでコーディネートするような立場を担うことができる。好きな動物種を徹底的に極めることができるという点も、ペットショップで働く最大のメリットであるといえる。


■懸念点

生体を販売することになるので、もしかすると命に値段をつけることに違和感を覚えることがあるかもしれない。また、衝動的に動物をお迎えしようとする人に対しても、動物を販売しなければならない心苦しさもあるかもしれない。だが、健康な生体を適正な価格で市場に送り出し、さらには正しく家庭に迎え入れてもらえるように努力することは、動物を家族の一員として迎え入れてもらう手助けをすることであるともいえる。 また、朝から晩までケージの中の糞尿を片付けながら接客を同時にしていかなければならないため、人に対しても動物に対しても気を配り続けられる精神が必要。


■ペットショップの店員になるには?

特に必要な資格はなく、雇用形態も正社員から契約社員、アルバイトなどさまざまな働き方がある。お客さんに対して、動物に関する知識を伝えるシーンが非常に多いため、ショップにいる動物に関しては深い知識が必要。


トリマー

■やりがい

近年ペットのトリミングは一般的になってきていることから、職業としての需要は今後も伸びていくと思われる。定期的にお客さんのペットを預かることから、動物がトリマーに懐き、絆を深めることもできる。また、トリミングだけでなくシャンプー、耳掃除、爪切りなどペットの全面的な健康をチェックする役割も担う。


■懸念点

トリミングに慣れていない動物や、体が大きい動物、噛み癖等がある動物を扱う際には、ケガをする場合がある。また、ペットショップやペットホテルの中に含まれている店舗も多いため、トリミングをしている時間以外はその他の業務を行うこともあり、トリマーになってもトリミング以外の仕事があることが多いのも理解しておきたい。


■トリマーになるには?

トリマーになるために必要な資格はないが、取得しておくと有利な資格は多数ある。専門学校ごとに取得できる資格が異なるため、働きたい店舗がある場合にはあらかじめどの資格が必要になるかを調べておく必要がある。また、トリミング以外にもマッサージや犬のネイルなどの特殊なサービスを提供する店舗もあるため、どのような店舗でどのような業務に就きたいかをあらかじめ決めておくと良い。


動物園の飼育員

■やりがい

動物を野生に近い形でたくさんの人に見てもらうために、さまざまな工夫を凝らしエンターテインメントの提供を行いつつ、毎日動物たちとふれあいながらお世話をしていく。場合によっては、新たな命の誕生に立ち会うこともあり、経験できる業務も幅広い。また、担当エリアが決まっているため特定の動物たちが懐き、成長を見守ることができる。


■懸念点

毎日の掃除は非常に体力のいるもので、動物を移動させ、汚れを取り除き水で流してブラシでこする等の作業は重労働な作業のひとつ。また、大型の動物種のお世話は常に危険と隣り合わせだ。さらに、お客さんに危険がないような徹底した安全管理と、動物たちの健康管理を行う。切り傷などが絶えず、特に冬場や夏場など気温の上がり下がりが激しい時期には、より一層自分自身の健康面での管理も必要となる。


■動物園の飼育員になるには?

動物園には、民間の動物園の市や区、国が運営している動物園などさまざまな形態がある。民間以外の動物園で働く場合には、公務員試験に合格していることが必須。また、民間でも公営であっても動物に関する専門知識や資格があると就職時には有利となる。一方で、どんな動物の担当になるかは就職してから決まるため、多種多様の動物を愛し、お世話ができるというオールマイティさも求められてくる。またもちろん来場者とのコミュニケーションも必要なため、接客技術も必要である。


水族館の飼育員

■やりがい

生き物たちを、子どもから大人まで楽しめるように展示したり、海の生き物とコミュニケーションをとることができる仕事である。動物園と同様に、生命の誕生に携わることもあり、非常に貴重な経験をすることができる。また、ショーなどを行う飼育員は練習時から生き物と共にショーを作り上げるというやりがいも十分にある。まさに生き物と一心同体になることができる仕事である。


■懸念点

動物園同様に、掃除は体力のいる作業のひとつ。生き物にとって暮らしやすく野生に近い環境を常に作ってあげることはもちろん、お客さんにとっても見やすく、美しく、わかりやすく展示する工夫を常にしておく必要がある。生き物たちの健康を維持するために、1匹、1頭ずつ状態を確認するという細かい管理が必要とされる。また、水仕事がほとんどであったり、餌の準備でケガをしたり、生き物に噛まれることも多々ある。


■水族館の飼育員になるには?

水族館の飼育員になるには、大学や専門学校で水族館で働くための知識を得たり、野生動物について学ぶ必要がある。水族館の飼育員には、必ずしも必要な資格等はないが、潜水士やダイビングの資格をはじめ、生き物や餌の運搬時には普通自動車免許があると就職時に有利となる。


動物と関わる仕事の共通点を知る

6つの職業を紹介したが、動物に関わる仕事は、動物との接し方や距離感はまちまちだが、どの仕事も“命”を扱う仕事であるということには違いない。 命を扱う仕事である分、動物との別れや、動物と分かり合えない瞬間も必ずあるということを念頭に置いておきたい。また、動物に傷つけられるリスクだって十分にあるということを今一度理解しておこう。


一般企業との違いを知る

こんな風に動物と関わる仕事を知ると、親であれば誰もが「普通の会社じゃなくていいのか?」と問いたくなるだろう。

一般的に“普通の会社”とは、週休2日で、8時間労働、1時間はランチタイムで、アフターファイブは会社の同僚と飲み会へ行く。男性ならスーツで、女性ならオフィスカジュアルと呼ばれる服装で、オフィス街を歩く。これが一般的にイメージされる“普通の会社”ではないだろうか。

動物関連の仕事に就職すると、いわゆるこういった“普通の会社”とはかけ離れた生活をすることが多い。もちろん出社は普段着で、到着したら汚れが落としやすい服や、動物に噛みつかれても大丈夫な制服、水にぬれても乾きやすい制服などに着替えるだろう。 動物関連の仕事に就くということは、こういった意味でも覚悟が必要となる。また、特に動物園や水族館などは、休日こそかきいれどき。土日休みの同年代の友人とはさっぱり予定があわなくなるだろう。それこそ、家庭ができたときに土日に家にいない…なんてことも容易に想像ができることだ。

子どもの夢に対する“本気度”を知る

ここまで語ると、動物への愛情を「仕事」にすることはなかなかハードルがありそうだということが分かる。 かわいい・好きという気持ちだけでは成り立たず、ましてや動物たちに好かれないことだってある。 それでも子どもが、それを“夢”だと語るのであれば、親として応援してあげたいものである。 大学や専門学校を卒業し、人はそこから約50年近く働かなければならない。動物業界だけの話ではなく、全ての業種において働くうえでの“覚悟”は必要である。就職してからどのような人生を描いていきたいか、現実と夢を交えながら親子で話をしてみることが、第一歩になるのではないだろうか。

動物と関わる仕事は、素晴らしい。

わたしたちにとって動物は癒しの存在でもあり、学びの存在でもあり、そして愛すべき存在である。

動物関連の仕事は、そういった動物への愛はもちろん、理解や尊敬を元に成り立っている職業である。種を越えた生き物と心が通じ合うことができるのは、動物関連の仕事に従事するものだけが感じられる特権なのであろう。 そして、多くの動物関連の仕事はそんな動物の尊さを多くの人に伝え続けていく。その尊さに気づいた人がまた、その仕事に就く。


「私(僕)、将来〇〇になりたいんだ。」


彼女(彼)は、親であるあなたが知らないうちに、誰かからそのバトンを受け取ったのかもしれない。もしかしたら、家にいる尻尾をブンブンと振っているあの子が夢の原動力かもしれない。そしてここからは、より現実的に、その「夢」を叶えられるように親としてサポートしてあげればいいのだ。どの仕事にも、苦労や乗り越えなければならないことはある。それを時には厳しく、そして優しく、子どもが将来を自分の力で決めていけるように支えていってほしい。

ADVERTISEMENT
コメント0