ペットの東洋医学について専門家に聞いてみた

2019.07.25

みなさん、ペットの東洋医学と聞くとどういうイメージをお持ちですか?


おそらく獣医さんから「鍼治療」を受けたり「漢方薬」をもらったり「マッサージ」をしてもらったりなどを思い浮かべるのではないでしょうか。今回は、病気を予防し健康寿命延伸に繋げるという観点から東洋医学について学んでいきたいと思います。

東洋医学と西洋医学

東洋医学と西洋医学、両者は「病気を治す」というゴールは同じでも、そこに至る過程やアプローチ法がまったく異なります。


●西洋医学:検査等で病気の原因を見つけ、それにあった投薬・手術を行う。主に病気発症後に施す医療。

●東洋医学:体全体の機能を調節し、免疫力を高め動物が本来持っている自然治癒力を強める。病気発症前・後ともに施す医療。


もちろんどちらが良い、悪いというわけではありません。それぞれの得意分野がありますので、その時の症状によって使い分け、あるいは使い合わせていくことが望ましいと思います。


ただ、病気発症前の予防という観点から見ると、東洋医学のほうが、よりその力を発揮するのではないでしょうか。

専門獣医師にインタビュー!

実際に東洋医学の現場はどんな感じなのでしょう。そこで、成城こばやし動物病院の東洋医学担当獣医師である山内 明子先生にお話を伺いました!


■人の東洋医学との違い

Q)人の東洋医学は食養生、鍼灸、運動療法(マッサージ)、漢方薬、生活習慣の5本柱ですが、ペットも同じでしょうか?

A)そうですね。ただ生活習慣は人の場合、自分で状況を説明できますがペットにおける生活習慣、つまり飼育状況は飼い主が代弁しなくてはいけません。ですので、時に飼い主の感情や思考が入ってしまうことがあります。そこが、人とペットの一番の違いです。


Q)その飼育状況というのは例えば、お散歩不足・飼い主が良かれと思ってやっていることが実はストレス、多頭が苦手などたくさんあるかと思うのですが、そういったことでしょうか?

A)はい。それ以外にも、家族構成(子供の有無や年齢)・飼育スペースの広さや温度・留守番の長さ・排泄環境などもあるでしょうね。改善できること、できないことがあると思いますが、できない場合はどうするかを考えるのも大切です。



■漢方薬について

Q)ペットに良い漢方薬は全部で何種類あるんですか?また一番よく使う漢方薬は何ですか?

A)動物の体質や症状に合わせて、人間用・動物用の漢方薬をそのまま、または混ぜて処方するので、何種類とは言えませんが、私は40種類くらいの中から調合しています。一番よく使うのは元気を補い、滋養強壮効果のある漢方薬です。東洋医学は、気(生命エネルギーの様なもの)が不足していると、身体は正しく動かないとされています。ですので、まずその動物の身体にどれだけエネルギーがあるのかが大切なのです。



■マッサージについて

Q)ワンちゃんのツボは、全身にいくつあるんですか?

A)経路という線路のように体に張り巡らされた気の通り道上に、人間と同じ数のツボ(刺激を入れる駅のようなもの)が361穴あります。実際に治療に使うツボは大体150穴くらいです。その他、経路上にないツボもあります。


Q)東洋医学のマッサージ効果は「血行の流れを促進し、リンパの循環を良くする効果がある。その結果、内臓の調子が整って病気の予防や治療につながっている」という認識であっていますか?

A)東洋医学のマッサージは推拿(すいな)※と呼ばれ、経路やツボに刺激を入れることで、気と一緒に血やリンパ液等を身体中にめぐらせます。経路やツボは内臓とつながっているので、治療や病気の予防に役立つのです。

※推拿(すいな)とは・・・中国由来の手技療法で「推」は「押す」、「拿」は「捕える」といった意味。つまり凝りや痛みのもとを押して捕えて流すこと。


Q)ツボマッサージは、飼い主様の自己判断でなく、基本的には専門家の指導の下で行うほうがよいでしょうか?

A)その方が望ましいと思います。刺激するツボや手法や強度など一頭一頭違います。元気な動物はあまり心配いらないですが、持病がある動物や老齢の場合には自己判断の刺激が負担になってしまうこともあります。



■鍼灸治療について

Q)鍼灸治療はおとなしい子でじゃないと行えないものですか?

A)おとなしい子でないと難しいですが、おとなしくできないのには何か理由があることが多いです。痛みや痒みはいらだたせる要因ですし、心が不安定でも落ち着きがなくなります。鍼をする前に漢方薬や食養生で状態が改善することもあります。


Q)個体差はあると思いますが、鍼灸治療はどのくらいの回数で効果がわかるものですか?また治療と治療の間隔は症状によって違うのでしょうか?

A)鍼灸を行う先生によっても違いますが、私は最低でも3回は継続してほしいとお話ししています。治療の間隔は症状の重さにもよりますが、最初は週に1~2回程度、改善が見られたら2週に1度程度など間隔を空けていくことが多いです。



■どうぶつの種類や病気予防について

Q)東洋医学は犬猫以外のエキゾチックアニマルに施すのは難しいものですか?

A)東洋医学はすべての生き物に応用できます。私自身はエキゾチックアニマルに鍼をしたことはないですが、海外では鳥類も爬虫類も含むエキゾチックアニマルに鍼をしている例はたくさんあります。


Q)東洋医学において若いころから予防的に飼い主様が行えることがあれば教えてください。その中に、最近よく耳にする腸内環境を良くするようなものはありますか?

A)東洋医学はシニアによいとお考えの方が多いかもしれませんが、ぜひ若いうちからご相談頂きたいと思います。特に飼育状況(飼い方や食事)がその動物にあっているかは、病気になりにくい身体作りには欠かせないことです。どのような病気でも腸内環境の改善は必須です。整腸剤等で整いにくい胃腸障害は気の不足が考えられますので、漢方薬の併用がおススメです。


Q)予防という観点から見ると、東洋医学は病気発症前にたくさんの効果が期待できると思うのですが、具体的にはどういうものがありますか?

A)東洋医学はバランスが大切で、その動物の抵抗力(正気)がどのくらいあるかで病気になりやすいかどうかがわかります。抵抗力の低い動物は、外からの病原体(邪気)の勢いやストレスに負けて発病します。過度に臆病または攻撃的など性格の問題、食べムラがある・下痢しやすいなど日常でよくみられる体質の問題、急激な気候の変化なども抵抗力を弱める要因です。その様なことを総合的に見て、個々に応じた療法を提案し、病気になりにくい身体を作ることができます。

東洋医学を通して願うこと

今回のインタビューを通じて、東洋医学は本当に奥が深いことがわかりました。東洋医学は病気の予防、健康状態の増進、老化の防止など、たくさんの効果が期待される医療です。


「わが子が健康で病気もせず長生きして欲しい。健康寿命をもっと伸ばしたい!」という願いは飼い主ならだれでも思うもの。これから東洋医学がもっと身近なものになれば、その願いも少しずつ叶えていけるのではないでしょうか。


文責:アニコム損害保険株式会社 動物看護士 山﨑聖水

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